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封印されて五百年、世界は俺に牙を剥く  作者: NAriS


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遭逢

 わずかな記憶を頼りに魔王城を目指して歩いていた。



 どれくらい進んだのだろうか。


 日も暮れ始める頃、少し離れた所叫び声が聞こえた。


 木々を掻き分け、人を探す。



 子どもだった。

 

 魔物に追われている。


 考える必要もない。


 


 身体が、勝手に動いていた。


 


 距離を詰める。


 


 魔物が振り向く。


 


 遅い。


 


 拳を振るう。


 

 それで終わった。


 


 魔物は動かなくなる。


 


 子どもが、震えながらこちらを見る。


 


 怯えている。


 


 ……当然か。


 


 自分でも、少しそう思った。



 沈黙が続いた。



「……大丈夫か」


 声をかけてみる。

 


 子どもは小さく頷いた。


 


「……助けてくれたの?」


 

 子どもは泣きそうなのを堪えながら尋ねる。



「……そうだと思う」


 


 それしか言えなかった。



 子どもは食料を探しに村を出た所、魔物に遭遇したそうだ。

 「ほんとは村から出ると怒られるの。危ないから。けどみんな食べ物なかったから。みんなに食べ物あげたくて...」


 君は偉いなんて言葉を俺が言っていいのだろうか?

 

 ただ魔王を倒すということしか決まっていなかった。誰かの為でも何でもなく、ただの復讐のような動機で動く俺が。


 子どもに連れられて、村へ向かった。


 


 人がいた。


 


 生きている人間が、そこにはいた。


 


 村人たちは俺を見て、ざわめいた。


 


 警戒。


 当然だ。


 


 だが、子どもが何かを伝えると、空気が変わった。


 「子どもを助けて頂きありがとうございます。」


 長老らしき人から礼を言われる。


 


 服を渡される。



 食べ物を差し出される。



 そこまでの事はしていないと遠慮するが、


 「ではせめて衣服と今日泊まる所を用意します。」


 と言われた。



 埒が明かなそうだったので受け入れた。


 


 朝日が昇り、村を出ることにした。


 身体はかなり疲れが取れた。


 思えば都市を訪れるまでは野宿で、村までは日中歩きっぱなしだった。


 寂しいがここにいる理由はない。


 


 それに——


 


 足は、止まらなかった。


 


 村の外へ出る。


 


 そのときだった。

 


 違和感。



 空気が、変わる。


 重い。



 静かすぎる。



 さっきまで晴れていた空は曇天となっていた。



 足を止める。


 


 気配が、一つ。


 


 いつからいたのか分からない。


 


 だが、そこにいる。


 


 前を見る。


 


 ——いた。


 


 黒い髪が、風に揺れている。


 


 長い。


 


 布を重ねたような衣服


 


 足元には、軽い木の音を鳴らす履物。


 


 人の形をしている。


 


 しかし——


 


 目が、違う。


 


 黄色く光る瞳。


 


 縦に裂けた、爬虫類のような瞳孔。


 


 そして、額。


 


 角が、伸びている。


 


 理解する。


 


 あれが、何か。


 


 言葉にする必要はない。


 


 身体が、勝手に構えていた。


 


 だが、動けなかった。


 


 動けば終わると、分かっていた。


 


 視線が合う。


 


 その瞬間、確信する。


 


 こいつが——


 


 魔王。

 


 静かに、口が開く。 


「目覚めた感想を聞こうか、勇者よ」

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