4 初めての混浴!
今この鎧何と言った?付いてくる?リーランが?大浴場に?
「え、何で?」
「私も今の模擬戦で汗を掻いてしまったので行きたいのですが、無理ですか?」
うーん、正直なところクローサと二人でキャッキャッウフフをしたいのだけども。このタイミングで言うということは恐らく俺を警戒しているんじゃないだろうか。そうでもない限り、気を遣って遠慮をすると思う。俺もさっきクローサに遠慮されたし。遠慮っていうか、やんわりとお断りされただけどな。
「いいんじゃないでしょうか。リーランが付いて来てくれるならわたしもその方が嬉しいです」
リーランの同行を良しと言うクローサ。ここで言われちゃ俺もダメとは言いづらいし、仕方無い。
「まぁ俺も別に構わんが」
「ありがとうございます。それでは、私と魔王様は今大浴場の用意をしてきますのでしばらくここでお待ち下さい」
「ここでか?」
「はい。準備は私達がしてきますので、入る準備が整いましたら部下に案内させます」
そう言うとクローサとリーランが部屋から出て行ってしまった。準備とかは入る人が各自でやるとかなのか?それでも部下にやらせてもいいと思うけど、きっとここでのルールか何かなのだろう。
さて、話し相手も居ないし、どうにも暇だな。どのくらい時間がかかるかとかも聞いておけば良かったな。あんまり時間かかるようなら何か時間の潰せる物を借りた方が良かったのかも。
しかしこの部屋、意外と物が多いな。中学の頃の野球部の部室を思い出すぞ。壁にはなんか賞状の様なものが立て掛けられてるし、ロッカーに似た用具入れもいくつかある。もしかしてここ、控え室と言うより何かの集合部屋に近いのか?例えば騎士団とか、傭兵団とか。
「失礼します」
扉を開けて部屋に入ってきたのは、白い鎧を着ている背が低い少女だった。額には鬼を思わせる二本角が生えており、綺麗な銀髪を後ろで纏めていた。
「闇勇者様、浴場の準備が出来たとの事ですので案内します」
見た目が幼く、それに相応しい可愛らしい声でスラスラと喋る。恐らくリーランが言っていた部下の人だろう。あちらの準備が出来たということらしい。
「わかった、それでは案内してくれ」
しかし、この子といいクローサといい全体的に見た目幼い子が多いな。魔族だから見た目通りの年齢ではないだろうが、それでも魔族から見るとまだまだ小さいほうだろう。
「君は、リーランの部下の人なのか?」
部屋を出て、廊下で何気なく語りかける。リーランもそうだったが、ここの人はあんまり人と会話をしたがらない傾向にあるようだ。いや、単に親しくない人とは話さないだけかもしれないが、それでも案内中ずっと無言は流石にキツい。
「はい、スーネといいます。わたしは確かにリーランお姉様の部下です」
ふむ、この子はスーネというう名前らしい。別に名前までは聞いていなかったが、それならそれで話しやすくなるから好都合だ。
「やっぱりそうか。それじゃあスーネ、ここからどのくらい大浴場までどのくらいかかるんだ?」
「そうですね、そんなにはかからないと思います。あと、あまり気安く呼ばないで下さい」
当たりキッツ!何で!?俺なんもしとらんよ!?確かに態度はそっけなかったけどこんなに嫌われてるとは思わなかった。気安く呼ばないでって、余程俺の事が嫌いなんだな。見に覚えはないが。
「そ、そうなのか。それじゃあ何て呼べばいいんだ?」
「別に呼び名を変えろとは言ってません。ただ、その場しのぎの様な会話で無駄に名前を呼ぶことはやめて下さいと言ってるんです」
あぁ、無駄な会話をするなと。それにしたってもう少し言い方ってものがあるだろうに。結構心抉られたぞ。それじゃこの子と無言で大浴場へ向かわなきゃいけないのか。かなりつらいな。
会話が途切れ、無言のまま廊下を二人で進んでいく。長く広い廊下をスタスタと早足で歩いていくスーネ。早く済ませてとっとと終わらせたいらしいというのが思いっきり態度に出ている。本当に俺が何をしたというんだ、まったく。
「ここです」
控え室からおよそ十分、案内された場所には和風の障子のような戸があった。
「ここが大浴場か?」
「はい、それでは案内はしましたので」
そう言うと、あっという間にどこかへ行ってしまった。・・・・・・色々言いたいことがあるが、今は置いておこう。それより、ここを開けたら異世界美少女とウハウハ混浴だ。
木製の障子の取っ手に手を掛けて、入り口を開けるとそこに、二人の美女がいた。
一人は背が低く青い肌に赤い瞳をしていて、グレーの髪を腰まで伸ばしている。一番特徴的なのは胸部で主張しているたわわに実った二つの果実である。こちらはタオルを体に巻きつけ、顔を赤くしてこちらを見ている。
もう一人は先ほどの少女より背が高い女性で、それゆえ大人っぽく見える。肌は薄い褐色で少し目つきが悪いが翡翠色をした美しい瞳があり、綺麗な金髪は肩で揃えられていている。腰には黒く美しい翼が小さく揺れていた。しかし、大人っぽい見た目とは裏腹にあまり自己主張に乏しい壁が胸部にあった。
「クローサと・・・誰?」
「私です、私」
鈴のような凛とした綺麗な声。そして腰に生えた黒い翼。あまりにも姿勢のいい立ち姿。
「まさか・・・・・・リーラン?」
「はい、リーランです」
リーランってこんなに美人だったのか!?あんなデカブツを軽々と振るっている辺りもっといかついゴリラみたいな奴かと思ってた。しかし、こんな細身であの大剣を振るってたのか、すごいな。
「闇勇者様、お脱ぎにならないのですか?」
「あ、いや、脱ぐには脱ぐが・・・・・・」
なんか視線が集中して脱ぎづらいんだが。ていうかリーランは羞恥心というものは無いのか、全裸で仁王立ちは男の俺でも恥ずかしいぞ。あ、クローサはモジモジしてる。かわいい。
「時間がかかるようでしたら我々は先に入っていましょうか?」
「! そうしましょう!先に入っちゃいましょう!」
「魔王様、そんなに急がなくても・・・・・・」
「い・い・か・ら!」
大きな声でリーランを引っ張って、先に行ってしまった。どれだけ恥ずかしいんだ。俺が強制させたんだけど。まぁ視線が集中しない分脱ぎやすくなったけどね。
風呂場の入り口はあそこか、ガラスで出来てるみたいだな。元の世界の温泉に来た気分だな。温泉なんて何年ぶりだろうか、そもそも家を出ないから温泉どころかいつもシャワーで済ませてたんだけどね。
そんじゃ適当なカゴに服を入れてっと、そういえばジャージ姿のままここに来たんだな。着替えとかどうすればいいんだろう。ま、入ってる時にでも聞けばいいか。
よし、ジャージも脱ぎ終えたし、腰にタオルも巻いた。これで入る準備は万端だ。それではクローサ達が待っている場所へ、いざ!
「出陣!」
ガラスで出来たスライド式の戸を開け放つと、そこにあったのは大浴場の名に相応しい広さと種類の風呂だった。向かって正面に広い大風呂、入り口の左側には打たせ湯、その奥には炭酸風呂、入り口の右側はサウナと水風呂まで完備してあり、一番奥には露天風呂などもあるようだった。
この広さに、この温泉の種類、確かに準備するとなれば時間はかかるだろう。
広い風景を見渡すしていると、正面の大風呂に二人はいた。なにやら話し込んでいる様子でこちらにはまだ気がついていない。
よし、クローサを驚かせよう。むしろ胸を揉もう。今なら幸い湯煙と打たせ湯の音でこちらに気がついていない様だし背後から胸をわしづかみして驚かせよう。そうと決まれば早速実行だ。
ゆっくりと近づき、壁伝いに背後にまわる。まわったのだが・・・・・・・・・・絶対リーラン気づいてるだろ。こっち見てニヤニヤしてるし、さっきからしきりにGOサイン出してるよ。俺が何をしようとしてるかわかった上で笑ってやがる。
「リーラン!聞いてますか?」
リーランの方を見ていたら突然クローサが大きな声を出した。
「ああ、聞いてるよ。闇勇者様が意外とお前の好みだったって話だろ?」
「ブフッ!」
リーランの不意打ち的な質問の返し方に不覚にも噴き出してしまった。なんて話してるんだ、そんな話題俺の居ないとこで話せよ。あ、やっぱりクローサは俺に気づかないのか。なんか色々鈍い子なんだな。そういえば、リーラン敬語じゃなくなってるぞ。
「違いますよ!」
「違うのか?」
「ち、違いませんが・・・それはもう終わった話ですよ!」
「悪い、実は全然聞いて無かったんだ」
「もぉー!ちゃんと聞いてくださいよ!」
クローサが腕を振り上げ怒っている。あれ?これってもしかしてチャンスじゃね?
「せいっ」
がら空きになった脇の隙間から腕を突っ込みその巨大な果実を揉みしだく。
おぉ、やわらかい。それでいてこの大きさ、文句なしだな。いつまでも揉んでいられるような感触だ。
「へっ?誰の手ですか、って・・・・・・・・きゃあああああああああああああああ!!!」
「ナイスです!」
「だろ?」
「なっ、なにしてるんですかっ!この変態!」
我々の業界ではその言葉はご褒美です。そんな罵倒の言葉じゃ俺は揉む手は止めないぞ。
「いっ、いつまで揉んでるんですか!」
その柔らかい感触を楽しんでいると、怒った言葉と同時にクローサの平手が俺の頬に飛んできた。
「落ち着いたか?」
平手打ちをされてから数分経った。あれから、何度も俺の体をクローサはグーで殴っていた。が、正直全然痛くなかった。
「はい・・・すみませんでした・・・・・・で、でも、いきなり女性の胸を揉むのはありえないと思いますっ!」
「良いではないですか、減るもんじゃないですし。私にはそんな立派なものはありませんからね・・・」
リーランが自分の胸を見て言う。恐らく自分の胸がコンプレックスなのだろう、わざわざそこに俺が触れる必要もない。
「リーラン、あなたもです!どうして後ろに闇勇者様が居たことを教えてくれなかったんですか!」
「魔王様の羞恥に染まった顔が見たかったからです!」
「自信満々に言わないでください!」
姉妹喧嘩のような言い合いを聞きながら俺は痛む頬をさすっていた。恐らく綺麗な紅葉マークが付いているんだろう。グーの攻撃は多分照れ隠しでしていたのだろうが、この平手打ちは恐らく本気で引っ叩いたのだろう。
「だ、大丈夫でしょうか?」
「自分でやったんでしょうに・・・・・・」
「あれは条件反射でというか、というか、リーランが言わないで下さいよ」
「いや、俺もちょっと悪ノリしすぎた」
「そうでしたか?もうちょっと過激でも良かったと思いますが」
「俺としてもその方がいいんだが、下手すれば殺されかねんからな」
「そんなことしませんよ!」
「条件反射でビンタする奴が言ってもなぁ?」
「ですよねぇ?」
「もぉー!闇勇者様までそんなこと言って!」
いやー、クローサをからかうのは面白いなぁ。俺が来るまでの間、リーランが嬉々としてクローサをイジる理由がわかった気がする。そういえば二人とも俺の居ないとこではずいぶん親しげに話していたな。
「俺が来る前は二人とも仲良さそうに話していたが元々仲が良いのか?」
「はい、お母様がリーランの母と仲が良かったので昔からわたしとリーランは一緒に遊んだりするような仲でしたので」
「じゃ二人っきりだと口調が変わるのはそのときの名残か」
「まぁそれもありますが、闇勇者様の前では少なくとも敬語を使うようにと言ってたんです」
そういうことか。この世界では闇勇者は魔王より上の存在なのだろう。だから、その前に敬語を使えと事前に言っておいてたわけか。けど、クローサの口調は元々の喋り口調なのだろう。リーランと話す時も敬語だったんだからな。
「へぇ、それじゃあ俺もそんな感じで接してくれよ。堅苦しいのは嫌いだからな」
「えっ、でもあまりに恐れ多いと思」
「じゃあそうさせてもらおうかな」
「おう、その方が何かと話しやすいだろ?」
「だね」
「り、リーラン!無礼ですよ!」
「でもその方が良いって言ってるし。話しやすいならその方が良いじゃん。闇勇者様もそう言ってるし」
「で、ですが・・・・・・」
「おう、全然いいぞ。呼び名も闇勇者じゃなくて名前のトシユキで呼んでくれ。先代の奴らと同じ感じだし」
「仕方無いですね、わかりました。トシユキ様と呼べばいいんですね」
「あぁ、それで頼む。改めてよろしく、クローサ、リーラン。」
「よろしくお願いします」
「よろしく、トシユキ様」
こうして裸の付き合いを終えた俺たちは召還されたあの場所、王の間で俺の処遇について話をすることになった。




