十年後の返事
あの災厄の日から10年ーー、
フードを目深に被った女性が、時間が止まったままの町を歩いていた。あたりは10年前のまま、誰一人として動かない。
彼女は瓦礫の上を進む。高く聳える瓦礫の上には、かつて大賢人と謳われた大魔法使い、ルーカスが眠るように横たわっていた。彼のおでこに顔を近づけ、彼女は静かに言う。
「...やっと貴方を目覚めさせることができます。...ルーカス様、起きてください」
彼女は空に向かって光を打ち上げた。まるで雪のように光が地上へと降り注ぐ。その光が人や動物に触れると、息を吹き返したようにすべてが動き出した。
「......ん...ステ...ラ...?」
ルーカスの目が開いて、ステラをとらえた。降り注ぐ光の粒のなか、ステラは涙を流しながら笑った。
「...はいっ!おはようございます」
そう言って彼を抱きしめる。ルーカスは荒れた町に驚いたが、何よりも目の前の彼女に驚いていた。
「...え、ちょ、ちょっと待て。本当にステラなのか...?」
十年経って大人びた美しい女性になっているステラに、ルーカスは困惑していた。そんな彼に、彼女は微笑んで言った。
「十年も待たせてしまいました。あのときの返事、聞いてください。......ずっと私と一緒にいてほしいです」
こぼれ落ちるステラの涙を拭いながら、ルーカスも涙を流す。
「......ああ。ずっと、一緒にいよう」
そう言ってルーカスはステラを抱き寄せてキスをした。
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「まさか驚いたな...十年も時間が止まってたなんて。というか、一番驚いたのは......」
辺境にあるルーカスの屋敷で目覚めたエレンは目を見開いた。目の前のステラに驚きを隠せないでいる。
「...エレン様もよかったです。身体は大丈夫ですか?」
「ああ。昨日のことのようだが、傷もすべて治っている。これほどの魔法を使えるようになったなんて......一体どれほどの研鑽を積んだんだ...」
「ルーカス様を生き返らせる魔法、そしてアストラリスの力で止めた時を再び動かすための魔法、二つの魔法を使いました。でも、その二つで私の魔力は底を尽きたみたいです。もう、魔法使いでもなんでもない、ただの人間になっちゃいました」
「......そうか。ひとりで頑張ったんだな...」
エレンがステラの頭を撫でようとしたとき、即座にルーカスがその手をはたいた。
「触るな」
睨みつけるルーカスに、エレンは冷や汗を流す。
「...なんか、前より愛が重めになってない?」
「当たり前だ。十年分だからな」
彩りを取り戻した山々に風が吹き抜ける。三人は、ようやく取り戻した時間を喜び分かち合った。
魔鳥を召喚したエレンが「久々にひとっ飛びしてくるよ」と言って飛び立った。
ルーカスとステラは手を繋いでお互いを見つめた。
「十年分、伝えてくれるんですよね?」
ニヤニヤと笑いかける彼女に、ルーカスは照れて耳を真っ赤にした。その赤くなった耳を、ステラはなんだか懐かしく、愛おしく感じた。
「......愛してるよ」
そう告げたルーカスに、ステラは花が綻ぶような笑顔で返した。
「私もです!愛してます、ルーカス様!」




