表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/41

第34話 上演

 ブルーノはテオやローレンツの前で意気揚々と演劇のことを話す。


「ボスのこれまでの輝かしい人生を演劇として上演します!三日後を楽しみにしていてください!!!」


(この短時間で演劇を決めてきたの!?)

(馬鹿の行動力、侮れん……)


 テオとローレンとは頭痛がした。


 そのころ、カタリナは全てをシナリオ作成に捧げていた。

 テオの話ということで、舞台は学園と決めて、大道具の作成は発注してある。

 あとは、その舞台にあうストーリーを作る。

 やっとめぐってきた復讐のチャンスを逃したくはない。

 その執念が脚本を作り上げた。

 その脚本を読んだ部員は困惑する。


「部長、本当にこれを?」

「そうよ。時間がないわ。はやく稽古しましょう」


 無理だと言いたい部員たちだったが、カタリナの瞳に宿る狂気が怖く、そのまま稽古となった。

 そして上演当日。

 学園内のホールに学生たちが集まっていた。

 ブルーノたちが脅して連れてきた者たちが殆ど。


「ボスの英雄譚、見たいだろう?」

「いえ――」

「なにぃ?」


 ブルーノの眉毛がピクリと動き、目がすっと細くなると、一般生徒は怖くて頷くしかなかった。

 こんな感じで大人数が集められた。

 シャルロッテやエリザベートのように自主的に来ていた生徒もいる。

 それと、教師ではリディア。


 いよいよ幕が上がる。

 圧倒的強さでのし上がっていくテオを演じるカタリナ。

 そして始まる独白。


「女として生まれながら、それを隠して生きていかなければならないなんて。本当は可愛らしいドレスを着たいのに、身に着けているのは返り血のついた制服――」


 その台詞を聞いて、テオは椅子からずり落ちた。

 シャルロッテとリディアは爆笑。

 エリザベートは共感して涙。

 気がつけばテオの目にも涙。

 それが舞台の上のカタリナにも見えた。


(あの野蛮人が私の演技で感動?ウフフ、それほどまでに私の演技は素晴らしいのね)


 勘違い。

 圧倒的勘違い。


 そして、幕が下りた。

 拍手。


「……」


 静かに立ち上がる男が一人。


「……」


 ローレンツだった。

 震えている。


「……ボスを」


 低い声。


「ボスを侮辱するとは……!」


 ゆっくりと舞台を睨む。


「許せませんね」


 完全にキレていた。


「ブルーノ!!」


 振り向く。


「お前、なんてものを見せたんですか!!」

「……んぁ?」


 ブルーノは寝ていた。

 ローレンツに呼ばれて寝ぼけまなこ。


「は……?」


 ローレンツ、固まる。


「……終わったのか?」


 目をこするブルーノ。


「すみませんボス……」


 寝ぼけた声で。


「どうでした?」


 テオを見る。


「……」


 テオは笑った。

 ひきつった笑顔で。


「……いいんじゃないかな」


 沈黙。


「でしょう!!」


 ブルーノ、満面の笑み。


「感動巨編ですから!!」


(こいつ、埋めようかな)


 強い殺意が沸いた。


 その後。

 舞台裏。


「……話があります」


 テオが言った。

 相手はカタリナ。


「なんでしょう」


 静かな声。

 だが。


(まさか怒って私を殺そうと?)


 内心は恐怖していた。


「この演劇の」


 テオはそこで一度区切って大きく息を吐く。


「権利を、買い取る」


 沈黙。


「……はい?」

「上演権、脚本、全部だ。だから、もうこの劇は上演させない」

「……」


 カタリナは黙る。

 テオは続けた。


「代わりに、今後の活動資金は出す」


 ゆっくりと続ける。


「衣装も、舞台装置も、公演費も」


 目をそらしながらテオは言う。

 後ろめたいから。


「全部、面倒を見る」


 真実に近い劇が上演されるのは堪えられなかった。

 だから、金で封殺しようというわけだ。


「つまり」


 カタリナの反応を確かめるように。


「君の」


 だが、真っ直ぐに相手の目を見ることは出来なかった。


「パトロンになる」


 沈黙。

 部員たちがざわめく。


「……本気ですか?」

「ああ」


 テオは答える。

 そして、カタリナの口元が、わずかに歪む。


「……分かりました」


 即答だった。

 数年後、カタリナはテオのバックアップを得て、トップスターへと昇りつめるのだった。

 その裏では、ある一つの作品だけが、永久に封印されたという事実があった。


 帰り道。


「いやぁ!!成功でしたね!!」


 ブルーノが笑う。


「ボスも満足そうでしたし!!」

「そうですね。ブルーノにしてはよくやりました」


 ローレンツも頷く。


「次も期待していてください!」

「やめて……」


 自信満々のブルーノにテオはげっそりした。

 そして、空を見上げる。


「ああ……」


「ああ……俺は何故異世界でこんな目に……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ