虚ろな自分
村に戻ったとき、俺に視線が集まった。
誰も動かずただこちらを見ている。
...無理もない。
数日、姿を見せず戻ってきたと思えば血に濡れている。
服も、身体も傷だらけだ。
「……おい、それ...大丈夫なのか...?」
誰かが、声を上げる。
「早く来い!」
次の瞬間、周囲の村人が駆け寄ってきた。
支えられ、そのまま、建物の中へ入り、座らされる。
衣服も水も手当てもしてくれた。
決して手際がいいわけではないが 確かに丁寧だった。
少し身体を動かすと傷の痛みを感じる。
だが、動けなくはない。
「....あんた」
男が、口を開く。
最初に訪れた時に話をした男だ。
「一体、何者なんだ」
問い。
「......ル」
自分の名前を言おうと口が動く。
何かが、引っかかる。
「....ル.....」
少し考え込むが続かない。
頭の中で消える。
「分からない」
それが答えだった。
沈黙が落ちる。
だが、誰もそれ以上は聞かなかった。
それから、しばらくこの村にいた。
長くも短くもない時間だった。
食事を取り、傷を癒し、時々、手伝いをした。
何の変哲もない生活。
ある日、分かっているだけ話した。自分のことを
ここで目を覚ましたこと、
過去の記憶が曖昧なこと、
魔王を倒さなければならないと思っていること。
村人たちは、黙って聞いていた。
理解しているのかは、分からない。
「……長く生きる種族なら....お前のことを知ってるかもしれん。」
長命か....。
思い浮かぶものは、一つだった。
「......エルフか、聞いたことはある」
別の誰かが言う。
「だが、本当にいるかは知らん」
いるかどうかは曖昧だ。
...だが 手がかりにはなる。
しばらく考える。
やることは決まっている。
魔王を倒す。
そのために情報を多く集めるのもいいかもしれない。
次の村を目指して立ち上がり外に出る。
空気は、変わらない。
....探してみるのも悪くない。




