萎縮した人類
魔族との戦闘から数日経過し、
火傷や骨折もほとんど癒えた頃、
集落が見えた。
小さくひっそりと建っているが人の気配がある。
生活している。
それだけで安心できた。
村に近づくとこちらに視線が集まる。
警戒されているのだ。
当然だろう。
しばらく見られていたが、やがて一人の男が前に出た。
「...魔族...じゃないよな?」
「あぁ、少し聞きたいことがあるんだ。」
その言葉を聞き、男はしばらく考え、やがて手招きした。
「中で話そう」
案内される。
前の村と同じような簡素な建物。
中にはお婆さんがいた。
「私の母だ。気にしないでいい。」
「それで何を知りたいんだ?」
「魔王は何をしたんだ?
――それからこの世界に武器はあるか?」
空気が、わずかに止まる。
周囲の視線が変わる。
男はゆっくりと息を吐いた。
「....魔王についてだが、詳しいことは知らん」
少し間を置く。
「生まれた時からこの村の中で育ってきた。外のことは一切知らない。」
お婆さんが口を開く。
「私が聞いた話なんだけどねぇ...今から三百年くらい前かしら...」
お婆さんの言葉に聞き入る。
「大きな街から消えたそうなの...」
淡々と続く。
「発展していた場所ほど、優先的に潰されて文明が停滞したのよ...」
頭の中にあの瓦礫となった都市がよぎる。
「逆に、こういう小さい村は残ったの...」
男は肩をすくめる。
「価値がなかったのか、それとも.....」
言葉は続かなかった。
「それ以降、魔王は姿を見せていないそうよ...」
「けど、平和になったわけじゃない。」
男が横から割り込んだ。
「巡回だ。」
「外には魔族がうろついているんだ。」
「見つかれば殺されるだろう。」
淡々と語りながらも言葉には確かな恐怖が混じっていた。
「だから、外には出ないで全部ここで作っているんだ。」
周囲を見渡してもあるのは小さな畑や簡素な設備だけである。
「……そうか」
それだけで十分だった。
「状況は分かった。」
外に出る。
目を閉じ、耳を澄まして気配を探る。
空気は、同じだった。
だが確かに魔族の気配がある。
少し離れた所だった。
あれが原因だ。
他にも複数体の気配がある。
「...俺が魔族を倒す。」
目の前の命を失わせない。
そのために俺がやる。
歩き出す。
手始めに村の周囲の魔族を一掃しよう。




