白に積もるは灰
村を出て雪山へ到達する。
視界のほとんどは白で埋めつくされ、風の音が耳を塞ぐ。
吹雪のうえ、足元も不安定だ。
一歩ごとに沈み足は冷たくなってゆく。
だが、止まる理由にはならない。
足を重々しく持ち上げる。
突然、気配が感じられた。
遠くに複数体、いや――
強い魔族の気配が二つと、群がっている微弱な気配。
数え切れない程いる。
「..........、..........、......、....」
何かが聞こえたような気がした。
次の瞬間――
「――重力魔法」
「...なるほど」
耳を澄ました時、風に紛れて聞こえた。
身体がこれまでにない程沈む。
雪にさらに押し込まれ 、足が抜けない。
圧力が前よりも広く、強く、影響を与える。
詠唱と代償による重ね掛けの強化であると理解する。
別の方向から強い魔力、来る...。
そう確信し発動の瞬間、身体をずらす。
雷が雪を抉り、雪が飛沫をあげる。
発動の予兆さえ分かってしまえば当たる程の攻撃ではない。
視界は悪い。
だが、魔力だけは見える。
やがて重力と雷は絶え間なく降りかかる。
とうとう雷を避け切れなくなってきた。
このままの状態が続けば危険だろう。
魔力の波打ち方からして代償を払っているのは間違いない。
何を代償にして魔法を連発しているのか....
俺の周囲には動かない魔物達が大量にいる。
「......供給源、か。」
一歩踏み込むだけでも重い。
だが、進め無くはない。
まずは魔物からだ。
目に映るのは吹雪だけなので魔力と手探りで雪を蹴り飛ばす。
...当たった感触がある。
気配が消える。
次、また次と蹴り飛ばす。
雷が落ちる、でも躱せる。
優先は供給源を全滅させることだ。
魔物を潰す。
一体、また一体と。
数が減るにつれ圧が、わずかに弱まる。
気づいた時には魔物は最後の一体だけになっていた。
踏み潰した瞬間――
身体は重圧から解放される。
吹雪く視界のその先に動く影が見えた。
遅い。
強く雪を踏み込み、距離を詰める。
「――雷魔法」
放たれる前に拳を当てる。
雪のように崩れ、灰となる。
残り一つ。
重力の主。
魔力は乱れ、魔法はもう維持できていない。
逃げようとする。
「...無駄だ。」
一歩で詰め――
終わる。
風だけが寂しく残る。
白い世界には何も残らない。
しばらく立って、息を整える。
傷も、浅い。
雪の中、足を進める。
こうして吹雪を抜けた先へ着く。




