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封印されて五百年、世界は俺に牙を剥く  作者: NAriS


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火蓋を切る Ⅴ

理性のない魔族が迫る――


 

 硬い、だが倒せないわけじゃない...


 それはもう理解している。


 腕を掴み、そのまま群れへ投げ込む。


 

 地面に叩きつけられる音とともに下敷きになった魔族達が潰れる。


 そして投げ込まれた魔族は暴れ、味方に危害を加え始める。


 

 周囲の魔族が対処しようとするが、あれは簡単には止まらない。


 

 周囲を巻き込んだ混乱へ俺も飛び込んだ。


 

 拳で潰し、踏み抜き、蹴り飛ばす。


 


 群れの中でさっきの魔族が落とした槍と剣を拾う。

 


 前方に飛び込み、剣を振る。


 

 魔族の壁を斬り開く。


 続けて、槍の柄の端を掴み、

 横薙ぎ。


 周囲の魔族をまとめて吹き飛ばした。


 

 ようやく視界が開け始める。


 

 だが地面には氷が滞留している。


 

 動きを制限するようにまばらに置かれている。


 その瞬間――


 

 「――雷魔法」


 光が炸裂する。


 

 氷が邪魔で移動先が限られる。


 ならば...


 魔族の身体を踏み台にする。


 

 飛び乗りながら逃げる。


 


 その時、


「——風魔法」


 


 「またか...。」


 吹き飛ばされる...


 そう判断した瞬間、近くの魔族を掴んだ。


 


 爆風が身を押し上げる。


 

 また周囲の魔族ごと吹き飛ばされる。


 

 回避しようがない落雷が周囲の魔族を襲い、焼ける臭いが漂う。


  


 俺は掴んだ魔族を上へ蹴り飛ばし、盾代わりに雷を防いだ。


 

 着地を成功させなければ....


 ...だが反発魔法は使えない。


 

 左腕を地面へ叩きつけ、衝撃を逃がす。


 

 もちろん――

 左腕が動かなくなった。


 


 直後、炎が迫り来る。


 

 転がるように回避する。


「着地を狩るつもりだったんだがな.....」


 頭の切れる魔族の声、

 やつがいなければ...

 「鬱陶しい....」


 

 無理やり立ち上がりすぐさま動く。


 


「しぶとい……」


 先ほどの魔族から声が漏れる。


 


 周囲を見たところ、理性のない魔族が暴れたおかげで数は減っていた。


 

 その時、目の前に石が落ちる。


 

 魔力が込もっているわけではない。


 

 見上げると空に巨大な岩石がいくつも浮いていた。


 

 落ちて来る岩石を避け続ける。


 轟音と魔物の断末魔がそこら中で響いている。


 潰されている。


 

 魔族の群れの中には、腰を抜かしたものもいる。


 剣を奪い、振るう。


 辺り一面を切り裂く。


 

 その瞬間、魔力が波打つのを感じた。


 視線を向けた先から何かが飛んできた。


 腹に何かが当たる。


 ナイフが深く刺さっていた。


 ...ナイフを投げられた。


 

 いや風魔法か。


 

 そんなこと考えてる場合じゃない....

 回復できない...

 止血...


 考える隙を与えてくれず、

 

 理性のない魔族の標的が再び俺になる。


 魔族の拳が地面へ叩きつけられ、その勢いを利用する。


 身体を転がし、背中から倒れる。


 魔族の首が空いた瞬間、拳を叩き込み、首の骨が砕ける。


 直後、上から岩石が落ち、頭へ直撃した。


 落ち着け...!

 上を確認すればよかっただろ...!


 血が流れ、地面に滴り落ちる。


 

 その向こうに笑っている魔族が見えた。


 あいつだ...!


 走り、追う。


 魔族は俺を待ち構え、詠唱していた。


 「——風魔法」


 「.......!」


 俺は焦る気持ちを抑え、魔法で正確に対処する。


 「——抹消魔法」


 


 自身の周囲の魔法を打ち消し、風が消える。



 そのまま距離を詰めると魔族は剣を取り出し、接近戦に持ち込む。


 だが身体がふらつき、完全には避け切れない。


 浅い傷だが増えていき、痛みが増していく。


 それでも力を振り絞り、剣を叩き折る。


 魔族が笑う。


「反発魔法だったか?それもまだ使えないのだな。」


 不敵な笑み。


 次の瞬間、魔力が激しく波打つ。


「——炎魔法」


 横から炎が割り込み距離を取られる。


 さらに、


「——精神魔法」


 まずい...


 対策がない...


 まだ魔法を使えるようになっていない...


 なす術無く平衡感覚が崩れる。


 

 膝をつき、体制を保とうとするのが精一杯だった。


 魔力探知で炎が止んだのは分かった。


 恐らく魔族も代償でほとんど力尽きている。


 魔族の数も後僅かだった。

 だが、今の状態では何もできない...


 周囲を見る余裕すらない....


 そこへあの魔族が歩いてくる。


 疲労に満ちた声、


 「詰みだ、勇者よ....」



 どうするか――


 俺は――


 腹に刺さったナイフを引き抜き、そのまま魔族の首を掻き斬る。


「なぜだァァッ....?!」


 血を吹き出しながら叫ぶ。


「.....魔法盾を張った。」



 魔族は目を見開き驚いている。


「....見えないよな.....頭の中だけなんだから...」


 ゆっくり立ち上がっても身体が軋む。


 「...だまし...た..のか..?」


 

「.....魔法の復活時間を短縮した」


 舌を出して指差す。



 「.....五感の一つを差し出してな。」


 魔族が崩れ始める。




 それを見届けて残った魔族のもとへ向かった。




 もう、戦意を失ったものしか残っていない。



 一体ずつ潰して回る。



 逃がさない。


 回復魔法を使えるようにしてもよかった。


 ――が、あの魔族なら回復すれば油断しなかった。


 魔族は全滅し、静けさが訪れる。


 風の音だけが残る...


 頭の中がぼんやりとしている。


 俺の目的は...


 俺の目指す先は...


 もう、疲れ——




 俺はそこで意識が途切れた。


 俺はその場で倒れ込んだらしい。

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