心蝕の始まり
ヴァレッドが上空から魔物を差し向け、空を埋める魔物が羽音立てる。
ヴァレッドは赤い瞳孔でこちらを睨んでいる。
「――爆発魔法」
ヴァレッドがそう唱えると魔物は急降下する。
そこに意志は無く、無機質な突撃と言うしかなかった。
そのまま地面に着弾すると同時に轟音をたてて爆発する。
周囲は激しい熱と光に包まれ煙と土煙の匂いが混ざる。
突如、煙の中からスティルフィスが飛び出し、怒涛の勢いで攻めてくる。
右頬―
左脇腹―
顎―
躱し、受ける、
それで精一杯だった。
ヴァレッドの爆撃が再開し、スティルフィスも爆発を避ける。
実際、俺の右脇腹に直撃した爆発はあばら骨がうっすらと見えるくらい肉をえぐった。
試しにヴァレッドめがけて石を投げつける。
ヴァレッドは飛んできた石に手をかざし――
凄まじい轟音が響く。
石はヴァレッドに到達する前に爆発し、塵となる。
「くだらない。」
静かに、怒るように、ヴァレッドが言葉を口にした。
「神に選ばれただけの人間が...」
振りかかる魔物の眼はみな生気を感じなかった。
恐らく精神魔法で動きを統一する誰かがいる。
そして魔物には魔方陣が刻まれている。
あれが爆発魔法か...
五百年前にも類を見ない未知の魔法...
「――爆発魔法」
また魔物が襲いかかる。
「目障りなんだよ!人間は!」
ヴァレッドの怒声が響き、圧倒的な物量の魔物たちが押し寄せる。
急いでその場を離れるが、大量の魔物は追いかけてくる。
逃げ場を奪うような爆撃が続き、ついに追いつかれる。
周囲に着弾し、地形を更地へ変える連鎖的な爆発が起きる。
...直撃はしていない。
だが、熱や光がやけどを起こし、飛び散る石片や木片が身体を引き裂く。
「しぶといやつだ...!」
「――爆発魔法」
今度は魔力が地面に込もる。
その地面を避けながらスティルフィスが迫る。
恐らくあの地面にも爆発が仕込まれている。
俺は魔力のある地面を踏まないようにスティルフィスの攻撃を躱す。
足場の減少と体力の消耗...
ますます不利になっている...
ならば――
「――魔法盾」
俺を纏う結晶のような膜が展開される。
俺はそのまま爆ぜる地面を踏み抜く。
だが爆発は全身を覆う盾に阻まれる。
その行動はスティルフィスにもディレにとっても想定外だった。
ディレが焦って魔法を発動する。
「――拘束魔法」
だがディレの魔法は盾に弾かれた。
スティルフィスの頭に渾身の一撃を当てる。
――しかし、負傷した身体では威力に限界があった。
スティルフィスは何とか耐えているがほぼ瀕死、
ディレは拘束魔法の無駄撃ち戦況の停滞で代償の魔物が減少気味、
ヴァレッドは下手に魔法を放てない状態。
そこへ
「――精神魔法」
魔力探知の届かない距離から魔法を発動される。
心操のイルジオンだった。




