火蓋を切る Ⅲ
集団の中の一つの魔力が強く波打っていた。
その瞬間、嫌な予感がした....。
「代償強化――」
周囲がざわめいた次の瞬間――
「——風魔法」
集団の奥から音を立てて風が迫る。
そして、爆風が身を軽々と持ち上げた。
視界から地面が消えた後に空へ投げ出されたことを理解する。
風は周囲の魔族ごと吹き飛ばし、遥か上空まで浮き上がる。
そこから見えた景色は一面の魔族の群れだった。
一国の兵を補えるほどにはいるだろう。
それほどまでに地面が魔族一色で染められていた。
あれ全部が敵――。
そんなことを考えている間に身体は地面へ向かって落ち始める。
地面が迫っている。
落下を相殺しなければまずいな...
「——反発魔法」
地面に衝突する直前、魔法を発動し、地を弾く。
身体はわずかに浮き、落下の速度を打ち消した。
着地を成功させるが周囲の魔族達は――
着地に失敗し、全身が潰れて肉塊となっている。
集団奥から声が聞こえる。
「お前達!!代償を使え!!」
「力がないなら何かを犠牲にしろ!!」
魔族達に言葉が届いた瞬間、空気が変わり。
魔力の塊が激しく波打つ。
途轍もない速度で魔力が迫っていた。
咄嗟に躱すと凍った地面が一直線に出来上がる。
避けたつもりだったが触れていたらしい。
右足が凍る。
治すほどではない...
それでも足は重く、俺の動きを鈍らせる。
直後、またもや魔力が激しく波打つ。
代償で倒れる魔族もいる中、
無数の炎が蛇のようににうねりながら迫る。
まだ動ける....
そう言い聞かせながら避ける。
この程度なら問題無い。
だが魔族達はなりふり構わす突っ込んでくる。
突っ込んでくる大抵の魔族は俺に近寄る前に炎に呑み込まれ、灰になる。
一部の魔族は炎をくぐり抜け、俺に接近した。
左右と背後から、
右と後ろは殺せた。
左から来た魔族は俺の腕を掴んだ。
「――氷魔法」
左腕が鈍る。
咄嗟に振り払い、魔族を炎へ落とす。
そして正面の炎の中に影が見える。
魔族だった。
炎を耐えるなんて...
いや......
そもそも炎を避けないなんて...
...やはり考えていない。
肉体強化...
理性の無い魔族、それが3体...
炎を越えて迫る。
正面から突進、
動きが鈍ったこの身体では防御しきれず重い衝撃が身体中に響く。
吹き飛んだ身体が岩に叩きつけられる。
少しずつ後退させられている。
未だに炎がこちらを狙って襲いかかる。
理性の無い魔族3体にも追いつかれる。
1体を攻撃しつつ、残りの2体は魔力探知で位置を把握しながら距離をとる。
この魔族でも炎ではやや焦げる。
炎はこちらを狙うので誘導できなくはない。
2体は炎で削る...
ここで消耗するわけにはいかない。
回復魔法もまだ残しておきたい...
3体とも疲弊してきた頃、
激しい魔力の波打ちに気づけなかった。
空に巨大な光――
――雷だった。
この足では逃げ切れない....
そう断言できるほどの威力を確た。




