15 ワーム再び!
「よーし、今日はここで野営をするか。」
あたりがだいぶ薄暗くなり、夕日が沈みかけてきた頃、リーランが声を上げた。
「そうだな。辺りもだいぶ暗くなってきた、ちょうど良い頃合いだろう」
「・・・眠くなってきた・・・」
前を歩いていた他の二人も野営に概ね同意のようだ。てか、何でもう眠いのこの子・・・
「野営は前回と同じ手順で良いのか?」
「あぁ、一人ぐらい増えたって別にかまわんだろう」
「前回はリーランに見張りをしてもらったからな。今回は俺が見張りをしよう」
「そう?んじゃ、頼んだ。」
「ついでにそこのロリコンが手を出さないように見張っていてくれ」
「了解」
なにやら背後から随分な視線感じるような気がするが恐らく気のせいだろう。
「誰がロリコンだ・・・」
うん、気のせいだ、ロリコンのような声が聞こえた気がしたけど恐らく幻聴だろう。
今は一刻も早く、野営の拠点としてテントを組みたてないといけない。俺とリーランが準備に取り掛かろうとすると、近くの木に寄りかかり休んでいるセルロがいた。
「・・・めんどくさい・・・」
「お前なぁ・・・手伝わないとテントの中に入れないぞ?」
前回とまったく同じ状況とセリフでセルロを手伝わせようとすると、俺とセルロの間にランロンが恐ろしい剣幕で間に入ってきた。
「いいじゃないか!きっとセルロちゃんは疲れてるんだ!なぁ、セルロちゃん?」
「・・・・・・・そう・・・」
おい、いつもよりタメが長かったぞ。絶対こいつ疲れてるとかじゃなくて面倒くさいだけだろ。そう思ったが、ランロンも恐らく引く気は無いだろう。
「ほら、だからワタシが手伝うからセルロちゃんの入室を認めてくれ!」
「・・・・・お前が良いなら良いんじゃない?」
「感謝する!」
はぁ・・・バカの相手は疲れるな。さて、テント組み立てるか・・・
夕暮れから約一時間ほど過ぎた頃に、野営用キャンプは完成した。
「意外と早く出来上がったな」
「ワタシががんばったからな。これでセルロちゃんと・・・フフッ」
「リーラン、頼んだぞ・・・!」
「任せろ、確実に一撃は入れる」
リーランと約束を交わし、ランロンに造ってもらった俺用の『青龍刀』を取り出して見張りの準備を進める。前回のように大型のモンスターが出れば他の三人を起こせばいいし、俺に扱えるようなモンスターなら俺が片付けよう。
後はこのまま夜が明けるのを待つだけだからそんな神経を集中させる必要はないだろう。
「・・・・えーあの子が?・・・・・」
「・・・そう・・・」
「・・・信じられんな・・・」
テントに向かう三人の方向からなにやらキャッキャしている声が遠くから聞こえるが恐らくガールズトークでもしているんだろう。異世界にそんな概念があるかは知らんが。
声が完全に聞こえなくなったな、恐らくテントに着いたのだろう。三人とも女性という事で一応の気を使えと言われテントより少し離れて見張りをさせられた。だが、様子が気になるというのもあってどうしてもそわそわしてしまう。
よし、少し様子を見てくるか、どうせならセルロの寝顔でも見て癒されよう。
三人の居るテントに向かっていると、どこからか音がした。何かを叩くような音だ。まさか、敵・・・?いや、あたりを見渡してもそんな姿は見られない。気のせいか?心配だし、とりあえずテントを見てこよう。
・・・どうもおかしい。テントに近づくにつれ音が大きくなっている。しかも、その音はテントの中から聞こえている気がする。中で何が起こっているのか気になった俺は、テントの中をこっそり覗く事にした。
「セルロちゃん!」
「いい加減離れろ!」
そのテントの中には左からセルロ、リーラン、ランロンの順で並んでいた。そして謎の怪音の正体はセルロに近づこうとするランロンをリーランがひたすらビンタしていた音だった。ランロンに襲われそうになっているセルロはというとリーランの隣ですぅすぅと寝息を立てていた。
そのある意味地獄ともいえる光景を目にした俺は、足音を立てないよう、何事も無かったかのようにそっとその場を後にした。
離れたところでまた見張りの続きをしてしばらくすると、ふと、どこかで聞いたような這いずるような音が聞こえてきた。音はどこから聞こえてくるかもわからず、ひたすらに森の中でこだまするかのように続いていた。そして、音が止んだその瞬間に巨大なワームが俺の背後に突如現れた。
「うおおおおおおおおお!出たああああ!」
そう叫びながら三人の居るテントに向かって全力で足を動かす。テントからは相変わらず奇怪な音が聞こえていたが、今は緊急事態なので迷わずテントの中に俺はもぐりこんだ。
「で、でで、出た!前のあいつが出た!」
俺がそう言うとリーランの振るわれていた手が止まった。
「あいつってまさかワームか?」
「わーむ?なんだそれは?」
ランロンはなぜか頬が赤くなっているが本人が気にしていないようなので、スルーすることにした。
「しかも、前回よりでかいっぽいんだ。何とか出来るか?」
「まぁ、やれない事はないけど」
「ワームってなんだ?」
「やれない事はないってことは何とか出来るかもしれないんだな!何とか倒してくれ!」
「ランロン、たしかお前魔法使えたよな?」
「あ、あぁ、使えない事はないが、それよりワームってなに?」
「私は使えないから代わりに倒してくれないか?」
「え、いや、だから」
「本当かランロン!ぜひ頼む!」
「あの、話聞いてくれ」
「倒してからでいいだろそんな事!いいからワーム狩りだぁ!」
あの美味を早く味わいたいという気持ちに駆られてランロンをスルーしていたが俺もワームがなんなのかよくわからないから別にいいよね。
「わ、ワームって何?」
「知らん、でも美味いよ」
「じゃ行くか」
こいつ、美味いの一言でこんなに態度変えやがった。ワームは魔法に弱いらしいからな、魔法が使えるやつがいるだけでだいぶ違うだろう。
さっきまで俺が見張りをしていた場所に着くとワームがその大きな体をとぐろ状に巻いて眠っていた。
「こ、これがワームなのか?」
「あぁ、こいつがワームだ。何でも魔法に弱いらしいから、魔法を食らわせてやれば倒せるだろう」
「そ、そうか。で、では早速いくか」
ワームの大きさに意外そうな顔をしたランロン。しかし、戦う覚悟を決めると腰に装備している青龍刀に手を伸ばして引き抜くと、なにやら呪文のようなものを唱え始めた。
しばらくすると刀が青白く発光し始め、次第に光が強くなっていく。
「ふぅ、これでいけるかな」
「何をしたんだ?」
「憑依魔法といってな、人や物に精霊などの名前を唱えてその力を憑依させる魔法だ」
そんな魔法もあるのか、まったく異世界って便利だな。
「それで倒せるのか?」
「それは知らん。ワタシはこいつを初めて見たからな、どの程度で倒せるかまではわからん。とりあえず、やるだけやってみるがな」
弱気になりながらも発光した刀を持って、徐々にワームとの距離を縮めていく。刀の届く間合いに入った瞬間、勢い良く横薙ぎに刀を振るった。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオン!」
睡眠をとっていたワームが突然の激痛に大声を上げる。すぐに自分が何をされたか理解したようでその小さい目でランロンを睨みつけていた。巻いていた体を伸ばし、戦闘態勢の姿勢を見せて小さく唸り声を上げて威嚇している。
明らかな敵意を向けられたランロンは、そんなワームに怯みもせず刀を構えて相手の出方をうかがっている。
「グゥルルルルルルルルルルルゥ・・・・」
隙の無いランロンにひたすら唸り声を上げ虚勢のようにも見える威嚇をするワーム。魔法の力のこもった一撃により多少弱ってるようにも見られる。
「どうした、来ないのか?」
言葉が通じないとわかっているが構えを少し緩め、挑発の言葉を口にする。その問いかけに返事は返ってこないが、油断をしたものと思い一気に突進し攻撃を仕掛ける。
「ンギャオオオオオオオオオオン!」
「おっと、危ない」
ワームの全力の突進攻撃を何でもないかのようにひらりとかわし、すれ違い様に腹にあたる部分に刀で更に攻撃を加える。刀が通った部分に一つの線ができ、そこから緑色の血液が一瞬の後噴出した。
「ギャオオオオオオオ!」
また一つできた傷の痛みにより再び悲痛な雄叫びを上げる。それでもこれ以上やられてなるものかと、より一層睨みをきかせ再びランロンに襲い掛かる。しかし、その巨体を引きづりながらの攻撃がランロンに当たるはずも無く、一つまた一つと刀による傷を増やしていく。
何回かもわからない攻撃がワームの体にまた一つ傷を増やし、ようやくワームの体が地に沈んだ。
「ふぅ、意外とタフだったな」
「確かに前回に比べて時間がかかった気もするな。以前はセルロが魔法を思いっきりぶつけてすぐ終わったからな」
以前はセルロが魔法魔法の連続で一気に倒したからな。火の矢が出るわ、水のも出るわ、風も出るわ、雷・土なんてのも出してたな。
「ほぅ、やはりセルロちゃんはすごいんだな。以前の氷の魔法もすごかったしな」
「あぁ、あの双子を凍り漬けにしたやつか・・・」
今思い出してもすごい光景だったな・・・闘いから戻ってみれば巨大な氷があってその中に人が入ってたんだからな。確かに魔法に長けてるってレベルじゃないかもしれん。
「で、このワームどうするんだ?」
「うーん、結構遅い時間帯だしな。セルロをわざわざ起こすのもなんだし、明日の朝飯にでもするか」
「そうか、食べてみたい気もしたんだがな」
「明日のお楽しみだ、この見た目で案外美味いんだよ」
そう言うとランロンは少し嬉しそうな表情を浮かべながら、テントに戻っていった。
さて、俺も見張りを続けるか。
もしかすると一週間に一回の更新になるかもしれません。なるべく、多く書こうと思います。




