鉄壁の凶陣 Ⅰ
村を出る前の朝、エルダが外まで見送りに来ていた。
静かな風が吹き、長い髪が揺れる。
「...魔王城に向かうんだね」
「あぁ...」
エルダは少し笑った。
「残念ながら君の旅についていくほど体力はないんだ。」
「少し残念だ...」
「でもそのうち私も村を出るつもりさ。どこかに村があれば手助けする。」
「......無理はするなよ」
そう言うと、エルダは少しだけ目を丸くした。
それから、小さく笑う。
「それ、君が言うんだ」
返す言葉はないが少し笑えてくる。
少しの沈黙の後、そして俺は振り返ることなく歩き出す。
数日が経ち、辺りは霧がかった湿地に変わっていた。
魔王城が近くなってきたせいか道中の魔物の数はやや多くなっていた。
地面はぬかるみ、靴が沈む。
空気が重く、視界も悪い。
歩いている最中に魔力を感じた、魔族のものだ。
離れた場所から、こちらを見ているのが分かった。
足を止め、息を吸う。
.........魔族2体が迫っていた。
魔力の先へ振り向き身を構える。
その瞬間、霧を割って魔族が現れる。
拳が振り抜かれる。
受けた途端、身体に衝撃が来る。
言葉にならない――
――ただ重い。
.....この感じ――
――やはり目に理性を感じない。
理性を代償にした魔族、あの異常な身体能力を得た魔族と同じだ。
だが同じ手は通用させない。
もう簡単には吹き飛ばされなかった。
だが魔族の拳は俺の身体を後ろへ押し込む。
後1体の魔族の姿が見えない――
そう思った瞬間だった。
もう1体の気配は上から、
見上げると拳が落ちてきていた。
2体から距離をとり、攻撃を躱す。
直後、正面から最初の魔族の拳が迫る。
拳の力を受け流す。
理性がないはずだろ....。
なぜ連携がとれている?
拳を受け流し魔族の腹部はがら空きだった。
一撃を入れようと踏み込んだ瞬間、
もう片方の魔族の拳が攻撃の邪魔をする。
.....簡単に隙を作ってはくれない。
それはまるで1つの生き物のように動いていた。
このままでは一撃を叩き込む暇もない....。
それに、霧の向こうにはまだ複数の魔族がこちらを見ているのが分かる。




