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マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


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第30話 戦争の足音

 生徒会室。

 学園の中枢たるその部屋には、異様な空気が漂っていた。


 沈黙。


 誰も口を開かない。

 理由は一つ。

 シャルロッテである。

 椅子に腰掛け、頬杖をついている。

 その表情は――


 笑っている。


 だが。

 目はまったく笑っていなかった。

 ハイライトが消えたかのような、やや病的な視線の定まらぬ目。

 それは、不機嫌に悩んでいる証。


(あ、これやばいやつだ)


 誰もが思った。


「……デート」


 ぽつりと呟く。

 静かな声。

 だが、部屋の温度が一瞬で下がる。

 まるで南極。


「いいわよね」


 くすりと笑う。

 誰に語り掛けているのかわからず、反応に困るメンバーたち。


「青春って」


(全然よくなさそうだ)


「殿下、その……」


 書記が恐る恐る口を開く。


「何か問題が……?」

「別に」


 即答。

 その別にという一言が、他を威圧する女王の圧。


「何も問題なんてないわ」


 にっこり。


「ただ」


 一瞬、間。


「少しだけ」


 視線が鋭くなる。


「気に入らないだけ」


(その理由を言って欲しいのですが……)


 とは心の声。

 言えぬ雰囲気。

 再びの沈黙。


 誰もが視線を逸らす。

 巻き込まれたくない。

 その一心である。


「……へこませたい」


 ぽつりと漏れる本音。


「は?」


 思わず会計が声を漏らした。

 ぽっちゃり体型の男子。

 バルタザールである。


「今、なんと……?」

「エリザベート・フォン・ローゼンベルクを、へこませたいの」


 はっきり言った。


(ああ、彼女の学園生活終わった)


 全員が思った。


「理由をお聞きしても……?」


 風紀委員長が慎重に尋ねる。


「なんとなく」

「なんとなく!?」


 思わず声が裏返る。


「だって」


 シャルロッテは足を組む。


「気に入らないんだもの」


 それだけだった。


(理不尽……!)


 全員の心が一つになる。

 しかし、気に入らないのはテオと仲が良いからであった。

 シャルロッテの性格が、それを言うのを邪魔した。


「ですが、殿下」


 書記が必死に言葉を選ぶ。


「ローゼンベルク嬢は特に規則違反をしているわけでは……」

「知ってるわよ」


 あっさり。


「だから困ってるの」


(なんて性格の悪い!!!)


 再び沈黙。

 誰かが何かを言わなければ。


 だが。


 誰も言いたくない。

 シャルロッテの機嫌を損ねれば、標的が自分に変わるから。


「……では」


 そこで、バルタザールが手を挙げた。


「提案がございます」


(やめろ)


 全員が思った。


「お菓子作り対決など、いかがでしょうか」

「……お菓子?」


 シャルロッテが首を傾げる。


「はい」


 バルタザールは頷く。


「学生同士の勝負として自然であり、かつ――」


 にやりと笑う。


「“格”が出ます」

「なるほど」


 シャルロッテの目が細くなる。


「貴族の令嬢なんて、自分で料理などしないもの。それに引き換え、私は料理長仕込みの宮廷料理をつくる技量がある。何でもできる私と、何もできない彼女との比較。悪くないわ」

「その通りです」

「……いいわね」


 ゆっくりと立ち上がる。


「採用するわ」


(採用されたあああああ!!)


 全員の心の叫び。


「テーマは?」

「自由でよろしいかと」

「いいえ」


 シャルロッテは微笑む。


「決めるわ」


 一歩、前に出る。


「“想いを込めた一品”」


(怖い)


「勝敗は?」

「もちろん――」


 シャルロッテは笑う。


「私たちに共通の友人がいるじゃない」


(ああ、あいつか……)


 誰もがテオの顔を思い浮かべる。

 少しの同情。


「準備を整えなさい」


 振り返る。


「でも、どうやって二人の対決にするの?」

「秘策があります」


(バルタザール、お前もか!!!)


 最近、学園内では秘策というのはろくでもないことの予兆を示す言葉となっていた。

 全員が悪い予感。


「お菓子対決を見てみたい生徒のアンケートを取ります」

「それで?」

「票はこちらで適当に捏造して、結果を公表します。つまり、最初から殿下とローゼンベルク嬢の対決は確定」

「いいわね。すぐに準備しなさい」


 その声は。


 完全に“戦争”のそれだった。

 出ていくシャルロッテ。

 扉が閉まる。


 静寂。


「……やっちまった」


 バルタザールが呟く。


「お前なにしてくれてんだ!!」


 書記であるカスパル・フォン・ノイラートが詰め寄る。


「いやでも、あの流れで何か提案しないと……」

「だからって菓子対決!?」

「……死人は出ませんよね?」


 風紀委員長のディートリヒが真顔で言う。


「お菓子で死なないだろ」

「まさかな……」


 乾いた笑い。


「出ないといいな……」


 全員がため息をついた。

 その頃。

 何も知らないテオは。

 ベルンで皿を運んでいた。


「ああ」


 天井を見上げる。


「ああ今日は平和だなあ。こんな日が続けばいいのに」


 フラグを立てていた。

 こうして、新たな戦いが、始まろうとしていた。


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