使い捨ての凶刃
俺は一歩ずつ近づき、スティルフィスは静かに身を構える。
隙がない。
それでも止まるわけにはいかない。
一歩、強く踏み込み、ナイフを突き出す。
狙うは首――
だが、躱された。
「武器の出し惜しみ....一撃で壊れる前提....」
スティルフィスが低く言葉を出す。
「だから急所しか見ていない。」
次の瞬間、回し蹴りが襲う。
視界が横へ流れ、身体が吹き飛び地面を転がる。
重い衝撃、そして頭が割れるように痛む。
それでも、すぐ立ち上がる。
その瞬間――
スティルフィスの姿が、一瞬ぼやけた。
速――
気づけば目の前まで迫っていた。
真正面から腹部への拳。
.....大体分かってきた。
右足を引き、 最小限の動きで躱す。
スティルフィスは避けられた事が不思議そうな表情をしていた。
「....見える。」
スティルフィスは拳に全力を乗せる動きをする。
「筋を読まれたか...」
その軌道に無駄はない。
その分、軌道が読みやすい。
心臓へナイフを突き立てようと構える。
だがその時点でもう避けられている。
そして、魔物が増えていることを魔力探知が知らせていた。
周囲からじわじわと...
「何をするつもりだ?」
問いかける。
スティルフィスの表情は少し険しくなっていた。
「言うとでも?」
その言葉と同時に、俺は再び踏み込む。
ナイフを構えるが先にスティルフィスが拳を出してきた。
奴は、俺が避けると思っている。
拳を肩で受け止め鈍い音がする。
骨が軋み折れただろう。
それでも腕を離さない。
スティルフィスの瞳がわずかに揺れる。
奴は、俺が首を狙っているのを見ていた。
だから左腕で首を庇う。
俺はナイフを肋骨の下へ突き立てた。
「……っ?!」
予想外の行動の連続にスティルフィスの表情が初めて崩れる。
...驚いた。
ナイフは腹を貫き、スティルフィスを負傷させた。
だが、それ以上裂くこともできず引く抜くことすらままならない。
「...それで勝ったつもりか?」
次の瞬間、裏拳が飛ぶ。
左頬を殴打される。
衝撃で腕が離れナイフも手放してしまった。
続けてスティルフィスの拳が腹へ入る。
スティルフィスの表情はまるで狩人のように変わっていた。
だが、
「....軽いな。」
さっきより確実に...
俺は地面へ踏み込み、耐える。
「少し疲れたか?」
そう言うと、 スティルフィスの眉がわずかに動いた。
奴が腹へ視線を落とす。
刺さったままのナイフ。
「ナイフ、邪魔か?」
俺は踏み込み、 ナイフの持ち手へ衝撃を叩き込む。
持ち手だけが砕け落ちた。
刃は奴の体内で割れているようだ。
「貴様....!」
傷口から、魔力が漏れ出している。
スティルフィスが初めて息を乱した。
「もう止められないだろ。」
そう言って、 頭を潰そうと踏み込んだ瞬間だった。
「...遅かったな.....ディレ。」
安堵のような表情でスティルフィスが呟く。
その瞬間――
今まで感じたことのない重圧が全身を襲った。
身体が沈み押し潰される。
拘束と重力...
それはまるで呪縛のように強力な魔法だった。
魔物を大量に引き連れた強力な気配が魔力探知に映る。




