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封印されて五百年、世界は俺に牙を剥く  作者: NAriS


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火蓋を切る Ⅳ

空気を引き裂くような轟音。


 次の瞬間。


 世界が白く染まった。


 雷が落ち、辺り一面を飲み込む...


 理性を失った魔族ですら、肉体が灰に変わっていた。



 直撃すれば終わる...



 俺は雷が落ちる瞬間、上方向だけに絞って魔法盾を展開した。



「——魔法盾」




 雷そのものは防げた。


 だが――


 音は耳を刺す。

 耳鳴りが止まず何も聞こえない。


 熱が肌を焦がす。

 皮膚が焼ける臭いと激しい痛みが続く。



 視界が揺れる。


 ....まだだ。


 


 まだ回復するわけにはいかない。



 ここで手札を切れば後が無くなってしまう...。


 痛みとともに緊張感が身体を支配する。


 力を振り絞ら魔物の群れへ踏み込む。



 魔法を発動しようとしている...

 発動前に2体、頭を潰す。


 周囲の魔族を回し蹴りで凪払う。



 だが――



 奥から微かに魔力が波打つのを感じる。



 危険を察知して反射的に後退する。



 直後雷が落ち、地面が弾け飛ぶ。



「魔力探知が優秀なんだな、」



 張りつめた声、

 しかし、どこか楽しそうだった。



「――さすがは勇者」



 姿は見えない。


 指揮している魔族だろうか?


 先ほどから頭が切れる発言が目立つ。


 油断している正面の魔族を殴り飛ばしながら聞く。


 そのまま退避。



 削って――

 離れる――。



 これを繰り返せば勝てる、そして確実だ。



 だが、それをさせてくれるほど甘くはないのも分かっている。



 突然、炎が視界を埋める。


 まるで壁のようにそびえていた。




 そのうえ、魔法で生み出した炎には魔力が込もっている。



 炎の先の探知ができない...



 その瞬間、氷が炎を越えて地面を走る。



 凍結範囲は狭く、凍結速度に重きを置いている。



 全身大火傷――


 このまま耐えるのは無理があるだろう...


 攻めるにも炎を突破するのは危険すぎる。


 ならば...



 地面の石をいくつか拾う。


 氷を避けながら炎の向こうへ投げる。



 何度も、何度でも――



「ぐぁぁっ!?」



 時々、命中したような反応が聞こえる。




 その直後、炎が揺らいだ。



 いや――

 動いている...。



 こちらへ迫っている....。



 逃げるしかなかった。


 ――だが追いつかれる。




 風が炎を運んでいる。


 「また風魔法か...」



 身が焼かれ、熱と痛みが身体を襲う。



 ――炎が消えた頃には身体中が火傷だらけで、全身が焼ける臭いがした。



 そして待っていたように魔族が襲いかかってくる。




 槍を持っている...

 距離を取るつもりだろう...。



 立ち上がるだけでも重い、

 それでも―――。



 槍が突き出された瞬間、

 身体を捻り躱す。



 槍を掴む。



 魔族が焦り槍を引っ張る。


 だがそんな柔な筋力は話にならない。 


 でも余裕ではない...

 

 上から落ちてくる...



 剣を持った魔族、


 そこから振り下ろされる一撃――



 槍の刃先を上に持ち上げ、剣を弾く。



 魔族は俺を殺せると思ったのだろう、

 隙ができた。



 踏み込み、腹を貫く。



 槍を持っていた魔族は焦りと恐怖に駆られて柄を離さない。



 柄に沿って近寄る。



 拳を頭に叩き込むと軽く吹き飛んだ。



 その直後、左右から素手の魔族が現れる。



 身を構え、拳を受け止める体制をとる。



 手が迫った瞬間、腕を掴み攻撃を防ぐつもりだった。


 だが、相手の狙いは拘束だった...。



 両腕を掴まれ、

 「「やれ!!」」



 左右の魔族が叫び、理解する。


 まずい...。



 氷が迫っている...。


 避けられない。



 魔族ごと凍りつき自由を失う。


 そこへ、狙ったかのように正面から理性を失った魔族が現れる。



 重い拳が目の前にある...


 防御できない....


 直撃.....



 身体が吹き飛び景色が流れていく。



 どれだけ飛ばされたのかも分からない。



 視界は霞み、意識が朦朧としている。


 身体も動かない.....



「......仕方ない」


 諦めよう――


 ――出し惜しみなんてしてられない...


「——回復魔法」



 熱、痛み、砕けた骨、朦朧とする意識....



 その全てが少しずつ戻っていく。



 手札は減ってしまった。




 だが――


 もう二度と犠牲にしたくはない....

 

 自身を鼓舞して立ち上がるしかなかった。

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