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封印されて五百年、世界は俺に牙を剥く  作者: NAriS


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生存戦争

デグニテの拳を受け止めた瞬間、腕の骨が軋むような感覚が走る。


 その拳の重さは技術でも狂気でもない、純粋な“力”だった。


 俺はすぐさま懐からナイフを抜き、デグニテの喉元へ突き立てようとする。


 だが、


 「遅い。」


 腕を掴まれ、景色が反転する。


 磨かれた石床へ叩きつけられる寸前、身体を捻って衝撃を逃がす。


 それでも肺の空気が押し出され、呼吸が詰まった。


 ナイフが手から離れ、硬い床を滑っていく。


 デグニテがそのまま俺を踏み潰そうと迫る。


 足を降ろす瞬間、すぐさま転がって回避する。


 石床にひびが走り、粉塵が舞い上がった。


 視界が白く霞む。


 だが次の瞬間、粉塵の中から黒い影が飛び出す。


 咄嗟に足蹴を両腕で受け止め、重圧で靴底が石を削った。


 押し返すように蹴り返すとデグニテがわずかに後退した。


 だが表情は変わらない。


 「なぜ魔族を殺す?」


 まるで問いかけるかのような静かな声だった。


 「人間にとって脅威だからだ。」


 「成る程...」


 デグニテはゆっくりと息を吐く。


 「これでは種族の存命をかけた戦争だな。」


 一瞬空気が止まり、魔力が揺らいだ。


 『 炎 』


 正面から炎が迫る。


 熱風で髪が揺れ、皮膚が焼ける感覚が走る。


 「―抹消魔法!」


 炎の構築は崩れた。


 だが、わずかに肩と頬が焼ける。


 炎が掻き消えた瞬間には、既にデグニテが拳を振り下ろしていた。


 俺は低く滑り込み、その股下を抜ける。


 床を転がっていたナイフを掴む。


 振り向き様に拳がふりかかる。


 避けることを断念して腹部へナイフを振るう。


 デグニテの腹に傷が走る。


 だが浅かった...


 だが同時に衝撃が脇腹へめり込み、骨が軋む。


 ナイフは耐えきれず折れた。


 砕けた刃が床へ落ち、冷たく高い音を響かせる。


 「フッ...」


 デグニテが鼻で笑う。


 『 風 』


 身体が浮きあがり、2階ほどの高さまで身体が持ち上がる。


 次の瞬間には窓へ叩きつけられていた。


 身体が窓に張りつき、透明な板に亀裂が走る。


 「まだだ...」


 デグニテが手をかざす。


 『 風 』


 窓が粉々に砕け散り、俺の身体はそのまま外へ放り出された。


 空へ浮き、眼下には魔王城が広がっていた。


 屋根へ着地しようとした瞬間、上から影が落ちてくる。


 デグニテだった。


 胸ぐらを掴まれ、そのまま急降下する。


 『 氷 』


 凍てつく魔力が皮膚へ食い込み、身体が凍り始める。


 「....っ!」


 「反発魔法!」


 魔法がデグニテの手を弾く。


 そのまま落下し、屋根を突き破る。


 瓦礫や木片が周囲へ飛び散り、そのまま建物内部へ叩き落ちた。


 崩れた木材の中、咳き込みながら立ち上がる。


 食卓だ。

 長机、椅子、燭台。


 何か使えるものは...


 その天井を突き破り、デグニテが降ってくる。


 床が揺れる。


 「魔法盾で良くなかったか?」


 俺は沈黙を貫く。


 目の前のテーブルを蹴り飛ばし、デグニテが片腕で叩き割る。


 その隙に背後へ回り込み、ナイフを突き刺す。


 後3本...


 肉を裂く感触がする。


 だが、


 「そうか、雷で使ったのか。」


 こちらを見下ろし、嘲るような声で呟く。


 『 氷 』


 ナイフごと凍る。


 瞬く間に部屋全体へ氷の結晶が広がり始めた。


 壁や床、机までもが白く染まっていく。


 逃げ場が狭まり壁に追い込まれる。


 すぐさま拳を叩き込むが受け止められ、そのままデグニテの拳が顔面へ直撃した。


 視界が揺れ、壁を突き破る。


 石壁を貫通し、中庭へ投げ出された。


 上を見ると壁に空いた穴からデグニテがこちらを見下ろしていた。


 拳が振り下ろされ、我に返って避ける。


 『 雷 』


 雷光と轟音が空に広がる。


 雷が降り注ぎ、石畳が爆ぜ、破片が飛び散る。


 デグニテが攻めてくる。


 俺を吹き飛ばした地点へ正確に雷を落としてくる。


 「ー魔法盾!」


 雷が弾け、光が散る。


 デグニテの目がわずかに見開かれた。


 「もう回復したのか。」


 次の瞬間、デグニテの表情に笑みが零れる。


 「だが――」


 一気に距離を詰めてくる。


 「その直後に攻めてしまえばいい!」


 拳も蹴りも全てが速い...


 だが見える。


 集中して全てを研ぎ澄ます。


 世界が鮮明に見えて拳の軌道が読める。


 踏み込んで腹部へ渾身の一撃を叩き込む。


 重い感触とともにデグニテの身体が吹き飛び、城壁へ叩きつけられる。


 さらに押し込み、城壁に亀裂が走る。


 城壁が崩壊し、石片が散る。


 デグニテの身体が一回り外周へ落下した。


 「やるじゃないか、勇者ルスト。」


 だがその声と笑みには、わずかな怒気が混ざっていた。

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