第一話 二十五節
次の水曜日の夜、羽根駒と華宮耶、そして大和田の三名は座敷が引けたのちに八坂神社へ向かった。
石段を登り、本殿へ向かう道の途中に提灯が浮かんでいる。
ぼんやりと照らされているのは雪乃であった。
「雪乃。一人で来はったんか。」
大和田が言うと、
「へぇ。随分と無理を聞いていただきおした。」
と雪乃は答えた。
しばらく沈黙が流れる。
次に口を開いたのも雪乃であった。
「どうどすか?五年前のあの日、何があったのか、何かわかりおしたか?」
ゆらりと袂から扇を取り出し、口元を隠すように広げる。
「今更何を調べようと遅おすえ。あの死に損ないの幽霊を追いかけるんはやめよし。うちは来週にも旦那はんに囲われる。そうなれば、うちにはもう手出しでけへん……。あんたらなんか握り潰されてお終いどす。諦めよし。」
雪乃の言葉は、羽根駒が思い描いていた雪乃とはあまりにもかけ離れていた。
「なんやの?それとも、うちの口から真実を聞けば満足しはるんかいな。」
雪乃はそう言って、扇で口元を隠したままくすくすと笑う。
「そうどすえ。
うちが……うちがあの子の背中を、この手で押してやりました。
嫉妬やおへん。
ただのお遊びどす。
調子に乗って、うちと肩を並べたような顔をしてはったさかいな。」
雪乃はそこまで言うと、扇を更に持ち上げた。
「あの子の落ちていく顔は、ほんまに見物やったえ。」
羽根駒は、雪乃の扇を持つ指先が白くなっているのに気がついた。
「うちが引き立てた子どす。
終わらせるんもうちの役目やった。
それだけのことどす。」
雪乃はまた、扇の奥でくすくすと笑った。




