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第一話 六節
羽根駒と華宮耶の二人は、菓子屋を後にした後、そのまま稽古場へ向かった。
今、屋形へ帰るとお母さんの雷が怖い。
それよりも稽古場で踊りをさらっているうちに稽古の時間になったと言い訳する方が良い。
「お腹…空きおしたなぁ。」
華宮耶が切なそうに腹を押さえて呟いた。
「誰のせいやと……思てはるの……」
羽根駒が呆れて言い返す。
その声にも覇気はない。
その時、稽古場の方から凄まじい速度で奏でられる金毘羅船々が聞こえてきた。
「これは…」
「豊藤さん姉さんやな。」
噂話と言えば豊藤である。
二人は顔を見合わせた。
その嵐のような金毘羅船々は正確ではあった。
しかし、色気も情緒も置き去りにして、ただひたすらに速かった。
恐るべき技巧ではあるが、芸妓の芸としては無用の長物である。
「雪乃ぉ?なしてそないなこと訊かはるの?」
豊藤が素っ頓狂な声を出す。
「へぇ。実は……その……」
羽根駒が躊躇いながらも、事情を話そうとするのを遮って、
「せやなぁ。あん子ぉがまだあんたらくらいの頃やったかなぁ……」
勝手に喋り始めるのであった。




