14 中央への旅路!
昨日の金髪の悲鳴のせいでほとんど眠れなかった。拷問くらい耐える精神力くらい持てよ、勇者の一味だろ。まったく・・・
昨日の名誉挽回のおかげで物置部屋で寝る事を免れた俺は上等そうな和室で夜を過ごした。一人にはちょうど良い広さで、布団も柔らかく寝心地もとても良かった。目を覚ました俺は朝日を直接浴びるため、純和風な襖を勢い良く開けると廊下に見覚えのある二人の人影があった。
「おはよう、リーラン、セルロ。」
「あ、トシユキ様おはよ。」
「・・・おはよう・・・」
相変わらずのタメ口と静かな口調がそれぞれ挨拶を返してきた。リーランは朝強そうだけど、セルロって絶対朝弱いよな。アンデッド系ってやっぱり朝日とかが苦手なのだろうか。眠たげな目をシパシパさせている。
「トシユキ様、ランロン見なかった?」
「いや、俺も今起きたところでな。探しているのか?」
「伝えたい事があるってセルロが昨日言い出してね。しかも深夜に。眠いから明日にしろって言ったんだけど、セルロが朝弱いの忘れてて。それで私も手伝う事にしたんだ。」
「そうだったのか。そういうことなら俺も手伝うよ。」
結局三人でランロンを探すことにした。屋敷中を探していると途中でイーランに出会った。ランロンを探していることを話すと、「恐らく鍛冶場だろう」と教えてくれた。教えてもらった屋敷の鍛冶場区域に行くと、ランロンが作業着のようなものを着て汗だくになりながら刀を打っていた。
「ランロン、何をしてるんだ?」
「ん?あぁお前か。見てわかんないのか?刀を打ってるんだ。」
「へぇ、お前刀鍛冶でもあるのか。そうだ、セルロが言いたい事あるって言ってたぞ。」
「なに!?先に言え!どこだ!セルロちゃんどこ!?」
「落ち着け、そこに居るだろ。」
セルロがいた場所を指差すと、そこから少し距離をとったところにセルロがいた。
「いた!セルロちゃ~ん!」
名前を呼ばれて体をビクリとさせるセルロ。
「で?お姉さんに言いたい事があるんだって?告白とかなら聞くまでもないし、お願いなら何でも聞いちゃうよ?」
「・・・あなたの上司がこの人に決まりました、以上・・・」
俺に視線を向けながら一人拍手をするセルロ。一方ランロンはというと
「・・・・・は?」
大好きなセルロに珍しく笑顔ではなく真顔をぶつけていた。
「・・・以上です、それでは・・・」
「ま、まって、どこ行くのセルロちゃん。まだワタシ内容理解してないんだけど。」
「・・・さっき言った、二回目は無い・・・」
「こ、こいつがワタシの上司!?冗談でしょ?」
「おい、冗談ってどういう意味だそりゃ。」
「えー!セルロちゃんと一緒に行けるって言うから承諾したのに~!詐欺だ!訴訟だ!」
「・・・申請は却下します・・・」
「派遣っていうくらいだからそりゃ上司は出来るでしょ。」
至極当然のことを言うリーラン。
「でも、よりによってこいつぅ?納得いかない!」
「お前は俺に恨みでもあるのか。」
「あるか無いで言うとある。胸揉まれた、ひどく侮辱された、だからオマエキライ。」
「うっ・・・そ、それとこれとは別だろ。」
「・・・もう決まったこと。それと、この人のことは様付けで呼んでね・・・」
「えぇ~!嫌だよ!何でこんな奴に様なんて付けなきゃいけないんだ!」
「・・・だめ?・・・」
そう言ってランロンの傍に近寄り上目遣いでお願いするセルロ。
「いや、全然!セルロちゃんのお願いなら喜んで聞くよ!だからしばらくそのままでいて!」
見事に釣られてんな、こいつ。もうセルロ距離とろうとしてるし。
「それより、またお前剣を作ってたのか。ん?しかし私に作ってくれた剣とは形が違うんだな。」
「あぁ、青龍地域特有の剣だ。剣というよりは刀と言って欲しいな。その名も『青龍刀』だ。」
「ほう・・・良い刀だな、まるで斬ることに特化させたような形でとても美しい。」
ランロンが言っていた『青龍刀』とはいわゆる日本刀である。勇者撃退に大いに貢献してくれた刀で、ランロンも愛用しているらしかった。
「で、何でこの時間から作っていたんだ?私はもう持ってるぞ。お前に作ってもらったからな。」
「あ、あぁ、えっと、なんていうか、その、一応トシユキ・・・様に作ったんだけど、どうかな?」
「え、俺?」
「あぁ、ワタシは仲間・・・というより認めた相手に剣を贈ることにしているんだ、勇者を撃退できたとなれば相当だろう。それで作ってみたんだが、どうだ?」
「そういうことだったのか、ならありがたく受け取ろうかな。」
「そうしてくれ、今出来たばかりの新品だ。切れ味なんかも普通の剣の比べ物にならない。」
自信たっぷりといった風に言い切るランロン。作った本人が言うんだ、間違いないだろう。
「聞き忘れていたが、今日中にここを出発するんだよな?準備するものなどあるのか?」
「特には無いんじゃないか?とりあえずの食料と護身用の武器だけ持ってきておけ。」
「そうか、わかった。」
リーランとランロンの会話ってなんか軍人同士みたいな会話だよな。若干の堅苦しさがある感じだ。
「時間はいつごろに出るんだ?」
「もう出発したいぐらいだ。私たちも急いで準備に取り掛かるが、多少のロスは構わん。」
「随分と早いんだな、わかった。今すぐ準備してくる。」
そう言うと出発の支度をするのか、急ぐように去っていった。
「俺らも準備するか。」
「だな。」
「・・・眠い・・・」
セルロまだ眠いのかよ・・・
「とりあえず、最低限のものは用意してきた。」
荷造りを終えたランロンが俺たちの元へ駆けつけた。荷物はそう多くはないが、護身用なのか腰に日本刀もとい青龍刀を装備していた。
「よし、それじゃ出発するか。セルロ大丈夫か?」
「・・・もう目が覚めた・・・」
「そうか、じゃ大丈夫だな。」
リーランがセルロの状態を確認しているが、こうしてみると仲が良い姉妹に見えるな。世話焼きお姉ちゃんと手のかかる妹的な。
「はぁ~セルロちゃんやっぱりかわいいなぁ~」
「なんかその言い方変態っぽいからやめろ。」
こいつはなんていうか、キャラ変わったな。もうちょい凛々しいイメージだったんけどな。
「まぁランロンはいつもこんな感じだし、今更なような気もするけどね。」
「リーランはこいつとどのくらいの付き合いなんだ?」
「えっと、どのくらいだろ?最初に会ったのは10年前かな?というか、歩きながら話そうよ。」
そういうと歩きだしたリーラン。
「へぇ、けっこう長いんだな。」
「最初の出会いは斬り合いから始まったんだけどね。」
「懐かしいな、二人ともほぼ互角の実力でな。本気でやるとどちらが死んでもおかしくないくらいだったから手を抜いていたがな。」
なんでそんな殺伐とした事を淡々と言えるのこいつら。感覚マヒしてるのかな。
「ランロンのあの時の居合いはすごかったなぁ、城に戻ったら久しぶりに見せてよ。」
「あぁいいぞ。ついでに組み手と試合もしないか?」
「いいね、最近腕がなまってきた気がするんだよ。相手してくれると助かるね。」
戦闘バカたちの会話はほぼ聞き流しながら進むと、来た時も体験したあの絶壁が目の前にあった。
「これどうやって降りるんだよ・・・」
「?普通に来た時の逆をすればいいんだよ。」
「手と足を使って壁を伝い降りるだけだぞ、簡単じゃないか。」
戦闘バカのお前らの意見は基本的に参考にならないとつい先程悟ったから聞かなかった事にするぞ。
「行かないなら私たちが先に降りようか?」
「そうしよう、リーラン先に行ってくれ。」
「わかった。」
即答で返事をしたリーランが崖に手を掛けてスイスイと下りていく。その後にランロンが続く。
「早く来ないと置いていくぞ。」
「あ、あぁ、今行くよ。」
簡単に言うがこの高さをお前らみたくスイスイ降りるなんて出来ないからな。あ、そういえばセルロは
「・・・風魔法だよ・・・」
「ですよねー」
俺の視線に気づいたセルロが答える。魔法って本当便利だな。
「・・・早く行かないと本当に置いていかれるよ・・・?」
「わ、わかってるよ・・・」
「・・・恐いの・・・?」
「そんなわけねぇし!マジこんなの余裕だし!」
「・・・じゃあ下で待ってるね・・・」
そう言うと風に乗ってゆっくりと崖を降下していくセルロ。やばい、勢いで余裕とか言ったけど本当に恐いぞ。
「でも、早く行かないと置いていかれるのも確かだ。覚悟を決めて行くしかねぇ。」
勇気を振り絞り、崖を慎重に俺は降りていった。
「遅いぞ、トシユキ様。」
「・・・余裕じゃなかったの・・・?」
「所詮口だけか、余計に時間がかってしまったな。貴様のせいで。」
崖との恐怖をやっと乗り越えて聞いた言葉は慰めの一つもなかった。
「お、お前ら俺ががんばってきたのにもうちょい言葉はないのか・・・」
「よし、出発するか。」
「・・・日が暮れない内に進みたい・・・」
「野営も覚悟しないといけないな。」
見事なスルーっぷりだ、血も涙も無い奴らめ。
「置いてくぞー。」
「・・・早くして・・・」
「置いて行っていいんじゃないか?ついて来ないみたいだしな。」
「おい!置いていくなよ!」
あいつら俺を置いていこうとしやがった。崖を降りることに体力的にも精神的にも疲れているのに、この扱い。もう少し気遣ってくれてもバチは当たらないとおもうぞ。
野営かぁ・・・またあの変なモンスターが出なければいいけど。いや、出たほうがいいのか。あのモンスター、ワームだったか。普通においしかったからな。でも戦いたくは無いなぁ・・・。
次回の更新予定は6月13日(金)です。




