災禍の渦
ついに魔王城にたどり着く。
ヴァーダクトが俺に呼びかけているような感覚...
足早に門をくぐる。
石造りの階段に、俺の足音だけが響く。
突然、上から魔物が覆い被さるように襲いかかる。
建物全体に魔力が蔓延し、魔物の接近に気づき辛かった。
曲がり角や門の裏、城壁に張りつく魔物、
それらが一斉に襲いかかる。
だが魔族の気配はもうない。
魔物をなぎ払いながら城内を進んで行く。
巨大な魔力が城の中心、最奥から漏れ出ていた。
あそこに魔王が...
曲がり角から飛び出す魔物を潰し、歩みを速めたその瞬間、
最奥の魔力がおぞましく波打つ。
『 炎 』
反射的に横へ飛ぶ。
直後、 轟音とともに炎が落下した。
石を焦がし熱風が頬を焼きそうだった。
ルストは空を見上げる。
どこから撃っているか――
誰が撃っているか――
考えるまでもない、
魔王だ。
塀と城壁に挟まれた狭い直線の道に炎が落ち始める。
落ちる無数の炎よりも早く道を突破する。
曲がり角の先の門をくぐり抜け、炎が止む。
階段に蔓延る魔物の蹴散らし先を行く。
またも魔力が波打ち、
『 雷 』
前方に雷が落ち、白い閃光が一直線に突き刺さる。
まるで逃げ道を潰すように撃ってくる。
俺は石畳を蹴って無数の雷を躱す。
遅れて来る轟音が鼓膜を震わした。
建物の中へ入り、薄暗く狭い廊下を塞ぐように魔物がいる。魔物は狭い廊下で拳を床に叩きつける。
一歩下がり、叩きつけた拳を足で潰す。
そしてすぐさま頭を割る。
次の瞬間、 壁から氷の結晶が突き出した。
迫る槍のような鋭い氷柱を身を捻り回避する。
だが避けた先の床からも氷が迫り、みるみる足場が削られていく。
魔王が俺の移動先に魔法を置いているのだろう...
廊下を駆け抜け、外の明かりが見える。
外も氷が地面を侵蝕し始めていた。
建物に挟まれた通路を通ろうとした時、違和感を感じて即座に離れる。
一瞬にして通路が氷の結晶で埋められた。
氷はまだ追いかけてきている。
どうせ罠だろうが隣の建物の中から通路の先へ抜けるしかない。
建物に入ると檻が沢山ある部屋だった。
檻は鍵が開けられており、中の魔物が大量に襲いかかる。
その間にも氷は少しずつ迫っている...
急いで魔物を振り払い、魔物を氷に突き落とす。
みるみるうちに魔物は凍っていき、氷の追手から逃れる。
『 炎 • 雷 』
その瞬間、 前方と後方から同時に魔力を感じる。
雷鳴と熱風が道を埋め尽くす。
だが止まることなく前進する。
魔王の魔法は、 今までの魔族達とは密度が違う...
ようやく抜けた先は長い通路が待っていた。
右には部屋があるだけの廊下でただ静かだった。
『 炎 』
廊下の曲がり角までの半分を進んだ所で部屋の扉から炎が噴き出した。
前後を炎で塞がれ、廊下全体を埋める炎となる。
熱で肺が焼けそうだった。
逃げ道...
逃げ道は...
俺は窓の透明な板を叩き割り、窓から外へ飛び出す。
『 雷 』
直後、 雷が落ちる。
俺の回避を予測するように雷が落ち、避け切れなくなる。
俺の着地点の上空、そこに太い光の柱があると理解する。
巨大な雷が落ちる―――
―――――――
城の中央、薄暗い広間。
巨大な窓から外が見えている。
その奥で、 一人の魔族が笑う。
黒く長い髪、額から伸びる角。
黄色く光り爬虫類のような縦に裂けた瞳孔。
服の裾が揺れ、木の履き物がカラリと音を鳴らす。
そして静かに呟く。
「後、もう少しだ...
もう少しで――」
次の瞬間、
窓を突き破り、 ガラス片を撒き散らしながらルストが現れる。
「来たか、勇者ルストォ!」
「ここで終わらせるぞ...
魔王、デグニテ!」




