第一話 八節
豊藤の話が終わる頃には舞妓たちがぽつぽつと列になり始めていた。
二人も豊藤に深々と礼をして自分たちの位置へつく。
「羽根駒さん姉さん。どう思わはります?水曜日のこれと…あの話。関係おすやろか?」
華宮耶がひそひそと言う。
「わからへん…でも、うちは雪乃さん姉さんがあないなことをしはったとは思えへん。
何か事情か誤解があったはずや。」
二人の視線はまたしても、舞妓の列にぽかりと空いた一人分の隙間に注がれている。
「雪乃さん姉さんに話を聞けたらええんやけど…」
「難しいやろなぁ。ほんまにお忙しいお人やさかい。それに…うちらみたいな若いもんが気安く話せるお方でもおへんし……」
そこまで言って、羽根駒は更に一段声を下げる。
「第一、どう聞くつもりや?まさか尾けましたとは言われへんやろ。こんなふうにこそこそ嗅ぎ回るのんも、ほんまはあかんことなんやえ。どこから誰にどう伝わるか、わかったもんやないんやから。」
しばし間が開いた後、羽根駒がぽつりと言った。
「うちら、そういう話を聞いたばかりやないの。」
二人揃って口を噤む。
ぽかりと空いた隙間を見つめて考え込んだ。
あまりに深く考え込み過ぎた。
「お二人さん。えらい余裕どすなぁ。あんさんらの踊りはよっぽど上手なんやろなぁ。」
気づくと目の前にお師匠が立っている。
その視線は氷のように冷たく鋭い。
その日の稽古は苛烈を極めた。




