不可侵の敵意
ディレの魔法が炸裂し、まるで沼に引き込まれるように身体が沈んだ。
そのうえで身体を狭い型にはめるように全身を押さえつけられる。
骨と筋肉が軋み、悲鳴を上げている。
身体を動かせない。
その間にスティルフィスは静かに息を整えていた。
やがて拘束が解除され、重力だけが残る。
常に身体へ圧力がのしかかっている。
重さで足が鈍り、拳が遅れる。
この状態でスティルフィスと殴り合っても埒が明かない。
......ならば
魔力探知で周囲を見る。
ディレは魔物に囲われている。
恐らく魔物を代償に拘束と重力を強化している。
なら、魔物ごと潰せば——
踏み込もうとした瞬間、スティルフィスが立ち塞がる。
「ディレを狙うつもりだろう?」
「...邪魔だ。」
全力で腕を振るうが避けられてしまう。
今は重力がかかっているとはいえ速い。
それだけでなく手慣れている。
畳み掛けなければ倒しきれない....
そう判断するほどにスティルフィスは厄介だった。
俺は近くに落ちていた石を掴み投げる構えをとる。
スティルフィスは反応し避けようとする。
だが、ディレの方向へ投げれば――
スティルフィスは石を無視することはできない。
スティルフィスが身を投げ出すように石を受け止めた。
石片が砕け散った。
その瞬間、
スティルフィスがふらつき、仕留められる瞬間が生まれる。
即座に踏み込み、頭を潰す。
――そう思った瞬間だった。
再び拘束魔法が発動し、身体が止まる。
「早く逃げてください!」
枯れ木の向こうからディレの声が響いた。
その間に、スティルフィスが距離を取った。
拘束は解け、重力だけが残る。
......そういえば。
以前の魔族達は、 拘束魔法を三体体制で使っていた。
つまり――
「連発できないんだろ?拘束は」
スティルフィスの表情は険しい。
次に使えるまでの間がある。
「ディレ! お前が狙われるぞ!」
スティルフィスが叫ぶ。
よそ見だ...
その瞬間を狙い、拳を振り抜く。
だが、ぎりぎりで躱されたてしまう。
即座にカウンター。
それでも相変わらず深追いしてくることはない。
……まだ時間稼ぎか。
何かを待っている。
俺は拳を地面へ叩き込む。
その瞬間、轟音とともに地面が割れた。
俺の重力を乗せた拳が地盤を一気に震わせる。
スティルフィスですら体勢を崩した。
——今だ。
一瞬で距離を詰め、スティルフィスへ拳を振り下ろす。
ディレが拘束を発動する。
だが、
「——抹消魔法。」
拘束と重力が消える。
....まだ連発できない。
今度こそ....
今度こそスティルフィスを殺す――
そのはずだった。
突然、真横から何かが突っ込んでくる。
衝突した直後、その何かが爆ぜる。
凄まじい衝撃が身体を吹き飛ばした。
土煙と熱があがり、その中で上空を見上げる。
遥か上空を埋め尽くす魔物の大群がうごめいていた。
そして、一体の魔族、
爆撃のヴァレッドが空中からこちらを見下ろしていた。
「お前が...!」
殺意を剥き出しにした赤い瞳孔が見える。
「ここで殺す!」




