氷蝕の凶陣
外の空気が変わり、背筋はひやりとした何かになぞられたようだった。
村の周囲を見渡すとどこも地面が凍っている。
逃げ場が氷に閉ざされると同時に——
村一面にエルダの魔力が広がる。
「戦うのは嫌なんだけどな......」
エルダの抹消魔法が見えない膜のように村を覆う。
氷の進行を確実に抑えていた。
だがわずかに侵食されている。
「どれくらい持つ?」
短く聞く。
エルダは、わずかに息を吐いた。
「この範囲だと......五分ないくらいかな」
「...分かった。」
もちろん十分な時間ではない。
それでもやるしかないのだ。
振り返ると村人たちは混乱していた。
「大きめの石を持ってきてくれ」
そう俺が呼びかけると一瞬、戸惑ったがすぐに動き出してくれた。
石を探している中、エルダが話かける。
「多分停止条件は魔法発動者の全滅だ...!」
「一体でも残っていると意味が無い!」
村人によって石が集まる。
「...21個か、」
それに対して魔族の数は...
屋根に上がり見渡す。
気配は多いがおそらく15体...
石を手に取り、投げる。
「く"ぁ"っ"」
魔族の頭が潰れ、灰となる。
また一つ、また一つと数を減らしていく...。
外したり一撃で仕留められず、残りの石は3個...
魔族は残り1体だ。
一石投じるが間一髪、躱される。
だがもう俺は石を投げている。
魔族が石を避けた先に別の石が飛ぶ。
頭に命中し15体倒す。
だが——
「……まだだ……!」
エルダの声が必死に訴える。
「まだ魔法を使っているやつがいる……!」
周囲を見ると氷の進行は止まっていなかった。
足場が削れ、逃げ場がなくなる。
残りの石は後1個。
感覚を研ぎ澄まし、魔力探知広げる。
氷にも魔力がある...。1ヶ所だけ気になる所があった。
氷がより遠くへ繋がっている。
氷を辿った先に魔族の気配が微かにある。
最後の石を手に取り投げる。
だが——
石は魔物の身体に阻まれ魔族に到達しなかった。
魔物もまだ息がありそうだった。
その瞬間、村を守る見えない膜が崩壊した。
「すまない...時間切れだ。」
氷が一気に迫る。
俺は魔族のいる方向へ飛び出す。
氷に足が触れると足の裏に刺されるような痛みが走る。
足が凍っていくのが分かる。
凍った足を叩き割り――
「——回復魔法」
足の感覚が戻っていった。
そしてすぐさま――
「——抹消魔法」
着地した瞬間、足に力が入らなかった。
無理な回復による影響だ。
身体を立て直し、
抹消が切れるその刹那、
魔物に飛びつく。
魔物にしがみついたまま心臓を抉る。
崩れる魔物を踏み台にして跳ぶ。
だがまだ距離が足りない。
「——反発魔法」
地面を弾き身体を押し出す。
魔族に拳が届き、魔族の頭を潰す。
氷が止まり、溶けていく。
静寂が戻る。
エルダ達も無事で少しだけ安堵している。
「......何とかなったね。」
小さく言う。
「ルスト....」
視線が、真剣になる。
「あの剣のことだけど」
話を続ける。
「あれは、ただの武器じゃない、」
「斬れるものと、斬れないものがある――」
「なら、魔族が使いこなすのは難しいんじゃないかな?」
「壊せないならなおさらでしょ?」
「つまり魔族達は安全に管理するしかないのか。」
何処で保管するのが一番安全か――
それは何となく分かった。
視線が遠くへ向く、
向かう場所が定まる、
――それは魔王城だ。




