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一番星は追放された宮廷魔法使いに恋をする  作者: 海野豹香


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魔族


「ぎ、ぎょえぇぇえええ!!」


私は今、魔法の修行中だ。修行とは至って簡単、森の中に隠れた師匠を見つけ出すこと。でも、師匠があちこちに張り巡らした罠に引っかかっているのだ。


ロープが巻きつき木に宙吊りにされてしまった。この罠にひっかかるのは今日でもう10回目。


何処からともなく師匠が現れる。

「まーた引っかかってやんの。このくらいのトラップ、魔法使わずに回避できないと」


「はぁ...はぁ...魔法の修行って言ってたのに...こんなかくれんぼで本当に魔法が使えるようになるんですか...」


「最初に言っただろ。...お前は十分な魔力があるにも関わらず、まだそれを使いこなせていない。こうして手探りで力をコントロールする術を探すしかない。それに、魔法使いに必要なのは体力と根性だ。もう一回」


師匠が指を鳴らすとロープが消えて、私は地面に落ちた。


「ぐぇ!!いったーい」


いつの間にかいなくなった師匠を探しに森を彷徨う。もう何日目だろうか。師匠を見つけることができぬまま数日が経った。


「ん...?あれはもしや...」


いつも師匠が身につけている黒いローブの端が木の陰から見えている。「見つけた!」と叫ぶと同時に思い切り布を掴んだ。



「なんだ貴様は......」


師匠とは全く違う声に恐る恐る顔を上げると、体が硬直した。魔族の象徴である紅い瞳......!


「魔族...っ!」


私は急いで引き下がり距離を取るが、その魔族は様子がおかしい。よく見ると脚から血が滲んでおり、動けないようだった。


「...どうやら俺もここまでか。人間、この通り俺は手負いだ。はやく殺せ」


「...その怪我、どうしたの」


「はっ、お前には関係ないだろう」


...どうしよう。私は魔法が使えない。でもそれを知られたら、すぐに殺されてしまう。


魔族が脚を引き摺りながらこちらを向く。蛇に睨まれたカエルになったように、私は恐怖で立ち竦んでしまった。


「...何もしないならば俺が殺してやろう」


そう言って魔族が手を前に出したときーー、


「うちの弟子に勝手に絡まないでくれないか」


魔族の腕が宙を舞う。


瞬く間にまばゆい光に包まれ、魔族は塵となっていった。圧倒的な強さ。これが、宮廷魔法使いーー。あまりの凄さに呆気に取られていたが、我に返る。


「...師匠!」


「大丈夫か?...遅くなってすまなかった」


私の頭にポンと手を置いて一息つく。どうやら急いで駆けつけてくれたようで、汗だくになっていた。


「...怖い思いをさせてしまったな。...?おい、ステラ...?」


俯く私の顔を覗き込んだとき、私は師匠のローブをしっかり掴んで言った。


「見つけました!!!」


「...は?」


「これでこのかくれんぼ修行は合格ですよね!?」


「......はぁぁ」


師匠の長いため息が響き渡った。



----------



森の中に流れる川辺で、ルーカスとステラはひと休みしていた。


「今回は運良く生き残れたが、魔族と邂逅したときは迷わず逃げろ。今のお前では魔族を殺す魔法を使うことはできない」


「...はい」


「今まで魔族との実践経験は?」


「...ありません。私、魔法学院では落ちこぼれすぎて授業にも出られなくて...魔族を見たのも、今日が初めてです。...あの紅い目で見られると、わかってはいたけど足がすくんでしまって......」


「そうか...じゃあクソ学院のつまらん授業より余程役に立つ授業をしてやろう。そもそも魔族はなぜ生まれるか?」


「それくらい知ってます!西の果てに住む大魔女と契約した魔法使いが魔族になるんでしょう...」


「そうだ。...大魔女ユラはかつて宮廷魔法使いだった」


「大魔女が宮廷魔法使いだった...!?」


「ああ。昔は善良な魔法使いだったが、いつしか魔法を自分の欲のために使うようになり、宮廷から追放されたんだ。西の果てに逃げた挙句、今や魔族を次々と生み出し好き放題だ。闇の力を求めた魔法使いがユラと契約し、我を忘れて人を襲う...」


「あの魔族は...我を忘れているようには見えませんでした。あの怪我も...何があったのでしょうか」


「さぁな。討ち損じか魔族同士で争ったか...結局ユラの言いなりになってしまった愚か者だ。一度魔族になってしまった者は、元に戻らない。余計な情は捨てろ」


「はい...」


ルーカスの顔は、今まで見たことがないほど冷たかった。ステラは消滅する魔族の顔を思い出す。


「あれが...魔族......」


川の向こうをぼんやり眺めるステラの手を引いて彼女を立ち上がらせたルーカスは、「よし、次の修行だ」とにんまり笑った。


「そんなあ...」げっそりした顔のステラは師の後についていくのだった。








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