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マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


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第32話 甘味戦争・決着

 学園中庭。

 特設ステージ。

 観客席には、生徒たちが詰めかけていた。


「始まるぞ……!」

「お菓子対決……!」


 ざわめき。

 期待。


 そして――


(なんでこうなった)


 テオは審査員席で頭を抱えていた。

 時折聞こえる舌打ちの音。


「何であいつが……」

「御姉様にふさわしくない……」

「殿下のキス。あれが――」

「しっ!聞こえたら殺される。もう、何人か行方不明になっているって噂だ」


 向けられる悪意、敵意で胃に穴が開きそうだった。


「審判を務めるのは――」


 司会の声。


「テオドール・フォン・ベルンシュタイン!」


 大きなブーイング。

 今ならだれがやったかわからないとばかりに、生徒たちから一斉に浴びせられる。


「帰りたい」


 限界だった。


 ステージ中央では、向かい合う二人。


 エリザベート。

 そして、シャルロッテ。


 視線がぶつかる。

 静かな火花。


(空気が重い)


 テオは思った。


(なんでお菓子作りでこんな殺気出てるんだ)


 一方。


 舞台の裏。

 ローレンツは不敵に笑っていた。


「完璧です」


 手の中。

 小さな瓶。

 給仕係としてもぐりこんでいた。


「これを振りかければ――」


 中身は、激辛パウダー。


「あの女は敗北する」


 誰にも気づかれずほくそ笑む。


 つくるお菓子はきしくも同じ。


 ルミナ・コアショコラ――


 伝説の大魔導士、ルミナ・コアが考案したと言われる、フォンダン・オ・ショコラに似たチョコレートケーキ。

 想い人に食べさせると、恋が成就するという言い伝えがある。

 勝負の時間内に完成させるにはもってこいの選定だった。


 二人とも、高貴な身分とは思えない手際で調理していく。


「やりますわね」


 シャルロッテがエリザベートを褒める。

 勿論、表面だけ。


(伯爵令嬢のくせに、この手際の良さは何?)


 若干の苛つきと焦り。


「殿下には負けますが」


 エリザベートも表面だけのお世辞。


(王族なのに料理が出来るとか、おかしくない!?)


 見えない火花が二人の間に生まれては消えていた。


 そして完成。


「それではまず、ローゼンベルク嬢の方を先に」


 ローレンツが皿にのせたルミナ・コアショコラを運ぶ。


(ここだ!)


 改造した制服。袖口から激辛パウダーが零れ落ち、ルミナ・コアショコラに振りかかる。


「……よし」


 満足げに頷く。


「それでは――試食です」


 テオの前に、皿が並ぶ。

 まずはエリザベートの一品。


(普通に美味そうだな)


 一口。


 ――数秒後。


「……ん?」


 次の瞬間。


「ごはぁっ!!?」


 吹き出した。


「辛っ!!?」


 転げ回る。


「なにこれ!!?甘いのに辛い!!?水!水!」


 のたうち回る。

 ざわめく観客。


「どうした!?」

「毒か!?」


 青い顔のエリザベート。


「辛い?そんな……味見した時は何とも無かったのに……」


 対照的なのはシャルロッテ。


「ふふ……」


 シャルロッテが微笑む。


(勝った)


 そう確信していた。

 水を飲んだテオが復活し、今度はシャルロッテの方が運ばれてくる。

 運ぶのはジークフリート。


「……気に入らん」


 視線は、テオとシャルロッテ。


「仲良くなるなど、あってはならん」


 静かに動く。

 シャルロッテの皿へ粉が振りかかった。

 なんと、こちらも激辛パウダーを袖に仕込んでいたのだ。

 シャルロッテがテオに近づき過ぎているので、テオが遠ざかるように仕組んだのだった。


「これでいい」


 テオの前に置かれるルミナ・コアショコラ。


「つ、次……」


 テオが涙目で言う。


「シャルロッテのやつ……」


 一口。


 ――数秒後。


「ごぼぉっ!!?」


 再び吹き出した。


「また辛い!!?なんでだよ!!?」


 転げ回る。


「なんなんだよこの対決!!」


 観客、大混乱。


「……」


 シャルロッテの眉がぴくりと動く。


(……おかしい)


「ボス!!」


 ローレンツが駆け寄る。


「大丈夫ですか!!まさか、激辛パウダーが?」


(こいつ絶対関係ある)


 テオも気づく。


 その時だった。


 ぽとっ。


「……?」


 ローレンツの頭に、何かが落ちた。


「……鳥?」


 上を見る。

 そして。


「うわああああ!!」


 頭を押さえる。


「くそっ……!」


 鳥の糞がローレンツの頭に命中した。

 ローレンツは慌ててハンカチを取り出す。

 拭こうとした、その時。


 ぽろっ。


 小瓶が落ちた。

 床を転がる。


 ころころ。

 ころころ。


 止まった。

 テオの足元で。


「……」


 ラベル。


 “激辛パウダー”


 沈黙。


「……ああ」


 テオは呟いた。


「なるほどな」


 ゆっくりと顔を上げる。


「ブルーノ」

「はい!!」

「押さえろ」

「はっ!!」


 ガシッ。


 ローレンツが捕まる。


「な、何を……!?」

「証拠は出てる」


 テオが瓶を拾う。


「やってくれたな」

「い、いやそれは――」

「言い訳はいい」


 瓶の蓋を開ける。


「ま、待ってくださいボス!!」

「口開けろ」

「嫌です!!」

「開けろ」


 ブルーノが押さえつける。


「やめ――」


 ざばぁっ。


「ごぼぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 絶叫。


 ローレンツ、崩れ落ちる。


「辛ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 地面を転げ回る。


 静寂。


「……」


 テオは息を吐いた。

 みんながそれを見ている時、シャルロッテはジークフリートのところにいた。


「やってくれたわね」

「何がかな?」

「私の動体視力を舐めないで」


 激辛パウダーがかかるのをとらえていた。

 ジークフリートが後ずさる。


「逃がさない!」


 変化したシャルロッテがジークフリートを捕まえ、彼の袖に残っていた激辛パウダーを口に入れた。


「ごぼぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 絶叫。


「両者失格――」


 予想外の結末。


 そしてテオは空を見上げる。


「ああ……」


「ああ……俺は何故異世界でこんな目に……」



 余談。

 ルミナ・コアショコラのレシピは以下の通り。


■ 材料(4人分)


・魔黒カカオ……120g

・妖精蜂の蜜バター……80g

・卵(赤殻)……2個

・精製魔糖……60g

・粉砕小麦粉……40g

・魔素安定塩……ひとつまみ

・液状カカオ精……60g

・魔力結晶微粉……少量

・蜜シロップ……20g


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