火蓋を切る Ⅳ
空気を引き裂くような轟音。
次の瞬間。
世界が白く染まった。
雷が落ち、辺り一面を飲み込む...
理性を失った魔族ですら、肉体が灰に変わっていた。
直撃すれば終わる...
俺は雷が落ちる瞬間、上方向だけに絞って魔法盾を展開した。
「——魔法盾」
雷そのものは防げた。
だが――
音は耳を刺す。
耳鳴りが止まず何も聞こえない。
熱が肌を焦がす。
皮膚が焼ける臭いと激しい痛みが続く。
視界が揺れる。
....まだだ。
まだ回復するわけにはいかない。
ここで手札を切れば後が無くなってしまう...。
痛みとともに緊張感が身体を支配する。
力を振り絞ら魔物の群れへ踏み込む。
魔法を発動しようとしている...
発動前に2体、頭を潰す。
周囲の魔族を回し蹴りで凪払う。
だが――
奥から微かに魔力が波打つのを感じる。
危険を察知して反射的に後退する。
直後雷が落ち、地面が弾け飛ぶ。
「魔力探知が優秀なんだな、」
張りつめた声、
しかし、どこか楽しそうだった。
「――さすがは勇者」
姿は見えない。
指揮している魔族だろうか?
先ほどから頭が切れる発言が目立つ。
油断している正面の魔族を殴り飛ばしながら聞く。
そのまま退避。
削って――
離れる――。
これを繰り返せば勝てる、そして確実だ。
だが、それをさせてくれるほど甘くはないのも分かっている。
突然、炎が視界を埋める。
まるで壁のようにそびえていた。
そのうえ、魔法で生み出した炎には魔力が込もっている。
炎の先の探知ができない...
その瞬間、氷が炎を越えて地面を走る。
凍結範囲は狭く、凍結速度に重きを置いている。
全身大火傷――
このまま耐えるのは無理があるだろう...
攻めるにも炎を突破するのは危険すぎる。
ならば...
地面の石をいくつか拾う。
氷を避けながら炎の向こうへ投げる。
何度も、何度でも――
「ぐぁぁっ!?」
時々、命中したような反応が聞こえる。
その直後、炎が揺らいだ。
いや――
動いている...。
こちらへ迫っている....。
逃げるしかなかった。
――だが追いつかれる。
風が炎を運んでいる。
「また風魔法か...」
身が焼かれ、熱と痛みが身体を襲う。
――炎が消えた頃には身体中が火傷だらけで、全身が焼ける臭いがした。
そして待っていたように魔族が襲いかかってくる。
槍を持っている...
距離を取るつもりだろう...。
立ち上がるだけでも重い、
それでも―――。
槍が突き出された瞬間、
身体を捻り躱す。
槍を掴む。
魔族が焦り槍を引っ張る。
だがそんな柔な筋力は話にならない。
でも余裕ではない...
上から落ちてくる...
剣を持った魔族、
そこから振り下ろされる一撃――
槍の刃先を上に持ち上げ、剣を弾く。
魔族は俺を殺せると思ったのだろう、
隙ができた。
踏み込み、腹を貫く。
槍を持っていた魔族は焦りと恐怖に駆られて柄を離さない。
柄に沿って近寄る。
拳を頭に叩き込むと軽く吹き飛んだ。
その直後、左右から素手の魔族が現れる。
身を構え、拳を受け止める体制をとる。
手が迫った瞬間、腕を掴み攻撃を防ぐつもりだった。
だが、相手の狙いは拘束だった...。
両腕を掴まれ、
「「やれ!!」」
左右の魔族が叫び、理解する。
まずい...。
氷が迫っている...。
避けられない。
魔族ごと凍りつき自由を失う。
そこへ、狙ったかのように正面から理性を失った魔族が現れる。
重い拳が目の前にある...
防御できない....
直撃.....
身体が吹き飛び景色が流れていく。
どれだけ飛ばされたのかも分からない。
視界は霞み、意識が朦朧としている。
身体も動かない.....
「......仕方ない」
諦めよう――
――出し惜しみなんてしてられない...
「——回復魔法」
熱、痛み、砕けた骨、朦朧とする意識....
その全てが少しずつ戻っていく。
手札は減ってしまった。
だが――
もう二度と犠牲にしたくはない....
自身を鼓舞して立ち上がるしかなかった。




