第五節「光を向く窓」
……歩みが遅い。
プラムバム神官などに着いて行った時に比べ、壁の染みをも目につく進みだ。
まあ……そもそも体格が違いすぎる。
コッパーの一歩で、この神下の二歩だろう。
神下が一所懸命進んでも、ゆうゆうと追いつけてしまう。
焦れる気持ちはあるが、なまじ急かして会話が発展するのも避けたかった。
そうして、のったりのったり着いていくようにしていると、退屈になってきた意識が、周囲の方に向いていく。
白壁のヒビ、床の割れ、天井の低さ。
窓からの光。
中央棟に渡り少し歩いたところ。
まだ数えられるとはいえ何度も通ったはずの廊下で、コッパーはようやく気付く。
……明るすぎる。
窓が全て南向きなのだ。
南向きの窓自体は別に珍しいことではない。
もっとも強く光を入れられる構造だ。
何故それが奇妙か……。
コッパーが今歩く廊下には、天井に届くほどの縦長でありながら、片腕を通す程度の幅の窓が、等間隔で並んでいる。
ぼんやりと見れば街全体を見渡せる柵のようなこの窓から初日、コッパーは街の屋根を覗いたものだ。
染料も混ぜない白壁に気を取られ、目についていなかったのは、むしろ内側……。
廊下、その縦長の窓の反対側には部屋が並ぶ。
東西に真っ直ぐかかる廊下から、北方向にいくつもの枝分かれをし、それぞれが袋小路を作って、各部屋に東向きの扉を据えつけている。
そして、廊下に面した南向きの壁に、厚手の硝子をしっかり嵌めた窓が、腰あたりから天井まで、格子のごとくきっちりと配されている。
別の階であれば廊下にそのまま面した扉がついていたのは見た。礼拝前に見たプラムバム神官の居室などはそうだ。
そこも、南を向く扉の周囲を囲むように窓が配されている……。
なぜこんなに面倒な構造なのだ。
窓の意味は採光だろう。
廊下に引く最大限の光が、部屋にできるだけ入るように工夫されていてのこの構造だ。
だが、だとすれば……最初から廊下を挟まず、部屋を南側に付けておけば良い。
……なぜそれがこんなに気にかかるのか、コッパーは、それを思い出した。
黒銅の民の部屋の窓からは、街が見えた。
エラメンタ神国は決して、南に部屋を置くことを知らないわけではない……。
のったりとした歩みが、幾番目かの袋小路の前に差し掛かった。
西に傾き、強くなる日で、輝く白壁。
それでも奥に至るまでに、光は力を失っていく。
袋小路の突き当たり。
壁の他には何もない。
その薄闇から……目が離せない。
頭の中で、何かがぴちち……と弾け千切れる物音がする気がして、コッパーはそれに耳を澄ませるように静止した。
その仄かな痛みが、コッパーに伝える。
本当に奇妙なのは、南側ではない。
窓を造らず、決して見えない、北の壁の向こう。
そこに、何かを、隠している。
こういうときに図解ってやりたいなって思います
伝わるといいな




