↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/76

第七節「年若の長」

黒銅の民が何者かもよくわからないのに、長(おさ)ときたか。

コッパーは深く座り直し、息を吐いた。


「コッパー様はいつも先頭で、

 この国を眺めておられました。

 お若いのにその落ち着いた様といったら……」

「それで、長(おさ)と思った?」

「え?……いやいや、まさか。

 長(おさ)の装束(しょうぞく)は違いますからね」


シャクカディは、お戯(たわむ)れを言われた、というように手を扇(あお)ぎ言った。


「ご着用になられているではないですか」


コッパーは思わず袖を振り上げる——のをぐうっと、堪(こら)えた。


「その黒い装束でいらっしゃると、

 廊下の端からでも非常に目を引きまして、

 皆、身が引き締まったものですよ」

「一人で……いたのか」


まだ、その青年を自分だと断じていいかわからない。


「いいえ。常に……10はいたのではないですか?

 その中心にいらっしゃいました」

「それは……神下を連れて?」

「それはどうだったでしょう。

 ほとんどは黒銅の民の方々でいらっしゃったかと」


黒銅の民というものは、通常はぞろぞろとまとまって歩き回っていたものらしい。


「勇壮(ゆうそう)なる年輪(ねんりん)を感じる黒銅の民の方々の中で 

 若いコッパー様は目立ちました。

 何かひとかどの才能をお持ちの方なのだろう、

 と私は覚えていたのです」


年上のものを引き連れ、辺境な異国を歩く年若い青年。

それは……どういう立場の者なのだ?


「何をして歩いていたんだ?……か、覚えているか」

「はあ、そこまでは……」

「他に思い出せることは?」

「う〜ん……」


シャクカディは、杖に込めていた力を抜いて天井を仰(あお)ぐ。


「強いて言えば……

 厚着をした覚えがありますから、冬かその終わり。

 それで……宮を見回りながら、

 コッパー様は、何かを……黒銅の民から、

 なにかを教わっているように?見られました」

「それは……何と言う者に?」

「わ、わかりません。ええ、口髭が見事だったような」


彼らは対象の大多数も一人一人も黒銅の民と呼ぶ。


「今、コッパー様とお呼びできるのが嬉しいくらいで。

 本来は黒銅の民の御名(みな)など知らされませんからね」


そこからシャクカディはしばらく眉根をこすったりしていたが、これ以上思い出せることはないようだ。


正直、時期と姿はかなり一致している。

青年期から顔立ちは特に変わっていない自覚もある。

当時の様子も、自身の過去に対する考え——高貴な出自という推察——の補強となりそうだ。


自然、コッパーは、語られるその青年こそが自分なのではないかと揺れ始めているのだが、確信に至るには結局、自分自身の記憶が必要だ。

真にせよ偽にせよ、これ以上なくもどかしい。


やはり天使にはきっちり会う必要があるだろう。

もし本当に過去自分がこの国に来ていれば、

この国に招かれた目算もわかる。


「また何かあれば言ってくれ」

「承知いたしました」


そうして席を立とうとするコッパーに、シャクカディは自身も腰を上げつつ、一つ、追い縋(すが)った。


「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。