10 青龍到着!
次回から字数を多くしようと思います。
目を覚ますと暖かい日差しが顔に当たっていた。隣で寝ていたセルロもいつの間にか起きていたようで、テントの外からリーランがセルロの話す声がする。体を少し伸ばし、ゆっくりと立ち上がる。テントの入り口から外に出てみると二人が出発の準備をしていた。
「リーラン、セルロおはよう。」
「おはよう、ってかもう昼ごろになるけどな・・・」
リーランが苦笑いで応じてくれた。もう昼になるのか、少し寝すぎたな。
「・・・おはよう・・・」
相変わらず静かな声でセルロは返してくれた。あの後俺より早く寝たみたいだから早く起きれたんだな。それでも、目元の隈はそのままハッキリと残っているみたいだが。
「そろそろ、出発するぞ。今から出発したとしても夕方ごろには着くだろうし。」
「そんな近くまで来たのか、それじゃあ俺も準備するか。」
それから俺とリーランとセルロの三人でテントの片付けをした。朝食、というか昼食は昨日のワームを食べた。少し味は落ちたがそれでも充分にイける味だった。
「よし、後片付けも終えたしそろそろ向かうか。」
「だな、俺も大分疲れは取れたし今日は大丈夫だろう。」
「・・・またバテそう・・・」
うぐっ、痛いところを・・・あと少しと言ってたし、恐らく大丈夫だろう。
こうして俺たちは再び青龍へと向かうため歩き始めた。
しばらくすると、目の前に大きな崖が現れた。
「ここを登るのか・・・?」
「ああ、ここを登ったら青龍だよ。」
「こんなとこどう登るって言うんだ?」
「手で岩をつかんで上へ上へと登る、これだけだよ。」
「無理だろ・・・岩登りなんてしたことないし。それにセルロはどうするんだよ、こんなとこ絶対登れないだろ。」
「・・・風魔法で浮いていく・・・」
「そういうこと。風で浮いて上まで行くなんてセルロみたいに体が軽くないと無理だしな。」
「いいなー俺も風にのって行きたい。」
「話を聞いてないのか、軽くないと無理だって。」
どうやっても俺はこの断崖絶壁をクライミングしないといけないらしい。正直ロッククライミングなんてした事も無いし、仕方もわからん。リーランは脳筋みたいなこと言うし、セルロは風にのって上に行くみたいだ。
「トシユキ様、いい加減覚悟を決めろって。ここでどうこう言っても仕方ないし、また野営したいのか?」
「くっ、そう言われちゃ何も言えないが・・・わかった、登るよ。ちなみに、登りきるのにどれぐらいかかりそう?」
「ざっと一時間?」
「長すぎだろ・・・」
そう言ってるうちにリーランがもう登り始めていた。というか早っ!いつの間にか結構な距離が開いてるし。
「置いてくぞー!」
「わかったから少し待ってろ!お前ちょっと早すぎだぞ!」
「じゃあ早く追いついて来ーい」
くそっ、命綱無しじゃ不安があるな。しかし、登らなきゃ到着なんてできないのだから登るしかない。
「意外とつかみやすいな・・・」
岩に手を掛けると手に合うサイズの出っ張りがあった。その上にある岩によじ登ると意外と安定していた。この分じゃスイスイ行けそうだな。
あれ?リーランもうすごい遠くにいるんだけど、待ってって言ったよね俺。早く追いつかないとマジで置いていかれるぞこれ。急いで登らないと。
やっとの思いで一番上の崖に手を掛けてよじ登るとそこに一つの集落があった。そこに棲む人々はどことなく爬虫類のような鱗があり、ヘビやトカゲといった生物に近い外見をしていた。ところどころに鍛冶場のような場所があり、そこから金属を打つ音が聞こえてくる。村全体を見ていると一番の奥の家からリーランとセルロが大柄な男と背の高い女と一緒に出てきた。その二人は他の住民と違っていたって普通の人間のような外見をしている。その男が俺の存在に気づいたようでこちらに近づいてきた。
「お前が六人目の闇勇者か?」
低い重みのある声で、こちらを威圧するように睨んでいる。
「ああ、そうだ。あんたがここの頭領か?」
「うむ、名をイーロンという。」
「俺はトシユキだ。そっちの女性は?」
「私の娘だ。ランロン、挨拶をしろ。」
大柄な男、イーロンの後ろに立っていた女が前に進んだ。
「ワタシはランロンという。よろしくお願いする。」
すごい美人だな。蒼い髪に高い身長、それに鋭い目つきが一番特徴的だ。和服のような服を着ていてそれを綺麗に着こなしている。腰にある刀がなければもっと良かったが。
「貴様が闇勇者・・・なんというか、弱そうだな。」
やたら俺の体をジロジロ見てるなと思ったが、弱そうだと?
「弱いかどうか、試してみるか?」
「ほう、貧弱な見た目の割には血の気が多いな。しかし、ワタシは負けると分かって挑む奴を痛めつける趣味はないぞ。」
このアマ・・・言わせておけば好き勝手言いやがって。いいぞ、そっちがやる気なら全力で答えてやる。後で吠え面かくなよ。
いざ、俺が飛びかかろうとしたとき間にリーランが割って入ってきた。
「まて、ランロン言い過ぎだ。そこまで言われれば誰だって腹を立てるだろう。」
「リーラン、しかし・・・」
「しかしも何もこの方は私の主だ。侮辱は許さん、すぐに謝罪しろ。」
「うっ・・・す、すまなかった、少し言い過ぎたところもあっただろう。」
「トシユキ様、どうか許して下さい。彼女も悪気はあってやったのではないのです。」
うっ、リーランに言われちゃ俺としてもこれ以上言えないだろう。どうやら二人は知り合いっぽいし、どことなく親しげな雰囲気があるのがわかる。
この一連の行動を黙って見ていたイーロンが静かに口を開いた。
「終わったか?それでは本題に入るが、私達の土地に何の用だ?」
「用というか闇勇者として単純な顔合わせと聞いている。俺にも詳しいことはわからないが、各頭領への挨拶回りだそうだ。」
「なるほど、そうかわかった。滞在はどれほどするのだ?」
滞在か、考えてなかったな。この挨拶回り自体急ぎの用ではないっぽいし良いか。
「・・・引き抜きの事、忘れてない・・・?」
あ、それもあるんだった。そこのところ話しとかないといけないと思うが、あんまり許可は出してくれそうに無い感じする。
「もうじき暗くなる。ひとまず私の家に来るといい、メシもそちらの分を用意させるのでな。」
「わかった、じゃあいくか。」
俺の横にいる二人も一緒に向かう事にした。リーランがジト目でこちらを見てくるが、見に覚えがない。
「さっきは冷や冷やしたぞ。いきなり二人とも喧嘩腰で睨み合って、何をしているんだと思ったぞ。」
「あぁ、それか。いや、あっちが喧嘩売ってくるからついな・・・」
「出会ってすぐにこれじゃあ先が思いやられるよ、まったく。」
そんな会話をしながらイーロンの家に向かって俺達は歩いていった。




