知覚
轟音が森を揺らす。
衝撃が周囲に伝わるとともに土煙が上がる。
拳で地面が抉れ、その中心に魔族が倒れていた。
何体倒したのだろうか。
覚えていない。
呼吸をするが息を吸うのが重く感じる。
腕に裂傷を抱え、わずかに焼け跡もある。
だが動ける範囲内の傷だ、問題ない。
そう言い聞かせた。
視線を上げる。
気配は途絶えない。
「...まだいるのか。」
囲むように、距離を取っている。
さっきまでとは違う。
魔族の位置も数も正確に見えている。
――違う。魔族ではない何かが見えている、
目を瞑るとはっきりと分かる。
透明な靄のようなもの。
次の瞬間、背後の靄が波打つ。
振り返ると魔族が魔法を放とうとしていた。
雷が放たれるが掠りもせず避けれた。
「これが魔力と言うやつか...。」
直後、後ろに靄が迫っていた。
頭部を狙った拳を躱し、腕を掴む。
そのまま肘打ちを直撃させる。
魔族の身体は崩れ、魔力が弱まっていた。
俺は逃げる魔族の退路を断ち、頭を蹴り飛ばす。
代償による魔法の強化はさらに魔力の揺れが激しかった。
だが、放つ前に潰すだけでよかった。
気づけば魔族の数もかなり減っていた。
次の魔族に手をかけた瞬間、突風が俺を突き飛ばす。
かなりの距離を吹きとばされ、理解する。
魔力を感じ取れる距離があるのだ。
それより――
俺は木葉の如く軽々と空へ飛ばされている。
着地が面倒だ。
下手に落ちれば流石に損傷するだろう。
――衝撃を相殺するしかない。
地面と衝突する直前、左腕で地面を叩く。
落下の勢いは殺せたが転げる。
左腕が砕けた以外は軽い擦り傷程度に収まる。
魔族達は探知範囲外だ。
もう一度感覚を研ぎ澄ます。
痛みが強く感じられる。
そして、前方から4体向かってくるのが分かった。
身体が確実に削れている。
息が重い。
全ての気配が激しく波打つ。
正面からの攻撃を予想し横に避ける。
だが攻撃が来ない。
もう一度魔力を探る。
上空、無数。
雷と炎が幾度も降り注ぐ。
接近を断念し、魔族達と反対の方向へ全力で逃げる。
森を抜ける。
攻撃が弱まり始めた頃、気づけば俺が始めて訪れた村の付近まで戻っていた。
魔族が目の前に現れる。
拳を振りかぶると腕を掴まれ動けなくなってしまった。
「魔法以外も強化できるのか...代償は」
後ろには魔法を構える魔族が3体。
俺は頭突きで拘束を逃れ氷、炎、雷、全て避ける。
固まった魔族達を潰すのには苦労しなかった。
終わる。
しばらく、立っていた。
気配が完全に無くなる。
周囲に静寂が訪れる。
もう魔力は立ち上っていない。
ようやく、足を止める。
息を吐く。
深く。
身体が、重い。
――さっきの村に戻ろう。




