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封印されて五百年、世界は俺に牙を剥く  作者: NAriS


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威厳の崩壊

デグニテがこちらを睨む。


 崩れた城壁の隙間から風が吹き込む。



 距離を詰めなければこちらが不利になる...。


 魔法による遠距離攻撃、

あれを好きに撃たせ続ければ、

先に削り殺されるのは俺だろう。



 地を蹴り、一気にデグニテへ飛び込むが奴は冷静だった。


 俺の腕を掴み、そのまま身体ごと放り投げる。


 景色が反転する。


 そして、投げられた先に向けてデグニテが静かに口を開いた。


『 雷 』


 空気が爆ぜ、雷光が一直線に迫る。


 俺は空中で無理やり身を捻り、落雷を避けた。


 雷が石畳を貫き、白い閃光と共に破片が吹き上がる。


 だが避けた先、 既にデグニテが追いついている。


 振り下ろされる拳を咄嗟に蹴って軌道を逸らす。



 轟音とともに拳が地面へ突き刺さり、石畳に蜘蛛の巣状の亀裂が深く広がった。


 立て続けに拳が迫り、それを避ける。


 拳が地面を割る衝撃で城壁が震え、砕けた石片が頬を掠める。


 避ける度に地面が壊れていき、城は崩れ始めていた。



 .....だが。



 攻防を繰り返すとともに距離があいて空気が静まり返る。


 「私達は天敵のいない世界を望んでいるだけだ。それの何が悪い?」



 「手を取り合うつもりもないのか?」



 「お前のような神に選ばれた人間が現れる限り我が種族は脅かされる。」


 嫌な感覚...

 詠唱しようとしている...


 俺は即座に踏み込んだ。


 デグニテが口を開くより早く、腕を伸ばし、その顎を下から押さえつける。


 詠唱を潰し、そのまま蹴りを叩き込むとデグニテの巨体が後退した。


 逃さない。


 一瞬で距離を詰める。


 腹部へ拳を叩き込もうとしたその瞬間――



 デグニテの口元が笑った。


『 不死鳥(シナズドリ) 』



 拳がデグニテの腹へ直撃し、そのまま奴の身体が建物の壁を突き破る。


 石レンガが吹き飛び、粉塵が舞い上がる。


 俺は拳を見る。

 皮膚が焼け爛れていた。


 煙の向こうから声が響く。


「どうした? もう攻撃は終わりか?」


 建物の中からデグニテが姿を現す。


 全身に炎を纏い、揺らめく熱気で空気が歪んでいた。


 近づくだけで熱風が押し寄せ、肌が焼けそうだ。


 デグニテが拳を地面へ叩きつけると火が走る。


 火の粉が舞い、石畳が赤く染まった。


 城壁が焦げ、柱が崩れ落ちる。


「直に触れたくはないな……」


 そう呟き、建物から崩れ落ちた石レンガを拾う。


 左手でデグニテに軽く当て、右手で思い切り砕く。


 石が割れ、衝撃だけをデグニテに伝える。



 その間にも俺は待っていた。


 抹消魔法の回復を。


 安定して攻撃を通すなら抹消魔法が必要だ。


 ……だが。


 まだ使えないふりをしていれば、  奴は魔法を撃つ。


 隙ができる。


 再び石レンガを拾い、踏み込もうとした時だった。


 デグニテの炎が消える。


 奴は周囲を見回し、  崩れた建物や瓦礫を眺めながら口を開く。


「これでは瓦礫の山だな……みっともない……」


 そして。


『 天隠(アマガクシ) 』


 空気が震え、風が周囲の瓦礫を一斉に持ち上げる。


 石レンガや砕けた柱、 崩れた壁。


 空が瓦礫で埋まった直後、


 瓦礫が降る。


 横殴りの豪雨のように、 鋭い角度で容赦なく――


 石片が頬を裂いた。


 瓦礫が砕け、 土煙が視界を埋める。


 落ちてきた瓦礫の一つが肩を抉った。


「っ……!」


 即座に建物の中へ転がり込む。


 狭い廊下も安全ではない。

 飛来した瓦礫が壁を貫通する。


 石壁に穴が穿たれ、 石粒が飛び散る。


 廊下そのものが崩れかけていた。



 ひたすら走り、外へ飛び出した頃には空の瓦礫は尽きていた。


 一瞬の静寂――



 だが、廊下の奥から木履きの軽い音が響いてくる。


 デグニテが迫っていた――



――――――――


 デグニテが廊下の曲がり角を曲がり、外が見えた時、


 壁が突き破られ、粉塵を撒き散らす。


デグニテの視界が粉塵で埋まり、


「どこだ! ルスト!」


 デグニテの怒声が響く。


 魔力探知でルストを探している。



「そこか!!」


 デグニテの魔力探知が何かをとらえ、拳を振り抜く。


 だが、感触がなかった。


 土煙が風に流れ視界が広がる。


デグニテが殴ったのはルストが置いた魔法盾だった。



――――――――




 その瞬間、


 デグニテの背中が深く裂ける。


 振り返るデグニテの視界にいたのは俺だった。


 魔法盾の魔力を、俺自身の魔力だと誤認させた。


 握っていたナイフが折れる。



 デグニテの表情が初めて僅かに揺らぐ。


 冷や汗をかいていた。


 俺はその隙を逃さず拳を叩き込む。


 デグニテの身体が吹き飛び、  建物へ激突する。


 石壁が崩壊し、 轟音と共に城の一部が崩れ落ちた。


静寂が城を包む。

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