理を外れた刃
都市を後にし、しばらくの間歩き続け、村に着いた。
そこはエルダと合流することを決めていた村だ。
前の村と少し近いので交流によって生活は安定しているようだ。
近くの男に声をかける。
「この村にエルフが来ていると思うのだが――」
「エルダさんのことか、昨日来たよ」
「こっちだ」
快く案内される。
家の中いた。
「やぁ、ルスト」
そう言って振り向く、
彼女は穏やかな目をしている。
「...凄くくつろいでいるな...」
「ここの人達、私を歓迎してくれたんだ。」
「久しぶりの旅で疲れてたから助かったよ。」
軽く笑う。
「......そう、なんだ」
エルダがこちらを見る。
「記憶は戻った?」
「あぁ...少しだけ...」
少し間を置く。
「俺が使っていた剣についてだ」
エルダは少し目を細める。
「あの剣ね、」
少し考えるように視線を逸らす。
「確か“裁きの剣”とか言われてたやつ。」
「俺は封印が解けた後、一度魔王と戦った。」
「もうすでに戦ったなんてね...」
「――勝てなかったんだ」
「あの剣があれば勝てたかも知れない...。」
——かつての戦いを僅かに思い出す。
剣を振るう時、驚くほど簡単に魔族が裂けた記憶がある。
「今に比べて魔物が多かった頃、俺は魔物を頻繁に狩っていた。」
「今魔物が少ないのは君が数を減らした影響だもんね。」
小さい魔物の群れもドラゴンの硬い爪もゴーレムの巨躯も。
「立ち塞がる敵は全て斬り伏せた。大抵は一太刀で終わった。」
「"魔"を切り裂く聖剣、昔からそう言い伝えられているね。」
――そうだ、敵だけじゃない。
"魔"法も切り裂いていた...
迫る業火の魔法も、降りかかる重圧の魔法も、精神魔法も全て無に帰していた。
もし、言い伝え通りなら"魔"王にも有効打になる。
「だが引っかかる所もある...。」
「確実に魔族を切れるわけじゃなかった。」
確かに俺に立ち向かう魔族や魔物は皆斬れた。
――それなのに逃げる魔族の背中に与える一撃の威力は全く違う。
「敵意の無いものは浅い傷しか与えられない。」
「木や岩だってそうだった。」
「対象を識別してるのかな...。人を斬らないための安全装置のような――」
エルダの視線が外へ向く。
わずかに空気が変わる。
「ルスト、」
その神妙な声で察した。
「「囲まれている」」




