第一話 十二節
翌日、華宮耶が目を覚ますと、既に羽根駒の布団は折り目正しく畳まれて、部屋の端に寄せられていた。
羽根駒は別のお座敷から、華宮耶が寝た後に帰ってきたにも関わらず、もう動き出しているらしい。
華宮耶が、羽根駒の姿を探すかのように階段を降りて行くと、羽根駒は居間で何やら書き物をしていた。
「おはよう……また、お国元に?」
華宮耶が問うと、羽根駒は文に視線を落としたまま、少し苦く笑った。
「おはようさん。まぁ返事が来た試しはおへんけどな。」
「なんで……そんなもん書くんや。返事もおへんのに。」
華宮耶の顔に表情はない。
寝癖の付いた髪をそのままに、後れ毛が唇にくっついている。
羽根駒はそんな華宮耶を見上げてぼんやりと呟く。
「なんでやろなぁ。」
羽根駒の顔には穏やかな微笑みが浮かんでいた。
沈黙のままに、羽根駒は華宮耶の髪を整え、解けた襦袢の紐を結び、襟を正し、頬に残った枕跡を親指の腹で擦った。
華宮耶はされるがまま、羽根駒の指が頬に触れたときだけ、満足げにゆっくりと瞬きをした。
ひと通り身なりを整えると、羽根駒は一転して厳しい目を向けた。
「それよりあんた、おこぼが汚れておしたえ。どこ行ったんや。」
「そうやった。姉さんに言いたいことがおしたんや。」
華宮耶が目を見開いて、勢い込んで喋り始めた。
「雪乃さん姉さんが綾緒さんを後ろから突き飛ばしたいう話。
うち、それは変やと思うんどす。」




