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マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


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第31話 対戦相手の理由

 ローゼンベルク家、エリザベート自室。

 静かな夜だった。

 窓の外には月。

 淡い光が、部屋を照らしている。

 エリザベートは、一人。

 椅子に座り、じっと手元を見つめていた。


(……デート)


 思い出す。

 あの日のこと。

 テオと過ごした時間。


 強盗。

 混乱。

 騒ぎ。


 ――そして。


 ふと、胸元に手を当てる。


(軽率だったなあ……)


 学園内の噂、好奇な視線に疲れたエリザベート


「でも……」


(本当のデートならよかったのに……)


 そう思うと、胸が少しだけ、苦しくなる。


「……はあ」


 小さく息を吐く。


(何を考えているんですの、私は)


 頬に手を当てる。

 少し熱い。

 自分の考えを否定する。


「……ありえませんわ」


 首を振る。


「ただの……誤解ですもの」


 そう。

 あれは誤解。

 全部、周囲の勝手な解釈。

 自分は巻き込まれただけ。

 テオも巻き込まれただけ。

 それ以上でも、それ以下でもない。

 ブルーノのお見合いの野次馬であり、男女の感情はない。


(……なのに)


 胸の奥が、ざわつく。

 机の上。

 鏡がある。

 何気なく、視線を向ける。

 そこに映る、自分。

 いつも通りの顔。

 全てはいつも通り。


 ――のはずだった。


(……夢)


 ふと、思い出す。

 あの夢。

 隣にいた、女性のテオ――


(……何を)


 思考を止める。


「くだらないですわ」


 その夜は中々寝付けなかった。


 翌日。

 学園ではお菓子対決を見てみたい生徒のアンケートが実施される。

 即日開票。

 結果が出る。


 シャルロッテ対エリザベート。


 その話はすぐに広まった。


「御姉様、殿下とお菓子対決だそうですね」


 エリザベートにもその情報がもたらされた。


(先ほどのアンケート。私が選ばれた!?)


 驚きを隠しながら、作り笑顔で対応


「殿下には及ばぬまでも、精一杯やらせていただきますわ」


 しかし、次に予期せぬ言葉が。


「“想いを込めた一品”での勝負とのことです」

「……意味が分かりませんわ」


 顔が引きつる。

 昨夜のことが思い出される。

 想いを込めた、想い人、テオの顔。


(想いを込めたで、なんでテオの顔が浮かぶの!!)


 否定。圧倒的全否定。

 あふれ出るノルアドレナリンをせき止める。

 セロトニン工場のラインをフル稼働。

 冷静さカムバック。


「辞退なさいますか?」


 エリザベートは、黙る。


(辞退)


 その選択肢。

 普通なら、それでいい。

 こんなもの、受ける理由はない。

 だが、相手はあのシャルロッテ。

 ベルンでのやり取り。

 あの、微笑み。


(……あの人)


 テオの顔が浮かぶ。


(悪魔、逃げたらもっとひどいことに)


「……」


 静かに立ち上がる。


「受けますわ」

「流石、、御姉様」

「ええ」


 迷いはなかった。


「理由を伺っても?」


 一瞬だけ、言葉に詰まる。


「……別に」


 顔を逸らす。


「逃げる理由もありませんもの」


 逃げてはいけない理由しかなかった。

 だが。

 それ以上は言わない。


(負けるわけにはいきませんわ)


 理由は分からない。

 けれど。

 負けたくない。

 それだけは、はっきりしていた。


 同時刻。

 学園の別の場所。


「……お菓子対決?」


 ローレンツは目を細めた。

 掲示板。

 そこに貼り出された紙。

 お菓子対決の詳細。


 そして――


「審査員:テオドール・フォン・ベルンシュタイン」


 見慣れた名前があった。


「なるほど……」


 口元が歪む。

 悪事を考えるために脳がフル回転した。


「これは……」


 ゆっくりと呟く。


「面白くなりそうですね」


 視線を上げる。

 中庭の方向。

 その先にいるであろう人物を思い浮かべる。


「ボスが審査員、殿下と姉御の勝負」


 小さく笑う。


「つまり」


 指先で紙を叩く。


「出世のチャンスだということ」


 ローレンツはテオを踏み台にするつもりであった。

 だが。

 ローレンツは気づかない。

 完璧な計画が出来上がったと思っていた。

 今まで失敗しかしていないのに。


「ならば」


 くるりと踵を返す。


「準備に取り掛かりましょうか」


 向かう先は一つ。

 シャルロッテ殿下の御許。


「殿下に取り入る好機……」


 歩きながら、思考を巡らせる。


「ただ勝つだけでは意味がない」


「俺が勝たせることに意味がある」


 そのための“秘策”。


「ふふ……」


 笑みが深くなる。


「用意しましょう」


 誰も見ていない廊下。

 静かな足音。

 その背中は。

 完全に“やらかす者”のそれだった。


 またまた同時刻。

 演劇クラブの部室だったアジト。


「……ん?」


 テオは手を止めた。

 何か声が聞こえた気がしたのである。。


(なんだ……?)


 ぞわり、と。

 背筋を何かが走った。

 理由は分からない。

 だが。


(嫌な予感しかしない)


 妙な寒気。

 心の奥がざわつく。


「どうしたんですか、ボス」


 ブルーノが不思議そうに見る。


「……いや」


 首を振る。


「なんでもない」


 そう言いながらも。

 胸の奥の違和感は、消えない。


(……絶対ろくなことにならない)


 根拠はない。

 だが。

 こういう時の予感は、大体当たる。


「ボス?」

「……気にしないで」


 その背中には、わずかな緊張が残っていた。

 そして。

 その予感は――


 確実に、現実となる。

 直後、構成員によって、お菓子対決の審査員であるという情報が持ち込まれたのだった。



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