いいよ
「...生きてるか?」
ルーカスは座り込むエレンに冷たく言い放った。エレンがぶつかった木の幹には抉れたような跡があり、ルーカスの魔法の威力を物語っていた。
「なんとかな......ったく、本気出しやがったな」
全身を強く打ったエレンはまだ動けずにいた。ルーカスはエレンのことを横目で見て答える。
「一応手加減してやったぞ。ステラにはもう近づくなと言ったはずだ」
「...お前、やっぱり彼女に惚れてるだろ」
ふいに図星を突かれたルーカスは、顔を背けるがわかりやすく耳が赤い。長い付き合いのエレンはこの癖を知っていた。
「お前がステラを弟子にするときに出した条件?だったか、はやく撤回してあげろよ。彼女、『師匠が自分すを好きになるなんて絶対にあり得ない』ってスタンスだぞ」
「............」
耳が真っ赤になったルーカスは無言のままだ。そんな彼を見て、エレンは面白がった。
「あれだけ女を毛嫌いしていたルーカスが、まさかこんなに本気とはね...とにかくさっき怖がらせたことを謝って、ちゃんと自分の気持ちを伝えるんだ」
「......わかってる」
ルーカスはそのままエレンを置いて屋敷に帰っていった。残されたエレンは魔鳥を召喚し直した。
「まったく...あんなにわかりやすいのに恋愛音痴な二人だな。久々にルーカスの本気を喰らったよ」
心配するようにすり寄る魔鳥の長いくちばしを撫でながらエレンは笑った。
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手紙が届いたとき、「行くな」と言われていたのにーー、エレン様の力を借りて勝手に宮廷に向かった私に怒ってた...。師匠に掴まれて赤くなった腕を見て、彼の顔を思い出していた。
「私、本当にここにいていいのかな......」
誰もいない屋敷の玄関で呆然と立ち尽くしていると、後ろからドアが開いた。
「...師匠!エレン様は......」
「生きてた。魔力が回復すればそのうち帰るだろ。それより......」
「ごめんなさい!...勝手に宮廷に行って、師匠のことをこんなに怒らせて......」
私が溢れそうな涙を必死に堪えていると、師匠の手が私の頬に触れる。さっきとは全然違う、優しい手だった。
「...俺も悪かった。...お前に伝えたいことがあるんだ」
「......へ?」
「...俺は、ステラのことが好きだ」
頭が真っ白になる。師匠が私のことを好き?でも、絶対に好きになるなって......。混乱して目の前で起きていることがわからなかった。
あ、師匠の耳...赤い。
「...ど...して...師匠、恋愛は...うんざりだって...」
師匠は頭をかきながら、照れくさそうに私を見ている。
「......お前は別だ。恋なんぞ鬱陶しいものだと思っていた。でも、ステラにはずっと、俺のそばで笑っていてほしい......と思う」
もう、我慢しなくていいんだ。私、この人のことを好きになっていいんだ......。
「......そんなこと言われたら、私、あなたのこと好きになっちゃいますよ」
「いいよ」
優しく伸びた師匠の腕の中に飛び込んだ。師匠の大きな身体で全身を包まれて、私は幸せと安心と、いろんな感情がごちゃ混ぜになってどうにかなってしまいそうだった。
「師匠、大好きです!」
彼は私の顔にそっと両手を添えて、フッと優しく笑うと口付けた。玄関の灯りが夜の闇から私たちを守るように、静かに照らしてくれていた。




