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舞妓探偵  作者: 掛出すみれ
雪乃編
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第一話 十四節

その日の稽古の後、羽根駒と華宮耶は、豊藤の妹筋に当たる藤歌に声をかけた。

豊藤の住まいを訊くためである。

ところが藤歌は、豊藤の住まいを教える前に、今朝の味噌汁の具と、豊藤がいかに朝に弱いかと、屋形の猫がいかに賢いかを一通り喋った。

ようやく話が豊藤に戻ったところで、藤歌は目を丸くした。

「や、行かはるの?」

そう言った藤歌の表情の意味に二人が気づくのはもうしばらく経ってからだった。


豊藤の長屋は祇園の町のかなり奥まった路地にある。

薄暗い路地を抜けて、おそるおそる戸を叩くと、

「どちらはん?」

豊藤が弱々しく言いながら戸を開けた。

それから二人が話を切り出すまでにはかなりの時間を要した。

「あかん。二日酔いや。お水おくれやす。茶碗はそこに転がっとるさかい。」

「ついでやさかい、流しを掃除しといておくれやす。」

「ついでやさかい雑巾掛けも。」

「ちょぉ、紐持ちしてんか。」

「なんか呼ばれはる?や、お味噌があらへん。ついでやさかい買うてきておくれやす。」

ようやく豊藤が

「や、ほんま助かったわ。藤歌はズボラやさかい、ちっとも顔出さんのや。ほんで、あんたらの用事いうんは?」

と、煙管をぷかぷかと吹かしながらケラケラと笑う頃には、二人はげっそりとしていた。

羽根駒は「そらそうどす」と言いたいのをぐっと堪えて本題を切り出す。

「へぇ。雪乃さん姉さんが綾緒さんを突き落としたゆう話。最初は誰から聞かはったんどす?」

そう言った瞬間、ぷかぷかと煙を吐き出していた口がきゅっと引き結ばれる。

表で誰かが咳をした。

豊藤が立ち上がり、

「羽織、持ってきておくれやす。」

と声を落とした。

その目は戸口や脇の壁へ落ち着きなく走っている。

「あんたら、噂には耳もおすんやえ。」


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