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マフィアの息子ですが、普通に学園生活を送りたい ~なぜか学園にファミリーが出来ました~  作者: 工程能力1.33


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第29話 余波とフォーク

 ブルーノのお見合いの翌々日。

 ベルンシュタイン家直営喫茶ベルン


 店内は、いつも通りの賑わい――


 のはずだった。


「……なんで増えてるんだ」


 テオは呟いた。

 視線の先。

 客席。

 明らかに“野次馬”の数が増えている。

 ひそひそ声。


「一昨日の……」

「デート……」

「やっぱり……」


(やっぱりってなんだよ)


 心の中でツッコむ。

 客はテオとエリザベートが一緒に働いている姿を見に来ていた。

 貴族の子供たちなので、金は持っている。

 野次馬根性で来店するくらいは、全く問題が無かった。

 見られることと引き換えの繁盛。


 誤算ではあったが、テオ以外は嬉しい悲鳴。

 なお、エリザベートとアルフレッドは歩合。


「いらっしゃいませ」


 テオは平常心、平常心と言い聞かせ、淡々と接客をこなす。


(帰りたい)


 だが、逃げ場はない。

 むしろ。


「――指名よ」


 最悪の来客が来た。


「……お帰りなさいませ、お嬢様。でも、帰ってください」


 振り向きもせずに言う。


「ひどいわね。接客態度がなってないわ」


 シャルロッテだった。

 優雅に席に座る。

 当然のように指名。


「客に向かって帰れとは何事かしら」

「生憎と満席でして」

「席に座っているんだけど」

「ええ……」


 頭を抱える。


「それで?」


 シャルロッテは頬杖をついた。


「デートは楽しかった?」

「してません」


 即答。


「噂では、ずいぶん仲睦まじかったと聞いたけど?」

「噂は噂です」

「そうね」


 くすりと笑う。


「でも、火のないところに煙は立たないものよ?」

「いや、散々煙は立ちました」


(すべて誤解なんだけど……)


 入学から今までの事が思い出される。


「ボス、それは違います」


 横から声。

 ローレンツだった。

 強盗にやられた傷が癒えてないため、包帯姿である。


「何がだ」

「火はあります」

「ない」

「あります」

「ない」

「あります」

「帰れ」

「これは重大な問題です」


 ローレンツは真顔で続ける。

 この時のローレンツは嫉妬の炎で焼け焦げていた。


(俺がボコボコにされているのを助けず、伯爵令嬢との仲を進展させやがって)


 そんな嫉妬と逆恨みから、シャルロッテ殿下の前で醜聞を広げようとしていた。


「ボスが貴族令嬢と密会し――」

「してねえ」

「しかも二人きりで食事を」

「お前もいただろう」

「奮闘むなしくやられて、病院に担ぎ込まれました。結果的に二人きりです」


 ここでローレンツはためをつくる。


「これは不純異性交遊です」

「だから違うって言ってんだろ」


 カンッ。


 乾いた音。

 次の瞬間。

 ローレンツの顔のすぐ横。

 壁にフォークが突き刺さっていた。


「……」


 空気が止まる。

 ローレンツのほほに赤い筋が出来る。

 そして、フォークの先。

 黒い小さなものが貫かれている。


「……蝿?」


 テオが呟く。

 シャルロッテは優雅に紅茶を飲んだ。


「不衛生ね」

「危ないですよ」


 無視。


「それに――」


 シャルロッテは微笑む。


「不純異性交遊も、同じくらい不潔だと思わない?」


 視線がテオに向く。


(嫌疑がかかってるのかよ……)


「ひっ……!」


 ローレンツが腰を抜かす。


「い、今のは警告ですか……?」

「ええ」


 にっこり。


「次は外さないわ」

「当たってたら死んでた!!」


 店内の視線がさらに集まる。


「今の見た?」

「やっぱり……」

「関係あるんだ……」

「殿下が怒っているということは、食事以外にも何か……」


(なんで強化されるんだよ)


「……で?」


 シャルロッテが話を戻す。


「本当に何もなかったの?」

「なかった」

「本当に?」

「本当に」

「ふーん」


 興味なさそうに言う。


 だが。

 目は笑っていなかった。


「まあいいわ」


 立ち上がる。


「どのみち」


 一歩、近づく。


「あなたには、いずれ責任を取ってもらうから」

「何のだよ」


 思わずぞんざいな言葉になるテオ。

 しかし、シャルロッテもそこは咎めない。


「全部よ」


 バンッとテーブルを叩くと、シャルロッテは立ち上がる。


(怖い)


 店内全員の意見が一致した。


 去っていくシャルロッテ。

 残された沈黙。


「……ボス」


 ローレンツが震えながら言う。


「完全に狙われてます」

「知ってる」


 ざわめく店内。

 視線。

 噂。

 誤解。


 テオは天を仰いだ。


「ああ……」


「ああ……俺は何故異世界でこんな目に……」


 誰も答えない。


 ただ。


 誤解だけが、さらに強くなっていた。


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