29 覗きの少女!
そうして俺は村の食事処から少し離れた場所にあるザルフの家を目指していた。
歩く事数分、目的の木造建築が見えてきた。すると、一階にある風呂場の窓から湯気が出ているのが見えた。
という事は恐らくザルフが風呂に入っているのだろう。まだレオンもリーランも村の方に残っているし、家に戻ると言っていたのはザルフのみだから現在入浴できるとするならばザルフのみだろう。やれやれ、一番風呂かと思ったが先客がいたか。それではザルフが上がるまで待つことにしようか。
「ん?」
家に到着して、螺旋階段に腰を掛けた。その時、一階の風呂場の前で待機していると近くの茂みからわずかにだが物音がした。この辺りは魔獣は出ないと聞いたが・・・万が一があるだろう。物影に隠れて様子を見よう。
螺旋階段の影に隠れて茂みを注視していると、木々の隙間から小さい少女の顔が現れた。その少女はポニーテールを揺らしながら周囲をキョロキョロと見回し、何かを確認して一息ついたと思うと、茂みの奥から大きい箱を取り出した。
その箱を引きずりながら、風呂場の窓へ一直線に向かう少女。そして、その箱を踏み台にして窓から風呂場の中を覗いていた。
「確かあの子、イノって子だよな・・・・・・?」
風呂を覗いて恍惚とした表情を浮かべる少女には、見覚えがあった。少し前に食事処でザルフと嬉しそうに会話をしていたあの子だ。イノという女の子は箱に乗った状態で未だに風呂を覗き見ている。
い、いくら小さい女の子でも流石にこれは教育上良くないんじゃないか?このまま風呂を覗く習慣を覚えてもいけないし、ここは大人の俺が止めるべきだろう。
「・・・おい、イノ」
小声で呼びかけると、イノはゆっくりとこちらを振り返った。
「ん?おにーさん誰?」
覗きの現場を見られたというのに暢気な返事をして、首を傾げるイノ。そんな態度に若干驚きながらも、何をしているのかと聞く。
「何って、ザルフを見てるのよ」
至極当然といった顔で言ってのけると、再び視線を風呂場の中に移す。再び満足げな表情をしながらうっとりとする少女。覗きを止めようとすると、中からザルフの声が聞こえてきた。
「あぁ~、疲れた。こういう時に入る風呂ってのは格別だな。これでまた安眠できそうだ」
と、丁度湯船で一息ついたようだ。しかしザルフ、お前の今のリラックスしてる状態をこの子が惚けた表情で見てるとは思わないだろうな。
「はぁ~、やっぱりザルフって格好いいなぁ。いつもの凛々しい顔も全然良いけど、緩んだ表情も格別ね。これでウチも今夜は安眠できそうだわ」
小声で言いながら、イノはふぅとため息をつく。
「で、おにーさんは誰なの?邪魔しに来たなら怒るけど?」
さっきまでの綻んだ笑顔とは違い、少し怒った顔でこちらを見るイノ。さっきから誰かと尋ねているところを見ると俺が誰かわかっていないらしい。
「俺はザルフの友達だ。さっき食事処で会話もしたじゃないか」
そう言うと、イノはハッとしてオロオロと狼狽し始めた。
「えっ!?あっ!あの時の!こ、この事はザルフに言わないで!お願いだから!」
必死に俺に懇願をするイノ。いや、別にザルフに言うつもりはないがな。そう言うならこんな事をしなければいいのにと思う。
「・・・・・・ザルフには黙っておくが、今後こんな行為はしないようにしろよ」
「それは無理」
即答だった。それに真顔だった。恐らくこの子は本気で言ってるんだろう。
「これはウチの生きがいでやめる事なんて出来ないよ!それに本人に気づかれてない内はいいじゃん!」
「いや良くねぇだろ!?この行為自体がダメだって言ってんの!」
「なんで!?バレなきゃ犯罪じゃないって昔の偉い人も言ってたよ!」
「そんな事言う奴は間違いなく犯罪者でギャングか何かだから耳を貸すな!それにそんな価値観身に付けたまま社会に出たら大変な事になるぞ!」
「大丈夫だもん!ウチはザルフが受け入れてくれればそれでいいもん!」
「いやだからそういう問題じゃな」
「何してんだお前ら」
背後からイノとは別の声が聞こえ、振り返るとそこには体から湯気を立ち上らせたザルフの姿があった。
「さっきから聞こえてきてたぞ。で、誰が覗きをしてたんだ?」
並々ならぬ声色で問いただすザルフ。その目線は明らかに俺ではなくイノに向けられていた。
「イノ、これで何回目だ?」
「えっと・・・2回目?」
「4回目だ。サバ読みするな」
前科があったらしい。それも3回も覗きをしていたらしく、ザルフの表情は最早諦めたような感情が含まれている。
「こ、今回は違うよ!今回は・・・・・・そう!この人に誘われたんだよ!」
「ハアァ!?」
この小娘、よりによって俺に罪を擦り付けやがった。むしろ俺は止めたというのに、恩知らずな奴だ。
「お、おい。ザルフ、俺がすると思うか?」
「いや、思わん。むしろされたら身の危険を感じるぞ」
「その心配は杞憂だから安心しろ」
俺にそっちの気は無い。それよりむしろ俺を言い訳の理由に使ったイノを叱らんとな。
「おい、イノ」
説教をしようと思った途端、俺より先にザルフが口を開いた。
「いつからお前は人に迷惑をかけるようになったんだ?」
「うっ・・・・・・」
「誰が悪いんだ?」
「ウチです・・・・・・」
「そう思うなら謝るんだ」
「ザルフ、ごめんなさい・・・・・・」
「オレだけじゃないだろ、イノはトシユキにも迷惑をかけたんだ。それも謝れ」
「ごっ、ごめんなさぃ・・・・・・」
オレに謝罪をすると、罪悪感からか目に涙を溜めるイノ。
「泣く位ならしなきゃいいんだ。だが、お前はもう謝ったんだからオレ達は許さないとな、トシユキ」
泣きそうなイノの頭を撫でて、困ったような顔でザルフはこちらを見る。
「もう気にしてないからな、泣くなよ」
俺がそう言うと、溜まった涙を袖で拭く。ザルフももう怒るような事はせず、そのまま頭を撫で続けた。
「という訳だから、ほら村の方に戻りな。どうせおばちゃんに黙ってきたんだろ?」
「うん・・・」
イノは小さい声で頷く。すると、もう大丈夫と言って村の方向に駆け出した。
「また遊びに来るから!また今度ねー!」
走りながら大きな声でそう告げるイノ。それは歳相応の元気な声で、明るい元気な少女のものに戻っていた。
「スマンなトシユキ。あんな子だけどどうか仲良くしてくれ」
酷く申し訳なさそうな顔をして、ザルフは走り去るイノを見る。
「別に俺が何をされた訳でもないし、気にしてないよ。それに小さい時はあのくらいお転婆なのが丁度いいんだ」
かつて俺にもあんな時期があったのだろうかと思ったが、特に自己主張をするわけでもない根暗な子供だったのを思い出して、速やかに話題を変える事にした。
「それよりザルフ、風呂はもう空いてるのか?」
「え?あぁ、もう入っていいぞ。上がったら上に来てくれ」
「わかった、それじゃ」
会話を終えると、ザルフは2階へ登っていった。
さて、それじゃ俺も風呂に入るとしようか。
木製の戸を開けて脱衣所の中に入ると、まだ少し風呂の熱と湯気が残っていて、早く湯船に浸かりたいといった欲求が生まれる。脱衣所のカゴを見てみると、新しい着替えが用意されていた。にザルフが気を遣って用意をしてくれたんだろう。とてもありがたい。
着ている服を脱ぎ終えて、タオルを腰に巻く。その格好のまま、風呂場の入り口へ足を踏み入れて腰を下ろす。
「やっと落ち着けるな」
ザルフも言っていたが、やはり風呂というのは心が休まる。俺も早く頭と体を洗って湯船に浸かるとするか。
トシユキが湯船に浸かる瞬間と同時間帯に、ザルフの家の周辺をうろつく3つの影があった。
「・・・無事気づかれること無く、近づけた・・・」
「そ、それは良いんだけど・・・何をするつもりなの?」
「何って、覗きに決まってるでしょ?」
一人は黒服の少女、一人は白髪の16程の歳の少女、もう一人は幼い見た目をしている金髪を束ねた少女だ。
黒服の少女は小さい声で、白髪の少女の耳元で呟く。
「えっ!今入っているのってトシユキさんなの!?」
「シーッ!声がでかいよ、レオン」
「あ・・・ご、ごめんイノちゃん」
レオンと呼ばれた少女は頭を下げて詫びる。
そう、ここに居る三人は、魔王の側近の一人セルロ、白虎族の末裔のレオン、それと白虎の村娘イノだった。
三人は何を目的にしてこんなところに居るのか、それは。
「・・・今、何て言ったの・・・?」
「え?だから闇勇者さんなら今多分お風呂に入ってるよ」
「・・・つまり、今なら風呂の中を覗けるという事だよね・・・」
という不穏な会話から始まった。
風呂を覗く行為をつい先程咎められたイノも、「バレなきゃイイんだよ」というセルロの言葉に騙されてここまでついてきたようだ。
トシユキが上がる前に覗きに行こう、と二人が意気込んでザルフの家に向かった。その途中にレオンが妙に気合の入った二人を見かけた。
「二人共、もう仲良くなったんだね。安心したよ」
二人が仲良く駆け回っていると思い、年長の者として安堵した表情を見せる。
だが、何をしているのかと聞いても「良い事!」としか答えなかった。二人が何をするつもりなのか、それが気になりレオンも二人の後をついていく事にした。
そして今、三人は風呂場の窓の付近に待機して中を覗こうとしていた。
「こっ、ここにトシユキさんが裸で・・・・・」
息を荒くして窓枠を見つめるレオン。そんな興奮状態のレオンにイノは、
「そうだ、見たいならウチの箱貸そうか?」
と言って、どこかからか長方形の白い箱を取り出してきた。
「・・・これは足場に丁度いい・・・」
「でしょ?レオンも使う?」
「つ、使う使うッ!」
レオンが首を勢いよく縦に振る。それを見たイノは白い箱を窓枠の真下に置いて、乗っていいよと言った。
三人が箱に乗ると、窓からトシユキの声が聞こえた。
「ばばんば、ばんばんばん~♪」
美少女達に風呂を覗かれてるとも知らずに、のん気に歌を歌うトシユキ。その声を聞く限り、三人の事には気づいていないようだ。
「・・・やっぱり、そこそこいい体をしてる・・・」
「だねぇ、ザルフ程じゃないけどやっぱりいい男だよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
トシユキの裸体見た二人が各々感想を述べるが、レオンだけは何も喋ることなくひたすらにトシユキの裸体を凝視していた。
(やっぱり・・・いいなぁ・・・・・・)
整った顔立ち、少し白いが綺麗な肌色、それに加えて引き締まった肉体。それはレオンが以前、少しだけ見たあの体だ。
(何でこの人の体を見てるとこんな気分になるんだろう・・・・・・)
何とも言えぬ高揚感と熱く火照る身体。何故、自分の体はこうなってしまったんだろうとレオンは考える。それは人間でいう思春期、いわば発情期の時期に昨夜のような事件が起こり、発情期のスイッチが入ってしまったというのが原因だろう。だが、それらの理屈を明確に知りうる術はレオンは持ち合わせていない。ただ、あの人の体を見たいという欲に身を任せるしかないのだ。
「レオン?どうしたの?」
「えっ?」
浴室の中をあまりに見すぎていたため、レオンが一瞬イノの呼びかけに遅れる。
「ど、どうしたの?イノちゃん」
「どうしたのって・・・そろそろ上がるみたいだから早く戻らないと覗いてたのバレちゃうよ?」
そう言われて風呂場の中を見てみると、トシユキが脱衣所に移動していたのが見えた。
「ホントだ!急いで部屋に戻らなきゃ!」
「・・・私も村の方に戻る・・・」
「そうだね、行こうかセルロちゃん」
そう言いながらイノは箱を茂みの中へ押し込む。それを見たレオンは、成程さっきはそこから取り出したのかと思い、考え付く。今度からは自分も使わせてもらおうと。
「それじゃウチ達は村の方に居るから、レオンもバレないようにね~」
「・・・それじゃ、また後で・・・」
それにレオンも「じゃあね」とだけ返して、2階にある自分と兄の部屋へ戻っていった。
「ふぅ~、いい湯だったなぁ」
やはり、風呂は熱めのほうがいいな。沢山汗をかくから新陳代謝が活発になっている気がする。その後少しぬる目の水を浴びればサッパリするな。脱衣所も窓を開ければ風通しがいいし、意外とここの風呂って上質なんだな。満足満足。
用意されていた着替えを着てっと。それじゃ、風呂も入ったし2階に向かうか。
脱衣所の戸を開けて、螺旋階段を登る。2階の部屋の玄関に辿りつくが、靴が2足ある。一つはザルフの物で、もう一つはレオンの物だろう。食事処の片付けから帰ってきたんだな。まったく気づかなかった。
軽くコンコンとノックをして扉を開ける。部屋の中にはあぐらで座るザルフと、足を崩して座っているレオンがいた。ザルフは欠伸をしながら、頭をボリボリと掻いている。一方レオンは何やら体をもじもじとさせて、顔を赤くしながら目を伏せていた。
「おぉ、来たか。とりあえず座れよ」
そう言ってザルフは座布団を取り出す。その言葉に甘えて俺も差し出された座布団に腰掛け、ザルフと対面する。
「ザルフ、上に来いって言ってたがどうしたんだ?」
「なに、明日の予定を決めておこうと思ってな」
すると、ザルフは今日起きた出来事を話し始めた。
「今日トシユキが体感した様に、狩りというのは非常に疲れる。あの広い森を走り回る時だってあるし、その次にあんな馬鹿でかい相手と戦う時もある」
確かに今日はよく走る日だった。シブズに追われ、その次はシブズの大群に追われた。
「まぁ、今回は少しキツかったと思うがそれは慣れてもらうしかないな」
「と、いう事は今回が特別疲れるわけではないんだな」
「当然だ、身体強化魔法を会得するには実戦が一番良い。明日もこんな感じでやるからな」
「体が持たないかもしれないんだが・・・・・・」
「なら早く魔法を覚える事だな。それが一番手っ取り早い方法なんだからな」
言い終えるとザルフはその場に寝転がりだした。
「オレはしばらく寝るからトシユキは後は自由にしていいぞ。寝て備えるもいいし、魔法取得のために情報収集するもよし、つーことでおやすみ」
余程眠たかったのか、ものの数秒で寝息を立てるザルフ。今日一番動いていたのはザルフだし、当然疲れも溜まっているんだろう。そっとしておいておこう。
だが、自由にしてもいいと言っても特にする事は無いな。ここはザルフの言うとおり少しでも身体強化魔法を得るために話を聞いておこうか。
「なぁ、レオン。お前はどうやって・・・・・・」
背後にいるレオンに振り返りながら話しかける。しかし、振り返るとそこには至近距離にレオンの顔があった。
「うおっ!?」
「どうしたの・・・?」
反射的に驚いた俺に、怯むことなくどうしたと問いかけるレオン。その目はどこかとろんとしており、どこか心ここにあらずといった風にも見えた。
「ち、ちょっと近くないか?」
「そう?このぐらいがちょうどいいと思うおもうな」
ちょうどいいって・・・少し動いたら鼻が付きそうなぐらい近いんだぞ。いくら何でも近すぎるわ。
「・・・・・・トシユキさんってさぁ」
予想以上の距離近さに戸惑っていると、レオンが艶かしく口を開いた。
「な、何だ?」
「意外と良い体つきしてるよね」
おいしそう、と加えて言ってレオンはクスクスと笑う。
た、確かに引きこもってる間は健康体を保つために筋トレはしていたが・・・・・・おいしそう?
「でもまだちゃんと見たこと無いんだよねー、あたし」
「別に見ても面白くないと・・・お、思うぞ?」
「そんな事ないよ、あたしは充分面白いし」
レオンが俺の体を足から頭までをじっくりと見つめる。まるで肉食獣に狙いを定められた獲物の気分だ。
「だからさ、ちょっと見せてよ」
そう言うとレオンは俺の両腕を片手で掴んで、勢いよく倒れこんだ。突然の行動にまったく反応できず、そのまま押されるがままに倒される。必然、俺が下でレオンが上になった馬乗り状態になる。
「お、おい!レオン!」
「シーッ。静かにしないと兄貴、起きちゃうよ?」
俺の後ろでは床で座布団を枕にしたザルフが寝息を立てていた。幸い、今の倒された音では起きなかったが、いつ起きるかなんてわからない。
「大丈夫だって、ちょっと見せてもらうだけだから」
目をギラつかせながら着替えたばかりの衣服を空いてる片手で剥ぎ取ろうとしてくるレオン。どう考えても見せてもらうだけの雰囲気ではない。むしろ怖い。
「やっ、やめろって」
「嫌なら抵抗すればいいじゃん?」
挑発的な笑みを浮かべながら、レオンは片手で上着を脱がす。抵抗が出来るならもうしているが、何故か腕にいくら力を込めても振りほどけない。
「流石に男の人でも身体強化魔法を突破できる程の力は無いでしょ」
俺が不思議そうな顔でもがいていると、レオンは何故俺が力で負けているかの理由を喋る。道理でどれほど力を込めてもレオンを離せない訳だ。身体強化魔法を覚えていない俺だととてもじゃないが太刀打ち出来ないという事か。
「って、冷静に分析してる場合じゃねぇぞ・・・・・・」
改めて自分の置かれている状況を認識して、この状況をどう打破するかを考える。
「やっぱり良い体だね。それにこの匂いも、嫌いじゃない」
こうしている間にも上着は完全に脱がされて、胸の部分を重点的に嗅がれる。
鼻を胸部から離したかと思うと、今度はズボンに手を掛け始めた。
「お、おい!それは洒落にならんぞ!」
JKぐらいの子に自分の下半身を意図的に見られるなんて辱めを受けたら、間違いなく(社会的に)死ねる。
しかし、レオンはそんな俺の心境などお構い無しにズボンに手を伸ばす。
その時、外からトットットッと階段を登る音が聞こえた。
「おい!レオン誰か来た!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
すると、レオンの動きがピタリと止まり、先程までの異様な気配が消えた。
「レオン、早くしないと人が来るぞ!」
「・・・・・・・・・・ハッ!あたしは何を・・・?」
俺が再度大きく声を出すと、目を白黒させて現状を確認していた。
「あれ?さっきセルロちゃんとイノちゃんに誘われて風呂を覗いてて・・・あれ?」
「いいからとりあえず俺の腕を離してくれ」
「え!?な、なんでトシユキさん裸なの!?」
俺の裸を見るなり、顔を紅潮させて手の平で顔を覆うレオン。何でって自分が脱がせたんだろ、と言っている暇もなく、刻一刻と足音は迫っていた。
「とりあえず、俺の服を返してくれ」
「え、えっとえっと・・・・・・」
「ザルフー!寝るぐらいだったら少し組み手を・・・しない・・・か・・・・・・」
大きい音を立てながら、入り口の戸を開けて入ってきたリーラン。しかし、目の前の光景に言葉を失い、絶句する。
「んん・・・一々声がでかいんだよ、リーラン」
来訪者の大きい声でザルフも目覚め、体を起こす。必然、正面にいる俺とレオンも目に入る。最初は何が起きているかわからないようだったザルフも、妹が馬乗りでしかもその下に居る男が半裸という状況に、リーランと同様に唖然とする。
「いや、違うんだ。これは誤解だ」
咄嗟に言い訳の言葉が出なく、説得力のかけらも無い発言をしてしまう。レオンも恥ずかしさのあまりか真っ赤になった顔を手で覆い隠している。
「お、お前らいつの間にそんな仲になったんだ・・・・・・?」
しばらくの沈黙の後、ザルフが恐る恐る聞く。
「まぁまぁザルフ、彼女達には彼女達なりの愛の表し方があるから、ね?」
全てを悟ったような表情で、リーランはこちらに目配せをする。いやだから違うんだって。誤解なんだって。
「そうだな。妹が兄離れするのは悲しいが、それもレオンが選択した事だ。オレがとやかく言える問題じゃないな」
「そうそう、ここは二人っきりにさせてあげるのが優しさってものだよ。それじゃ」
「「ごゆっくり~」」
ザルフとリーランが息ピッタリに言う。こいつら・・・・・・・誤解だとわかった上でからかってやがる・・・・・。
「もう・・・お嫁に行けない・・・・・・」
レオンが涙声で言う。それはどちらかというと俺のセリフなんだが。
そういえばさっきレオンが、『あれ?さっきセルロちゃんとイノちゃんに誘われて風呂を覗いてて・・・』と言っていたな。・・・・・・やはりセルロか。前回同様何かしらやらかすとは思っていたが、これは少し叱らないといけないな。
「レオン・・・少しどいてくれ」
「うぇ?あ、あぁ、うん。・・・ごめんね?」
俺の上から移動し終えると、少し小さい声でレオンは謝罪をする。
「レオンは悪くないさ、今回の元凶が見えてきたからな」
「?」
レオンが不思議そうに小首をかしげる。俺が言った意味を理解していないようだ。まぁ、知らない方が良い事もあるだろう。
あの悪ガキ二人、夕飯時になったら覚えてろよ・・・・・・。
セルロとイノ、その二人へどう折檻するか考えていたら、外からおばちゃんの声が聞こえた。
「嬢ちゃーん!リーランちゃーん!ここにいるんだろー?!」
その声に反応したリーランとレオンは螺旋階段を下りていき、おばちゃんと話をしていた。
しばらくすると、話を終えたレオンが戻ってきて、
「あたし達今からちょっと夕飯の準備の手伝いをしてくるね。夕飯が出来たら呼びに来るから」
と、言って村の方に向かっていった。
どうやらこの村は女性は飯の準備をする習慣があるらしい。恐らくセルロとイノも手伝いをしているのだろう。家事はやはり女性の方が向いているというのはどこも同じなようだ。
こうして、部屋には俺とザルフが残され、喋りづらい空気が漂っていた。
正直、あんな事の後だから俺としては非常に気まずい。一応リーランにノっていたザルフだが、本音のところはわからない。実は相当怒っているのかもしれない。何故かリーラン達が居なくなってからザルフの表情は険しいものへ変わっていた。
そして、その沈黙を打ち破ったのは、
「トシユキ、話がある」
という沈痛な面持ちから発せられたザルフの言葉だった。
最近少し文章が書けなくなるというスランプに陥りました。そのせいで幾らか更新が遅れてしまう可能性があります。ま元々そんな上手い文章ではありませんがなるべく早く脱出するように頑張ります。




