記憶の欠片を探して
気づけば気配がする度、身体が動くようになっていた。
動く前に分かる。
魔力の流れも、移動も、魔法発動の起こりも。
見えている。
その全てが。
大きく踏み込み魔法が放たれる前に間に入る。
拳が肉と骨に沈む。
魔族は静かに崩れゆく。
「...次。」
背後に迫っている。
振り向き様に頭部に拳を叩き込む。
また崩れる。
もう一体いた。
だが戦わず逃げようとする。
茂みに入るが遅い。
石を拾い魔力を感じる場所へ向かって投げる。
石は魔族の心臓付近を貫いて砕けた。
魔族が倒れ、辺りが静かになる。
もう息は乱れていない、傷もない。
前とは違う。
戦いの感覚を覚えてきている。
それが大きい。
周囲を探るが気配はもう無かった。
これで終わりだ。
そのまま歩く、
しばらくして、村が見えた。
小さい、だが整っている。
人の気配もある。
近づいた途端、視線が集まる。
警戒している。
当然と言えば当然だろう。
魔族が巡回している中下手に出歩く人間はまずいない。
「....旅の者か」
男が前に出る。
頷く。
「少し、聞きたいことがある」
男は少し考え、やがて口を開いた。
「申し訳ないが内容による。近頃魔族が活発になっているからな。
――災い事は勘弁だ。」
「長命な種族について何か知っているか?」
空気が、わずかに変わる。
「...エルフか」
「何か知っているのか」
男は、すぐには答えなかった。
「この村にはいない。だが――」
視線で、方向を示す。
「隣の集落、雪山を越えた先にある。」
「噂では……一人、いるらしい。」
一人、それが知れただけで十分だった。
「本当かは分からん」
男は続ける。
「それと雪山は危険だ。」
「理由は?」
「今の時期だとわりと降っている。」
「それに――命知らずの行商人ですら行方不明になる。」
それだけだった。
村の外へ出て雪山を見る
巡回の魔族ももういない。
付近の魔族を全て潰したことを村の人間に告げ、村を去る。
問題はない。
足を向ける。
雪山の先へ。
記憶を埋めるピースになるかもしれない。
曖昧なままだが、近づいている気がした。
――自分自身に。




