もう一度、やりなおそう
「しかし、ルーカスのことだけ覚えてないなんてな...ステラにとってお前は大事すぎたのかもな」
エレンが魔法を使って綺麗にしたキッチンで、ステラのための食事を作っていた。一度目覚めたステラだが、一カ月近くも昏睡状態だったため、またすぐに眠りについた。
あまりに憔悴したルーカスをみかねて、エレンがルーカスにも食事を振る舞う。スプーンが進まないルーカスに、エレンはため息をついて言った。
「...お前がそんな有様じゃ、ステラが元気になったときまた好きになってもらえないぞ。というか、なんで目覚めたステラに自分が恋人だって言わなかったんだ?」
「......言えなかったんだ。俺のことだけ忘れてる彼女に、恋人だって伝えても混乱するだけだ。...ステラには、いつもの笑顔でいてほしい。それに、彼女が笑って俺のそばにいてくれれば、それだけで......」
「ふ〜ん......お前って案外ピュアだよな。まあ、気長に思い出してもらうしかないのかなぁ」
「......いや...もう一度、俺のことを好きになってもらうしかない」
ルーカスは意を決したように目の前のスープを食べ始めた。エレンはそんなルーカスの言葉を聞いて、うれしそうな笑みを浮かべて料理をしていた。
---------
数日が経ち、体力が戻ってきたステラはルーカスと屋敷の裏山に散歩に出かけていた。赤や黄で色づき始めた山々に夕日が当たり、キラキラと輝いて見える。
「...ほら、ステラ。こっちだ」
ルーカスに手を引かれ、ステラは丘に登る。
「わぁ、とても綺麗ですね...!」
夕焼けを眺めるステラを、ルーカスは優しく見つめた。
「...ステラに話したいことがある」
「なんですか?」
「ステラを失うかもしれないってなったとき、本当に怖かった。大事なことをはやく伝えればよかったと後悔した。だから......言う。...ずっと俺のそばにいてほしい」
耳を真っ赤にしたルーカスが真剣な目で語る。でも耳の赤さはわからないほど夕焼けがまぶしかった。
「...?はい!もちろんです!ルーカス様にはまだまだたくさん魔法を教えてもらいたいですから。目が覚めたら魔法が使えるようになってて...私、ずっとこのときを夢見てたんです!」
「......へ?」
渾身の告白がスルーされたことに、ルーカスは動揺していた。しかしステラは魔法を使いたくてウズウズしている。完全に身体が回復するまでは修行はお預けとなっているのだ。
「今日のご飯はルーカス様が好きなシチューにしましょう!」
くるりと振り返って笑う彼女に、ルーカスは脱力しながらも笑い返す。
「...はいはい、帰ったら二人で作ろう」




