無自覚な執愛
ステラはルーカスに連れられるがまま、王都にある服飾店に来ていた。
「お前...服を持ってなさすぎだろ。魔法学院から除籍処分くらってるくせにこの制服を着続けてたとは......まったく」
ルーカスが呆れた顔で言う。辺境にあるルーカスの屋敷で一緒に暮らすことになり、ステラのものを買いに来ていた。
「だって魔法学院に進学するときに養家を出ることになって、それからずっと一人暮らしですもん。そんな余裕なかったんです!」
言い訳するステラにルーカスが手当たり次第に選んだ服を渡す。
「ほら、着てみろ」
ルーカスが選んでくれた服が予想外に可愛くて、ステラはなんだか悔しくなった。ステラが着替えて彼の前に出ると、「...うん、可愛いな。似合ってるよ」と言ってそのまま次々と買っていく。
「...っ師匠!こんなにたくさんは...!」
店を出てからさすがに買いすぎだと慌てているステラに、ルーカスは人気のない脇道でキスをした。彼はいたって真面目な顔で言う。
「...?どれも似合っていたが......別にいいだろ、恋人なんだから」
「恋人」としてのルーカスに戸惑うステラは、目まぐるしい変化についていけずにいた。それと同時に、ルーカスが女慣れしているようにも思えて複雑な気分だった。
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「で?晴れて恋人になってから、ルーカスが甘々すぎてツライと...」
エレンは紅茶を飲みながらため息をついた。ルーカスの屋敷に来ていたエレンにこっそり相談しているステラは大きく頷いた。
「はい、今まで師匠のことを恋愛対象として見ないようにしていたのもあって、まだ気持ちが追いつけてないんです...毎回パニックになってしまって...」
「まあ、気持ち悪いくらい優しいよね。...君には。こうなる前から僕はずっとルーカスがステラのことを好きだと分かってたけど。今まで見てきたなかでルーカスが本気で好きになったのは、君が初めてじゃないかな。学院時代からずっと言い寄られても適当にいなしてたし。あいつも初めての恋愛で、だいぶ浮かれてるんだよ」
エレンがケラケラ笑って言った。ステラは「真面目に悩んでるんです!」とむくれた。
「......おい、俺のステラを見るな」
エレンの後ろから殺気混じりの気配がした。ルーカスがアストラリスについての本を持ってやってきた。エレンはアストラリスにまつわる情報を、こうしてルーカスに共有しに辺境の屋敷まで来てくれているのだ。ルーカスから本を受け取りながらエレンが言う。
「ごめんって。...この本もあまり役に立たなかったかな。とりあえず宮廷の書庫から引っ張り出したけど」
「いや、情報は集められるだけ集めたい。いまだにステラの魔力には強力な制限がかかっている。万が一このリミッターが外れたとき、何が起こるのかが分かればいいんだが...」
「そうだね...『災厄をもたらす』魔法......僕も気になるから引き続き宮廷周りで調べるよ」
「ああ、頼む」
ステラは大事な話を二人が真剣にしているのに、ルーカスが自分の頭を撫でながら話すので集中できずにいた。彼のスキンシップに心臓が限界になったステラは立ち上がり、「あ!せ、洗濯物取り込まなきゃ」とわざとらしく部屋を出て行った。
ルーカスはそんなステラの様子を見てうれしそうに笑った。ニヤニヤ笑うルーカスにエレンが呆れた様子で言う。
「......おいおい、いつもそんな感じで揶揄ってるのか?ステラ、困ってるみたいだったぞ」
「...うるさい。俺も自分自身に困惑してるんだ。はぁ...なんだあれ...今日も可愛すぎるだろ...」
惚気が止まらないルーカスにエレンは目が点になった。
「これは...確かにツライな。あんなに女嫌いだったルーカスがここまで惚れるとは...」
エレンは屋敷中に漂う甘ったるい雰囲気に吐き気を催した。
「でもなルーカス、ステラはまだうら若い少女だ。くれぐれも暴走して彼女が傷つくことはするなよ」
「当たり前だろ。...それに、責任はちゃんと取るつもりだ」
ルーカスの真剣な表情に、エレンは「やれやれ...」と言いつつ屋敷をあとにした。魔鳥に乗って上空を飛ぶなか、惚気たルーカスのことを思い出していた。
「...いや『責任』って...もう将来まで見据えてんのか...あれはステラも大変そうだな」
ルーカスのかなり重めの愛に果たしてこれから耐えられるのかーー、ステラのことを心配するエレンであった。




