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一番星は追放された宮廷魔法使いに恋をする  作者: 海野豹香


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23/25

十年後の返事


あの災厄の日から10年ーー、

フードを目深に被った女性が、時間が止まったままの町を歩いていた。あたりは10年前のまま、誰一人として動かない。

彼女は瓦礫の上を進む。高く聳える瓦礫の上には、かつて大賢人と謳われた大魔法使い、ルーカスが眠るように横たわっていた。彼のおでこに顔を近づけ、彼女は静かに言う。


「...やっと貴方を目覚めさせることができます。...ルーカス様、起きてください」


彼女は空に向かって光を打ち上げた。まるで雪のように光が地上へと降り注ぐ。その光が人や動物に触れると、息を吹き返したようにすべてが動き出した。


「......ん...ステ...ラ...?」


ルーカスの目が開いて、ステラをとらえた。降り注ぐ光の粒のなか、ステラは涙を流しながら笑った。


「...はいっ!おはようございます」


そう言って彼を抱きしめる。ルーカスは荒れた町に驚いたが、何よりも目の前の彼女に驚いていた。


「...え、ちょ、ちょっと待て。本当にステラなのか...?」


十年経って大人びた美しい女性になっているステラに、ルーカスは困惑していた。そんな彼に、彼女は微笑んで言った。


「十年も待たせてしまいました。あのときの返事、聞いてください。......ずっと私と一緒にいてほしいです」


こぼれ落ちるステラの涙を拭いながら、ルーカスも涙を流す。


「......ああ。ずっと、一緒にいよう」


そう言ってルーカスはステラを抱き寄せてキスをした。



-----------



「まさか驚いたな...十年も時間が止まってたなんて。というか、一番驚いたのは......」


辺境にあるルーカスの屋敷で目覚めたエレンは目を見開いた。目の前のステラに驚きを隠せないでいる。


「...エレン様もよかったです。身体は大丈夫ですか?」


「ああ。昨日のことのようだが、傷もすべて治っている。これほどの魔法を使えるようになったなんて......一体どれほどの研鑽を積んだんだ...」


「ルーカス様を生き返らせる魔法、そしてアストラリスの力で止めた時を再び動かすための魔法、二つの魔法を使いました。でも、その二つで私の魔力は底を尽きたみたいです。もう、魔法使いでもなんでもない、ただの人間になっちゃいました」


「......そうか。ひとりで頑張ったんだな...」


エレンがステラの頭を撫でようとしたとき、即座にルーカスがその手をはたいた。


「触るな」


睨みつけるルーカスに、エレンは冷や汗を流す。


「...なんか、前より愛が重めになってない?」


「当たり前だ。十年分だからな」



彩りを取り戻した山々に風が吹き抜ける。三人は、ようやく取り戻した時間を喜び分かち合った。


魔鳥(アウィス)を召喚したエレンが「久々にひとっ飛びしてくるよ」と言って飛び立った。


ルーカスとステラは手を繋いでお互いを見つめた。


「十年分、伝えてくれるんですよね?」


ニヤニヤと笑いかける彼女に、ルーカスは照れて耳を真っ赤にした。その赤くなった耳を、ステラはなんだか懐かしく、愛おしく感じた。


「......愛してるよ」


そう告げたルーカスに、ステラは花が綻ぶような笑顔で返した。


「私もです!愛してます、ルーカス様!」








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