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24 お風呂イベント!

 トシユキという青年は思っていた以上に面白い人物だった。

 それが現白虎頭領、ザルフがトシユキに感じた印象だった。闇勇者という立場をひけらかすわけでもなく、自分にもレオンにも対等に接してくれた。その態度には接しやすさが感じられ、好印象を持てた。

 「頭領に顔合わせ、か・・・・・」

 以前は前白虎頭領、つまりザルフとレオンの父がそういった取り決めや行事を執り行っていたが、今はその父はいない。父は少し前に狩りに出てそれ以来消息不明になってしまった。その父の代理として自分が頭領という座に就いているが、突然消えてしまった父からは何も教えてもらっておらず、今のこの状況で何をすれば良いのか、全く見当もつかなかった。

 しかし、闇勇者のお供として付いてきたリーラン。昔の顔見知りの彼女に久しぶりに再会したのは嬉しかった。昔と比べて綺麗になったが、子供っぽいところは変わらないだなと酒を飲んだ時にふと思い出した。リーランの話だと、ランロンの奴にも久しぶりに会ったらしいがあいつも相変わらずだと聞いた。

 「久しぶりに、あの三人で話がしたいなぁ・・・・・・」

 久しく会っていない人物の顔を思い浮かべ、再び空いた器に酒を注ぎ、飲み干す。自分の膝を枕にして気持ち良さそうにして寝ているリーランの頬を軽く撫でる。静かに寝息を立てるリーランを見て、自分も気分が良くなる。

 「うへへへ、ざるふぅ・・・・・・」

 突然寝言を言い、再びむにゃむにゃとわかりやすく声をあげながら幸せそうに眠りにつくリーラン。まさかここで自分の名前が出るとは思っておらず、ドキッとしてしまう。

 「ハァ・・・お前に気持ちを伝えられたらどんなに楽か・・・・・・」

 暢気に寝続けるリーランの頭上で小さな声でつぶやく。

 「それじゃあ、伝えちゃえばいいじゃん。兄貴は何にビビってるの?」

 「うおっ!?」

 いつの間にか部屋に入ってきたレオンに後ろから声を掛けられ、思わず飛び跳ねてしまった。

 「あっ!リーランさん起きちゃうじゃん。せっかく膝かしてあげてるんなら最高の寝心地を味あわせてあげなよ」

 「いや、そんなことよりレオン・・・・・・お前、どこから聞いてた?」

 恐る恐る、レオンの方に向きなおし聞く。下手をすればマズいところまで聞かれているかもしれない。

 「いや?兄貴が、お前に気持ちを伝えられたらどんなに楽かって言ってた辺りだよ」

 「そこ一番聞かれたく無いところだったんだけどな・・・・・・」

 結局、レオンにはオレがリーランのことをどう思っているか聞かれてしまった。まぁ、後で釘をさしておけば恐らく誰かに言うなんていうことは無いだろう。

 「おい、レオン」

 「ん?なに?」

 「わかってると思うが、この事は本人にはもちろんトシユキの奴にも言うなよ」

 「あぁ、その心配ね。言わないよ、安心して。でも、トシユキさんのこと呼び捨てにするぐらい仲良くなったんだね」

 「見たところ同年代っぽいし、タメ口でも全然怒らないから接しやすいぐらいだ」

 「ふーん、そうなんだ。あ、これ。トシユキさんがリーランさんが風邪引かないようにって」

 そう言って手渡してきたのは薄い掛け布団だった。

 「やっぱり男は優しさだよねー。そう思わない?」

 「・・・・・まぁ、一理あるな」

 「次は先を越されないようにしてね。兄貴がフラれるとこなんて見たくないし」

 「あぁ、そうだな。それはわかったからレオンも早く寝ろよな」

 「あれ?ちょっと不機嫌?ま、いっか。風呂入ったらあたしも寝るよ」

 「そうしろ」

 掛け布団をリーランに掛け、風呂の準備をしてそそくさと風呂場へ向かうレオン。少し冷たく言ってしまったが痛いところを突かれた本人としちゃそれでも足りないくらいだ。それでも、ありがたいとは思っている。オレにとっては唯一の家族だ。オレも同じ立場なら似たようなことをあいつに言っていただろう。

 「伝えちゃえば、か。ヘタレなオレにはしばらくは無理だな」

 あいつは気を遣って席を外してくれたが、オレは別にこの状況をどうこうするつもりは無い。このままでも充分幸せだし、リスクを犯してまでこの幸せの上を目指そうとも思わない。このままでいいとオレは思ってさえいる。

 さて、膝枕も少し疲れてきたな。レオンが風呂から上がったら、俺も入ってすぐ寝よう。

 あれ?

 「そういえばトシユキってどこ行ったんだっけ?」




 いやー、実に良いお湯だ。最近混浴とかの大きい風呂にしか入ってなかったから絶対狭く感じると思ったんだが、案外そうでもなかった。檜みたいな木材で出来ているすごく感じの良い、気分の良くなる風呂だったな。

 「さて、そろそろ上がるか」

 結構な時間浸かってたし、これでしばらく体は冷えないだろう。風呂道具を纏めて、とりあえず脱衣所に行こう。

 タオルと着替えを取ってっと。あ、ここってトイレも付いてたんだな。ユニットバス的な感じで、兼用だったんだな。

 「・・・・・・・・・っろ~♪」

 ん?今誰かの声が聞こえた気がするが・・・・・まあ、いいか。それより早く着替えて上に行って今日は寝よう。

 「おっふろ~♪おっふろ~♪」

 そんなことを考えていたら、不意に風呂の扉が開いた。そこには変な歌を歌いながら、脱衣所の扉を開けた上機嫌な状態のレオンが居た。

 「よ。お前も入りに来たのか」

 「えっ?そうだけ・・・ど・・・・・・イヤアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 うおっ!人の顔見ていきなり悲鳴とはどういうことだ。失礼な奴だ。

 「どうしたんだ、レオン。いきなり大声出して」

 「イヤッ!アノッ!その、なんていうか・・・・・・・とりあえず何か履いて!」

 「え?」

 レオンのは顔を両手で覆い、指の隙間からある物を見ていた。そして、俺は気づいた。自分が風呂上りで全身真っ裸だということに。そしてレオンが指の隙間からどこを見ているのかを。何を見ているのかを。ナニを見ているということに。

 「うえっ!?あの、ちょ!ちょっと待って!」

 慌てて備え付けのタオルを腰に巻くが、どう考えても見られた。

 「あの、あたしっ!な、何も見てないからぁぁぁぁぁぁ!」

 顔を真っ赤にさせながら全力疾走でザルフの家に戻っていった。この事をザルフに話されたら下手をすれば殺されるかもしれない。ていうか、普通は脱衣所で着替えに遭遇って立場が逆だと思うんだけど。まぁ、そんなことしたら間違いなくザルフが激怒するだろうけどな。

 とりあえず、今の事をレオンに謝りに行こう。ここに来たってことはレオンも風呂に入る気だったろうからな。

 備え付けのタオルで一通り体を拭き、代えの着替えとして用意してもらった青い胴着を身に着ける。

 あいつらがいる家に向かうためにひとまず脱衣所から出てきたが、正直気が進まない。見られた恥ずかしさもあるが、それをザルフにチクられているかもしれないからだ。しかし、結局はあの場所に泊めてもらうしかないのだから、戻るしかないだろう。

 木製の螺旋階段を重い足取りで登りながら、この後に起きる災難を予想していた。レオンにおもいっきりビンタとかされるのだろうか。それとも妹に変なもの見せたなとザルフに殴られるのだろうか。思いつく予想は、ことごとく不幸なものばかりであり、階段を登る足を更に重くさせた。

 一段、また一段と徐々に家の扉が見えてきて、深くため息をつく。この扉を開けると十中八九良くない事が起きるだろう。どうにかそれらの事柄を避ける事は出来ないかと頭を捻ったが、元々の体の出来方が違うので、どうあがいても避ける事は出来ないので、俺はその内、考えるのをやめた。

 「とか、くだらないこと考えてる場合じゃないよな・・・・・・」

 扉の前でポツリとつぶやく。そして、どうにでもなれと心の中で叫び、目の前の扉を開いた。

 「って、あれ?」

 部屋の中には泥酔して潰れたリーラン、リーランを膝枕しながらそのままの体制で寝ているザルフ。そして、部屋の隅で顔を真っ赤にしながら寝ているレオンがいた。

 「何だ、皆寝てたのか」

 とりあえず、今の時点で俺に不幸が降り注ぐなんて事は起きなかったが、それでも一応釘を刺しておこう。

 「レオン、起きてるか?」

 部屋の隅で目を瞑りながら寝ているレオンに声をかけると、その体が大きくビクリと動いた。

 「あっ、えっと・・・ど、どうしたの?」

 あたふたとしながらこちらを振り向くレオン。未だに顔が赤いということはきっと今起きたという訳ではないだろう。

 「いや、さっきの話なんだがな」

 「え!?い、いや!あたしは何も見てないって!」

 「あ、あまり大きい声を出すな・・・・・・」

 「あ、ごめん。でも、本当だよ」

 「俺はさっきの話としか言ってないんだが、何か見たのか?」

 予定変更。さっきのことをザルフやリーランに言わないでくれと言うつもりだったが、この初々しい反応が面白いから少し様子を見よう。

 「え?いや、だってさっき脱衣所で会ったんだよ?」

 「それはわかるけど、俺何か見られちゃまずいもの見られたっけ?」

 「えっ、その・・・・・・!いや、何も見てないよ!そう、手で顔を隠してたからあたしは何も見てない!」

 「ふーん、でも手で隠してたって言っても指の隙間から何かを見てたよな?すごく下腹部の所に視線がきてたけど」

 「いや、それは、だから、その・・・・・・」

 段々と声が小さくなり、それに伴い顔も比例して更に赤くなっていくレオン。面白い。実に面白い。

 「どうしたんだ、ハッキリ言ってみろよ」

 「えっと、いや、でも・・・・・・・・・」

 いや、でも等の言葉を繰り返し言いながら頭をグルグルと回している。これ以上はさすがに可哀想か。

 「冗談だ。何を見てたかなんて、もう聞かないよ」

 「ーーーーっ!」

 そう言うと、レオンが声にならない悲鳴を上げてバタンと音を立てて後ろに倒れこむ。

 「えっ?」

 一瞬何が起きたがわからなかったが、どうやら気絶したようだ。というか、オーバーヒートに近いものだが。恐らく羞恥心やなにやらが一片にきたからレオンの頭が追いつかなかったのだろう。少し、やりすぎたかもしれない。

 この場にいる人が全員寝てしまい(内一人気絶)、その場に静寂が訪れた。

 「このまま放置するわけにもいかないしなぁ・・・・・・」

 その場で倒れこんだレオンに掛け布団を掛け、床に寝させる。

 よし、寝よう。このまま別に何かが起こるわけじゃないし、することがあるわけじゃない。ならば、寝よう。そうしよう。

 部屋の真ん中に吊られている照明に手を伸ばし、その中にある火を吐息で吹き消す。明かりを失った空間に暗闇ができる。

 そういえば、俺の分の布団を用意してもらっていなかったな。・・・・・・まぁ、いいか。床で寝ればいいだろう。

 床に寝転び、腕枕を作る。明日レオンになんて言われるか、そんな事を考えながら俺は眠りに付いた。

この話を書き終えたら1~23話まで一度見直しして、リメイクしてみようと思っています。全体のリメイクと次話を同時進行でやるので少し次話を書くのが遅れるかもしれません。なるべく早めに終わらせますので、しばらくお待ちください。

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