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マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


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第35話 黄金の夜は砕け散る

 ベルンシュタイン家直営喫茶ベルン


「……」


 ローレンツは、腕を組んでいた。

 店内を見渡す。


「……なるほど」


 メイドたちが接客する。


 笑顔。

 距離感。

 空気作り。


「勉強になりますねえ」


 目が細くなる。


「人気店の運営とはこういうものですか」


 胸に抱く野望があった。

 ローレンツにとって、テオドールファミリーというのは道具でしかなかった。

 自分が上に上がるための踏み台として使う道具。

 それをどう使うか悩んでいたが、金になりそうなものが身近にあったのだ。


 数日後。

 喫茶ベルンにほど近い裏通り。


「――ようこそ」


 新しい店が出来ていた。

 店の入り口には露出の高いメイド服を来た大人のお姉さんが立っている。

 まるで娼婦のようであるが、そういう店ではなかった。


 看板には『ベルーン』と書かれている。

 店の運営形態はキャバクラに近い。

 女性が隣に座って接客してくれる。

 これがローレンツの出した答えだった。

 オーナーとしてこの店を経営し、大きな利益を得ようというわけである。

 その利益を使っての政治工作。

 将来的には貴族社会で上に行ってやろうという野望。

 その一歩だった。


 同時刻、喫茶ベルン。

 テオに虫の知らせがあった。


「ん……」

「どうしたの、テオ?」


 エリザベートはテオの顔を見た。


「なんか、悪寒が走ったんだ。猛烈に悪い予感がする」

「季節の変わり目だし、風邪でも引くんじゃないの?気をつけなさい」


(これは風邪の前兆とは違うと思うんだけどなあ)


 テオは予感がしていた。

 そして、ここにローレンツがいないことが、その原因になるのではないかとも。

 正解である。


 数日もすると、ベルーンは順調に利益を上げ始めた。

 学園内のファミリーのアジトでは、構成員たちが高価な装飾品を身に着け始める。

 それがテオの目にも入った。

 テオはブルーノに訊ねる。


「なんか、ここ数日でみんな身なりが良くなったよね」

「なんでも、ローレンツの商売がうまくいっているらしく、そこの手伝いをしている連中の金回りも良くなったようですね。あんなもの、いざという時に身を守るのには役に立たないというのに。ボスの部下だったら、金儲けよりも体を鍛えなければ」


 額に青筋の浮かぶブルーノ。

 若干引きつった笑みのテオ。

 しかし、理由はわかった。

 ちょうどそこにローレンツがやってくる。


「ボス!俺の店に来てください。さあ、今すぐ」


 ローレンツがテオの肩を後ろから無理矢理押す。

 ブルーノが怒る。


「ボスは貴様のくだらん店になど行かんわ!」

「くだらんとはなんだ!筋肉だるまも少しは知恵を絞って金を稼いで来い!」

「誰が筋肉だるまだ!」

「ボス、無視です、無視」


 こうして無理矢理連れ出されるテオ。

 やってきた店は


「ベルーン?」

「はい。この名前ならカスどもが寄ってきませんので!みかじめ料の要求もありません!」

「あの、勝手にうちの名前を――」

「安心してください、ボス!!」


 ローレンツが胸を張る。


「合法です!!」

「合法とか、非合法とかじゃなくて……」


 そこまで言って、テオはローレンツを説得するのは無理だと諦めた。


 店内。


 薄暗い照明。

 豪華な装飾。


「いらっしゃいませ♡」


 きわどい衣装の女性。

 男性スタッフは見たことがある顔ばかり。


「ボス専用席をご用意しております」

「帰る」

「まあまあ!!」


 無理やり座らされる。


「本日のおすすめはこちらです」


 女性が持ってきたメニューを見る。


「……水?」

「特製ミネラルウォーターです」

「馬鹿!ボスにそれはやるな!」


 ローレンツが慌てて女性を叱った。


「?」


 テオの頭に疑問符が浮かぶ。

 その時である。

 大声が店内に響き渡る。


「ちょっと待て」


 奥で揉めていた。


「この請求は何だ!!」


 客が怒鳴る。


「席料、サービス料、雰囲気料、会話料、視線料、呼吸料となっております」

「視線料!?」

「見られたので」

「勝手に目に入るだろう!それに、ミネラルウォーターがこんな値段するなんて!呼吸料もおかしいだろ!」

「困りますねえ、お客さん。店内のものは全てうちの物。空気にだって金はかかるんですよ」


 ぼったくり店であった。


「ローレンツ、あれは?」

「いやー困ったもんです。サービスを受けたのに金を払わないなんて。ささ、ボスはあんなの気にせず酒を飲んでください」

「どう見ても違法だよね?」

「いや、合法です」

「帰る!!ローレンツ、こんなことをしていると、いつか痛い目を見るからね」


 テオは帰った。


「やれやれ、ボスも時々真面目になりますねえ」


 ローレンツはベルンシュタインのくせに、常識的なことを言うテオに呆れた。

 そこに、先ほどの客の対応をしていた構成員がやってくる。


「ローレンツ、最後は泣きながら払ってくれたぞ」

「最初から素直に払えば痛い目を見なくて済むのにな」

「商売って簡単だな」


 ローレンツと構成員は商売を勘違いしていた。

 だが、誰もそれを指摘する者はいない。


(この調子で二号店も出店して――)


 ローレンツが皮算用をしていた時である。

 ドアが開いた。


「おい」


 低い声。


「……あ?」


 全員が振り向く。

 そこにいたのは。


「レオンハルト様!?」


 酔っていた。

 完全に酔っていた。

 目が据わっている。


「いい店じゃねえか」


 ふらふらと歩く。


「誰の店だ」

「……わ、私ですが」


 ローレンツが答える。


「そうか」


 にやりと笑う。


「じゃあ」


 肩に手を置く。


「売り上げの半分、寄越せ」


 沈黙。


「……は?」

「半分だ。みかじめ料としては安いだろう?」


 笑顔だった。


「そんな、売り上げの半分だなんて、仕入れも出来なく――」

「おい」


 次の瞬間。


 ぐしゃあっ!!


 ローレンツが吹き飛んだ。


「ぐぼぁっ!?」

「話が分からねえのか?」


 テーブルが割れる。

 椅子が飛ぶ。


「勝手にうちの金看板ぶら下げやがって。他の組織に安く見られるだろうが!迷惑料もこみじゃ!」


 完全に理不尽だった。

 だが、ローレンツが否定しても殴られるだけである。


「ちょっ――」


 構成員が止めに入る。


 が。


「邪魔だ」


 全員吹き飛ぶ。


 数分後。

 店は壊滅していた。

 女性たちはレオンハルトに連れ去られた。

 別の店で働かせるのだという。


 床。


「……」


 ローレンツが転がっている。


「……なぜ……」


 ぼそりと呟く。


「なぜ……俺がこんな目に……」


 どこかで聞いた台詞だった。


 数日後。


「最近、ローレンツを見ないねえ」


 テオはブルーノに訊ねた。


「何でも、レオンハルト様に借金が出来、支払えなくて追い込まれて飛んだそうです」

「そう……」


(我が兄の追い込みならなあ……)


 テオの顔が引きつる。


 その時、アジトの扉が開く。

 顔をフードで隠した男が入ってきた。

 ローレンツであった。

 ローレンツがテオに縋る。


「助けてください……レオンハルト様は売り上げの半分って言ったのに、全部持って行って、尚且つ金を払えというんです」

「お兄ちゃんを説得できると思う?だから言ったじゃない」


 それからも、ローレンツはレオンハルトを避けながら、学戦生活を送ることになったのであった。


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