第七節「年若の長」
黒銅の民が何者かもよくわからないのに、長ときたか。
コッパーは深く座り直し、息を吐いた。
「コッパー様はいつも先頭で、
この国を眺めておられました。
お若いのにその落ち着いた様といったら……」
「それで、長と思った?」
「え?……いやいや、まさか。
長の装束は違いますからね」
シャクカディは、お戯れを言われた、というように手を扇ぎ言った。
「ご着用になられているではないですか」
コッパーは思わず袖を振り上げる——のをぐうっと、堪えた。
「その黒い装束でいらっしゃると、
廊下の端からでも非常に目を引きまして、
皆、身が引き締まったものですよ」
「一人で……いたのか」
まだ、その青年を自分だと断じていいかわからない。
「いいえ。常に……10はいたのではないですか?
その中心にいらっしゃいました」
「それは……神下を連れて?」
「それはどうだったでしょう。
ほとんどは黒銅の民の方々でいらっしゃったかと」
黒銅の民というものは、通常はぞろぞろとまとまって歩き回っていたものらしい。
「勇壮なる年輪を感じる黒銅の民の方々の中で
若いコッパー様は目立ちました。
何かひとかどの才能をお持ちの方なのだろう、
と私は覚えていたのです」
年上のものを引き連れ、辺境な異国を歩く年若い青年。
それは……どういう立場の者なのだ?
「何をして歩いていたんだ?……か、覚えているか」
「はあ、そこまでは……」
「他に思い出せることは?」
「う〜ん……」
シャクカディは、杖に込めていた力を抜いて天井を仰ぐ。
「強いて言えば……
厚着をした覚えがありますから、冬かその終わり。
それで……宮を見回りながら、
コッパー様は、何かを……黒銅の民から、
なにかを教わっているように?見られました」
「それは……何と言う者に?」
「わ、わかりません。ええ、口髭が見事だったような」
彼らは対象の大多数も一人一人も黒銅の民と呼ぶ。
「今、コッパー様とお呼びできるのが嬉しいくらいで。
本来は黒銅の民の御名など知らされませんからね」
そこからシャクカディはしばらく眉根をこすったりしていたが、これ以上思い出せることはないようだ。
正直、時期と姿はかなり一致している。
青年期から顔立ちは特に変わっていない自覚もある。
当時の様子も、自身の過去に対する考え——高貴な出自という推察——の補強となりそうだ。
自然、コッパーは、語られるその青年こそが自分なのではないかと揺れ始めているのだが、確信に至るには結局、自分自身の記憶が必要だ。
真にせよ偽にせよ、これ以上なくもどかしい。
やはり天使にはきっちり会う必要があるだろう。
もし本当に過去自分がこの国に来ていれば、
この国に招かれた目算もわかる。
「また何かあれば言ってくれ」
「承知いたしました」
そうして席を立とうとするコッパーに、シャクカディは自身も腰を上げつつ、一つ、追い縋った。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか!」




