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31 大事な話!

夕飯の時間が終わり、各々が再び自分の役目へと戻り始めていた。

 女性達は夕飯の後片付けをするために台所へ向かい、青年達は畑仕事や農作業に戻ろうと一斉に外に出て、子供達はこれから何をして遊ぶかを外で話している。

 その中にセルロやイノも混じっており、子供達は楽しそうにはしゃぎながら「次は何する」「アレをしようよ」と無邪気な声が聞こえている。

 そんな子供達の無垢な声に紛れて、複数の大人が喚くような大声が聞こえてきた。

 「ねー組み手しようよ、組み手!」

 「いやホントマジで作業しないと俺達父ちゃんに怒られるんスよ!」

 「さっき充分したじゃないスか!もう体中傷だらけっスよ!」

 「あ、闇勇者さん!この人何とかしてくれないっスか!?」

 その声の原因は駄々をこねるリーランとそれに答えている三兄弟のものだった。やはり坊主がこちらに気づいて俺に助けを求める。だが、正直関わりたくないのでそのすぐ横をそ知らぬ顔で通り過ぎる。

 「ちょ!シカトっスか!?俺達これから仕事しないと父ちゃんに比喩無しで殺されるんスよ!」

 そう言いながら俺の服の袖を掴んで涙目になる三兄弟。正直、見苦しいの一言に尽きるのだがこのまま見捨てるというのも忍びない気もする。

 「リーラン、組み手はいつでも出来るんだから今は仕事をさせてやれ」

 比較的無難な言葉を選んで、リーランに説得を試みる。俺が協力的な態度を見せたからか、坊主達の表情が心なしか晴れているようにも見えた。

 「だってザルフも居ないし、他に相手してくれるような人も居なさそうだしさ」

 頬を膨らませて抗議の言葉を口にするリーラン。確かに白虎の青年が三人がかりでも戦って勝つような奴だ、敵うのはザルフぐらいだろう。

ザルフといえば夕飯後に部屋に来てくれと言っていたのをすっかり忘れていたな。確か詳しい事はリーランを踏まえて、と言っていたから連れて来いという意味だったんだろう。

 「リーラン、そういえばザルフが俺と一緒に部屋に来て欲しいって言ってたぞ」

 さりげなく、リーランに向かって言ってみた。すると、三兄弟に迫っていたリーランがピタリと動きを止めてこちらに向かって振り返った。

 「ザルフが?何で?」

 疑問符を浮かべながら、首を傾げるリーラン。

 「何でも話す事があるらしい。その詳細まではまだ聞いてはいないが」

 リーランを踏まえて話す、と聞いていたのでそれをそのまま伝える。俺の話を聞いたリーランは何度も首を捻って考えているような動作を繰り返していたが、しばらくしてから体をこちらを向き直した。

 「そっか。じゃとりあえずチャッチャと聞いて来るから終わったら組み手しようね」

 そう言って三兄弟にニッコリと笑みを向けるが、三兄弟はまったく笑っていなかった。しかし、仕事があると言っているのにそれでも尚組み手を強制させるとはどういう事だ。

 「それじゃ行こうか、トシユキ様」

 青ざめた表情をしている三兄弟をその場に置いて、リーランが歩き出す。食後だというのにリーランの足取りは軽く、スキップをしながら鼻歌を歌っている。その様子はどこか楽しげで、ルンルンと言い出しそうなほど上機嫌に見えた。

 「何でそんなに上機嫌なんだ?」

 突然スキップを始めたリーランに何故かと問う。するとリーランは、「うん?」とあまりに気の抜けた返事を返した。

 「だって、多分ザルフの話ってお酒の事だと思うし。お城だとあんまり飲めないからちょっと期待してるんだ」

 そう言い終えると再びリーランは鼻唄を再開した。言われてみればどこか楽しみを待つ子供のようにも見える。

 しかし、酒?夕方の雰囲気を見る限り、そんなお気楽な話題を出すような顔じゃなかったぞ。

 「ザルフが酒を飲むって言ってたのか?そんな風には見えなかったけどな」

 再び思いついた疑問をリーランに問いかける。そうすると今度は振り返らずに、跳ねながらリーランは答えた。

 「だって昨日の夜にまた明日も飲もうね、って言ったら『明日はもっと良質の酒を用意しておく』って言ってたよ」

 なるほど、それがリーランが期待している理由か。いや、それでもそんな呑気な話をするために呼び出したのではないと思うぞ。

 そんな浮かれているリーランと一緒にしばらく歩いていって、数分後。結局リーランのテンションは着くまでの間に変化する事無く、ザルフの家にお邪魔する事になった。

 「おーい、ザルフー!」

 ザルフの家の扉の前で大きな声を出してリーランがザルフを呼ぶ。しかし、その答えが返ってくる前にリーランは家の扉を開けてズカズカと中に侵入していった。

 無遠慮なリーランに続いて俺も中に入る。すると、床に敷かれた座布団を枕にしながら寝ているザルフがいた。

 「んぁ?」

 リーランと俺の侵入にザルフは気づいていないようで、リーランが立てた物音に寝ぼけた返事を返していた。

 「ザルフ、リーラン連れてきたぞ」

 未だに寝ぼけ眼なザルフの肩をユサユサと揺すり、意識をハッキリとさせる。少し力を込めて揺らしたため、ザルフは意外とすぐに今の状況を確認できたようだった。

 「あ、お前らか。そういえば呼び出してたな、忘れてた」

 ザルフのそんなセリフに大丈夫なのかと不安を覚えるが、話が進まなくなりそうなのでそれは置いておく。

 「それで、俺達に話しておきたかった事って何だったんだ?」

 夕方に聞きそびれた話を思い出す。確か、森がどうとか話していたな。結局中途半端にしか話を聞けなかったので、気になっていた。

 「あぁ・・・そうだな。それじゃ話の続きをするか」

 そう言ってザルフは体を持ち上げて体勢を立てる。少し前までの眠そうな目は既に無くなっており、完全に覚醒していた。

 「トシユキにはもう話したが森の様子が最近おかしい」

 真面目な顔で話を切り出すザルフだったが、その隣ではリーランが?マークをひたすら頭上に浮かべていた。

 「えっとザルフ、お酒は?」

 どうやらリーランは本当に酒を飲むだけだと思っていたらしい。・・・・・・まぁ、そこは空気読んで話聞けよ。

 「え?・・・・・・あっ、してたなそんな話」

 昨夜のリーランとの約束をザルフは思い出したようで、そういえばといった表情を浮かべていた。

 「一応用意してあるけど、話終わった後でな。それに今からする話はリーランにだって関係する話なんだから聞いておけよ」

 そんな話より酒と言い出しそうなリーランにザルフは釘を刺す。そんなザルフに少しムッとした表情をリーランはしたが、近くにある座布団を手にすると、話を聞くためにそれを下に敷いた。

 「さて、本題に入るぞ。リーランも昔行ったと思うが、少し向こうにある白虎の森の事だ。そこに居る魔獣が最近異常に増えている。それに、そいつらが異常に成長する速度が速いんだ」

 白虎の森に住む魔獣、それは今日狩りで出会ったあの二匹の事だろう。もしかすると他にも種類がいるのかもしれないが、そいつらが異常に繁殖して、成長しているとザルフは言う。

 「それだけなら今まで無かった訳じゃない。森の中でデカい魔獣なんかが死ねば、森に魔力を吸収されてしばらくは魔力が森に漂う。それを浴びて森の魔獣が巨大化という事はあった。しかし、今までは二週間もすると元に戻っていたが、今回は異常に長く既に三ヶ月以上経っている」

 「それが森の異常?でも私達に何が関係あるの?」

 もっともな質問をリーランが口にした。確かに今の話だけを聞くと俺達は関係無いように聞こえる。

 「トシユキはただその調査を手伝って欲しかっただけだ。だけど、リーランは恐らく聞きたがるだろうと思って今回呼んだんだ」

 その時、ザルフは一瞬だけ表情を曇らせるが、吹っ切るように声を出した。

 「恐らく、これはオレの親父が原因だろう」

 それを聞いたリーランは、呆然としたまま言葉を失っていた。

 「・・・・・・え?な、何でそんな事を?」

 かろうじてといった感じで声を絞り出すリーラン。だが、その声もやっと出てきたというような掠れた声だった。

 「それはわからん。だが、それくらいしか可能性が考えられない」

 「原因って親父さんは・・・・・・師匠は何をしてるんだ?」

 「師匠、か。昔はそんな風に親父の事を呼んでたな」

 「真面目に答えてくれ、何をしてるんだ?」

 「そうだな、これだけ長期間続いてるという事は死んではいないだろう。そうなると、森に魔力を供給している・・・とかか?」

 どこかおどけた態度でザルフは説明をする。だが、そんな態度を取るザルフにリーランは明らかに怒っていた。

 「何でそんなふざけた口調出来るんだ、お前の親父さんの話だぞ」

 「そうかどうかを調べるためにトシユキに手伝って貰うんだよ」

 「じゃあ調査する時、私も連れて行ってくれ」

 「ダメだ」

 リーランの申し出に、ザルフはキッパリと拒否をする。予想外の返答にリーランは更に怒りを露にしてザルフに食ってかかる。

 「何故ッ!?どう考えても私の方がトシユキ様より役に立つだろう!?」

 「役に立つとか立たないとかそういう問題じゃない。お前は連れて行けないんだ」

 「だから何で!?」

 「女性は村で待機しろと言われてるだろ」

 「それならレオンはどうなんだ!?今日レオンも森の中に入ったらしいじゃないか!」

 「それは比較的安全な所だからだ。明日行く所はそれより奥の森だで、安全は保障できない」

 「それを言い出したら私はトシユキ様より強い自信があるぞ!それでもダメなのか!?」

 「あぁ、ダメだな」

 リーランは何故何でだと聞き続けるが、その事になるとザルフは口を閉じて、ただひたすらダメだと主張し続けるだけだった。

 「それなら、私に何故この話をしたんだ!」

 「じゃあ逆に聞くが、伝えない方が良かったのか?」

 「――――ッ!な、ならもう勝手にしろ!私は知らないからな!」

 そう言ってどこかいじけた様に、敷いていた座布団を枕にしてリーランは不貞寝をしてしまった。

 「まったくそんな事なら・・・・・・・・・・」

 寝転がりながらその場でブツブツと文句を言っているようだが、しばらくするとその声も止んでいた。どうやらふて腐れている内に本当に寝てしまったらしい。

 「ハァ・・・どうしてこうじゃじゃ馬なんだ・・・・・」

 さっきの口論で疲れたのか、ザルフはため息混じりに言う。だが、最終的にリーランが折れてくれた事に少し安堵しているようだ。

 「リーランは寝ちまったようだし、俺達で飲むか」

 そう言ってザルフは立ち上がった。室内を少し歩いて床に座り込むと、床にあった穴に手を差し込みそこを掴んで引っ張った。すると床が開いて、そこには色とりどりの酒瓶があった。ザルフはしばらく悩み、少ししてからその中の一つを取り出した。

 「今夜はこれで一杯やるか、酒は飲めるよな?」

 いつの間にかザルフの手には二つの盃が握られていて、こちらに向けて差し出した。

 「飲めるけど、俺は結構飲むぞ?」

 「ま、飲めるならいいんだよ。少し聞いて欲しい愚痴もあるしな」

 それを聞いて、俺は差し出された盃を受け取る。盃を受け取ると、ザルフは酒瓶を開けて俺の盃に注いだ。

 「次はオレに注いでくれ」

 盃を差し出すザルフから酒瓶を受け取ってザルフに注いでいく。盃の中を見てみると鮮やかなコバルトブルーが彩られており、とても綺麗だと思えた。

 「さぁ、トシユキ」

 声を掛けられてザルフの方を振り向くと、盃を掲げて目配せをしていた。それに気づいて俺も盃を同じ位置に移動させてザルフと同時に同じセリフを唱えた。

 「「乾杯」」

 二人で盃をぶつけ合い、同時に飲み干す。口の中に酸味と甘味が広がって、アルコールに特有の風味が舌の上にじんわりと沁みていく。

 「美味いな、これ」

 率直な感想を口にすると、ザルフはにんまりと嬉しそうに口を綻ばせた。手にしていた酒を一気に飲み干して、ザルフは説明をしだした。

 「だろ?これはスーベリーという果実を使って作った酒なんだが、この独特の酸味がいいんだよな。村の畑で作ったやつなんだが、寝かせれば寝かせるほど甘味が出るんだ」

 長々と特徴を言い、それが自分の土地で出来たものだと自慢をする。だが、確かに自慢できる程に美味い。

 「・・・・・・ザルフ、さっき何であんなにもリーランの同行を拒否したんだ?」

 少し前の言い合いを思い出して、つい口に出してしまう。頭ごなしに否定をする所為で、リーランとも軽い口論になってしまっていた。

 「あぁ、それはまぁ・・・・・・言っちゃ何だがあいつは強い。けど、それでも安心できるような場所ではないんだよあの森は」

 危険が高い、とザルフは言う。

 「それも理由の一つだけどな、本当はもう一つ理由があったんだよ」

 ポリポリと頭を掻いて、言い出しずらそうにザルフは下を向く。

 「その理由をリーランは聞きたかったんじゃないのか?」

 少なくとも二つ以上の理由があれば、リーランも納得を出来たのかもしれないのに。そう思ってザルフにその旨を伝えようとしたが、俺より先にザルフが口火を切った。

 「いやでもさぁ・・・惚れた女を危険な目に合わせるなんて、とても出来ないだろ?」

 顔を真っ赤にさせてザルフは言った。その言葉に反応が少し遅れて、間を置いてからその内容の真意に気づく。

 「えっ・・・・・・え!?」

 「そ、そんなに驚く事か?」

 「いや、何か意外だなと思って」

 「そうか?あいつは普通に外見もいいと思うけどな」

 いや、それは確かに俺も思うが・・・・・・何とも言えないな。それに二人の関係はどちらかと言うと友達同士のやり取りに見えたが、わからないものだな。

 「なるほどねぇ・・・へぇ~ザルフがねぇ・・・・・・」

 顔が思いっきりニヤけさせながら、ザルフを見る。その行動にザルフは紅顔させながら「なんだよ」と、不満げに言葉を漏らしていたが、どうもニヤニヤが抑えられない。恐らく食事処のおばちゃんが俺とレオンを見る時もこんな気分なんだろう。

 あまりにも見られすぎて照れたのか、ザルフは盃に次々と酒を注いで飲み干していく。それと同時に赤くなった顔が更に紅潮していく。

 「おい、トシユキ。お前も飲めよ」

 ずい、と酒瓶を傾けてよこすザルフ。既に目の焦点が定まっておらず、時折ヒックと言っていてもう酔いが回っているように見える。

 「そうだな、もらうか」

 きっとザルフも今日は飲みたいのだろう。その気持ちを受け取って俺も盃を差し出して、酒を受け取る。空の盃に並々と注がれて、思わず声が出てしまう。

 「おっと、それくらいでいいぞ」

 「さぁさぁ、ぐいっとぐいっと」

 酔っぱらっているせいか、ザルフのテンションが妙に高い。それに肩に手を回して、「おばちゃんはさ」とか「最近レオンがな」と次々と愚痴を吐き出す。今まで溜まっていたのか、その口は閉じるという事は無いまましばらく続いた。

 二人でしばらく飲んで、空いた酒瓶が一つまた一つと増えていく。三本目を越えた辺りからザルフは潰れてしまいその場で顔を真っ赤にして寝てしまった。

 愚痴を言う相手も居なくなり、静かに酒を傾けていく。ザルフが潰れたのをいい事に酒が隠してあった場所から何本か拝借して更に追加で飲み干していく。

 「あぁ~美味いなぁ」

 七本目の酒を飲み終える頃には、俺も完全に酔いが回っており酩酊していた。フワフワと体が浮き上がるような感覚があり、体の芯から暑くなる感覚があり思わず窓を開け放つ。静かに開けた窓から入ってくる少し寒いぐらいの夜風がたまらなく気持ちいい。

 「さて、大分俺も酔ってきたし寝るかな」

 上機嫌のまま、もぞもぞと近くにある座布団に手を伸ばして手ごろな枕にする。これだけ酒を飲んだのも久しぶりだ。

 そういえば昔親父と飲み比べしたな、一回も勝てた事無かったけど。あの時はやばかったなぁ、お互いムキになってガンガン飲んで二人とも病院送りだったしな。

 ・・・・・・もう一回家族に会いたい。そんな叶わない願望を口にして、静かに眠りに着いた。




 トシユキ、ザルフが潰れてから数十分後。レオンは明日の朝食の仕込みをしていてすっかり帰るのが遅くなっていた。恐らく家には三人がまた騒いでいるのだろうなと考えながら自宅に到着するが、中から大きいイビキが聞こえてきてその声がザルフのものだと理解する。兄がイビキを掻いているという事は久しぶりに酒を煽ったという事だろう。そう思いながらどうせまた腹を出しながら寝ているのだろうと思い、布団を用意しなくちゃなと頭の中で思い浮かべながら玄関の扉を開ける。

 するとそこには何本も空になった酒瓶、体を大の字にして寝転がる男二人、外の風が入ってかなり冷えていた室内に振るえながら寝ているリーランが居た。

 辺りに散らかった酒瓶を片付けるわけでもなく、そのまま豪快に寝る男達に憤りを覚えるが、結局怒るに怒れず片付けて寝ようとレオンは酒瓶を始末しだした。 

 転がる酒瓶を数えてみると合計七本もあったのだが、きっと兄がトシユキのために用意したんだなと勘付くとそれも咎める事も出来なくなってしまった。

 「とりあえずリーランさんの分の布団を持ってきてあげよっか」

 部屋の隅で体を丸くさせながら、寝ているリーランに気づいて兄の分の布団を用意する。窓を開けっぱなしにしてどれほど時間が経ったかわからないが、震えるほどに凍えていたのだろう。この事は後日、リーランと一緒に文句を言ってやろうと思いつき、必死に謝る二人の顔を想像して思わず笑みがこぼれる。

 予想よりずっと掛かってしまった仕込みを思い出して、明日の朝食のためにも早く起きないといけないな、と考えて少し面倒な気分になった。だが、そんな気持ちも疲れているせいか気にならなくなり、すぐにレオンも床に伏せて眠りに入った。

 

 レオンが布団をかけた相手、リーランは未だに意識を覚醒させていた。それも、トシユキ達が飲み始める前から。

 最初は本当に不貞寝をしようとしていたのだが、怒った事によって体が興奮状態になっていて寝付けずにいた。それも少しの間だけだろうと思って、床に寝そべっているとザルフの口から気になる言葉が聞こえた。

 『惚れた女を危険な目に合わせるなんて、とても出来ないだろ?』

 その言葉を聞いた時、リーランもトシユキと同様に理解をするのに時間が掛かった。しかし、その後に同様に言葉の真の意味を理解して激しく動揺した。

 (えっ!?それってつまり・・・・・・ザルフは私の事をって事?いやいやそんな馬鹿な!)

 頭の中で必死に否定をする。それもそうだろう、今までリーランはいつからかはわからないが、友達ではなく女性として相手をしていたのだろうから。それに気づかない自分も自分だと思ったが、どうにもその事実を受け止めきれない。

 自分の背後では呑気に大きなイビキを掻いて寝ているザルフが居る。今後どういった顔して向き合えばいいのかわからない。しかし、嫌でもこの場所にいると顔を合わせる事になる。今まで男として意識していなかった分、余計に緊張してしまう。

 別に、ザルフの事は嫌いではない。むしろ好意的ではあるのだ。それはもちろん友達としてという意味だが。

 気がつくと窓から入ってきていた夜風が、いつの間にか止んでいた。風の音が聞こえる事からまだ風は吹いているのだろう。多分、さっき帰ってきていたレオンが窓を閉めてくれたんだろう。

 その時にかけてくれた布団も、しばらく被っていると段々と暖かく感じていた。先程までの寒さがなくなり、暖かさと同時に眠気が襲ってきた。

 (もういいや・・・・・・深く考えない事にしよう)

 訪れた眠気に体を預けて、リーランも他の三人に次いで眠った。

 この日以降のザルフと会う時の気まずさに気が付く事も無く。

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