捨て身の火力
村を出て、しばらく経っただろう。
動けるようにもののまだ痛みはひいてない。
あの拳も魔法も対処するにはまだ自分に足りないものがある。
考えながら歩く。
そのときだった。
魔族の気配がした。
こちらを見ている。
「へえ……生きてるんだ。」
笑っている。
「魔王様が君のとこへ向かったって聞いたけどさ、ーー」
言葉を遮るように踏み出し、一撃入れれる距離に迫る。
こいつは魔王よりも明らかに格下だ。
一撃で終わる。
そう思っていた——
目の前に手を置かれ、詠唱もなく額に熱が伝わる。
次の瞬間、熱が全身を貫き、痛みにすら感じた。
周囲の木は炭になった後である。
拳が直撃する。
「話を遮るなよ。」
重みのない打撃が身体を吹き飛ばすには充分だった。
吹き飛ばされている中、奴の腕に刻まれた魔法陣が見えた。
「びっくりした?代償の力だよ。」
笑う。
「寿命とか五感とか生きるのに大事って思うものを捨てると強化できるんだよ。」
喋りながらゆっくり歩み寄ってくる。
身体がまた軋む。だがまだ動けそうだ。
これは瞬発力勝負だ。
奴の魔法が発動する前に一撃入れる。それだけでいい。
「何か考えてるみたいだけど、意味ないよ。」
地面が凍り始める。
足に到達する前に地を離れ、奴の元まで一直線に跳ぶ。
「...ダメだよ直線で動いちゃ。」
先程よりも強い火力の炎が吹き出す。
「....はぁ...はぁ....消し炭になったかな?」
疲れと優越感が混ざったような笑顔を見せる。
残念だが当たっていない。
俺は炎に当たる直前に地面を蹴って跳び上がっていた。
思ったより高く上がってしまったが、攻撃はない。
それどころか気づいていない。
「撃たないのか?」
思わず聞いてしまったが、俺の声は届いていないようだった。
一撃を叩き込む。
肩に直撃した瞬間、魔族の身体は崩れゆく。
自身の身体の崩壊に困惑していた。
「...な...んで...」
刻まれた魔法陣が消えかかっている。
「なんだ、もう使えなくなったのか、代償ってやつ。」
あの魔王はおそらく代償も一切使っていない。
使えるようになったらと思うと恐ろしい。
歩き出す。
次の集落を目指して先を急いだ。




