裁きの一太刀
都市は、崩れていた。
遠くから見えていた影はかつての都市であり、瓦礫だった。
崩れた建物、形を残していない道。
足を止める。
生活していた人々の景色が脳裏に映る。
記憶の断片を思い出す。
俺は旅をする前、城下町で暮らしていた。
それは俺が18の時だ。村を出て1人で日銭を稼ぎながら暮らしていた。
当時は魔王を討つ勇者候補を探していた。
候補になっていたのは兵士で一般人はいなかった。
なのになぜか俺は国王に選ばれていた。理由は知らない。
国王の言葉を覚えている。
旅の支援をするということ、
そして伝説の剣の在り処。
「ごくわずかな者にしか、引き抜けぬ。」
そう言われたので向かった。
地に刺さった剣に手をかけた。
どうせ引き抜けないだろうと思った。
自分が勇者に選ばれるなんて訳が分からなかったから――
——抜けてしまった...
その剣の名は——
そのとき。
轟音が響く。
現実に引き戻される。
振り向くと魔族がいた。
1体だけ、潜伏も援軍もいない。
すぐに動き、踏み込む。
腹に拳を叩き込む。
だが手応えはあったが倒れない。
吹き飛ぶだけで生きていた。
起き上がった瞬間、視界から消える。
違う、速――
目の前には拳があった。
腕で受けるが異常に重い。
身体が浮き、瓦礫に叩きつけられる。
腕の感覚が消えるほどの痺れ。
また来る...
一直線に突っ込んでくる。
分かっていても頬を掠めるほどに速い。
無口なのかと思っていたが、獣のように唸っており理性がないようだった。
「...これも代償なのか」
身体能力を上げている。
シンプルだが厄介だ。
幸いにも狙いは読みやすい。
回避しカウンターを入れる。
一発、二発、....十発、
効いている。
だが魔族は止まらなかった。
底が見えない体力に圧倒されこちらが消耗する。
――こんなのは初めてだ。
呼吸が苦しく、疲弊で身体が重くなる。
その瞬間、魔族の拳が腹に直撃する。
衝撃が内臓に到達し、吹き飛ぶ。
建物に叩きつけられ、崩れる。
瓦礫の中、立ち上がるが足に力が入らず、呼吸は荒い。
――使うしかない。
「——回復」
身の痺れは治まりもう一度動けるようになる。
だが、暫く回復ができない。
そんなこと言ってられなかった。
――来る。
拳が迫っている。
拳を払うように腕を振る。
「——反発」
拳を弾き魔族は体制を崩す。
この隙は二度と生まれない。
足が地面に沈むほどに踏み込む。
全力で頭に拳を叩き込んだ。
....効いたはずだ。だがまだ動いている。
「...しぶとすぎる....。」
ふと、魔族の後ろの瓦礫に剣が突き刺さっているのが見えた。
飛びかかかる魔族を躱し、剣を拾う。
錆びていて切るには心許ない。
だが、構える。
呼吸を整え、一瞬のうちに踏み込む。
魔族は真っ二つに裂かれていた。
魔族が崩れるとともに剣も崩れる。
辺りは静かになり、俺は深く息を吐く。
疲労でその場に座り込みなが再び思い出す。
あの伝説の剣のことを。
壊れることなく"魔"を切り裂く聖剣――。
その名は――
裁剣ヴァーダクト。




