54.サプライズ
「脅かせてすみません」と言うベイの一言に…グロリアの目から涙が溢れ、足が震えている。今にも倒れてしまいそうだと思ったアンジーは、サッと駆け寄り「悪魔の使いだ、なんて言う嘘をついてゴメンなさい」と言ってグロリアを抱きしめると、グロリアもアンジーの背中に手を回し「…あの時は…あの時は妹を助けて頂き…ありがとうございました…」と言って泣き崩れた。ベイはリチャードに「すみません、私が秘密にして欲しい何て言ったからリチャードさんに気を使わせてしまい…反省しています」と言って頭を下げた。するとリチャードは「ベイ博士、頭を上げて下さい…実は私自身、どう言えば良いのか迷っている時に…グロリアさんに助けてもらって…何とか上手く乗り越えられただけなんです…」と言って微笑んだ。ベイはリチャードの顔をジッと見ながら「実は…今後こういった事が、なるべく無いようにと思い…大統領に手紙を送りました」「手紙ですか…他の誰かが見なければ良いのですが…」「大丈夫ですよ、匠さん特製の手紙は、大統領が珈琲とかを飲む時に…カップの中にだけ文字が浮かぶんです、例えばミルクを飲む時には、黒い文字が、ココアを飲む時には白い文字が…これなら誰にも見られないでしょ…」「すごいですね…」「本当は、直接大統領の頭の中に話しかける事も出来る…と言われたんですけどね……それってかなりヤバイ奴だなって思ったもんですから…文字が浮いている方がメルヘンチックでいいかなって…」真面目なリチャードは「…はい、メルヘンの方がよろしいかと…ところで大統領には何と?」「1つ目は、リチャードさんを大統領の力で、あまりマスコミに出さないようにと、お願いしました。2つ目は…もし今後、私に話しがある時はリチャードさんを通して下さいと…珈琲カップの中の手紙にそう書きました」と言って微笑んだ。リチャードは「そうですか…」と返事をしたが内心では(待って待って、1つ目は嬉しいけど…2つ目はマズイんじゃね…いやきっとマズイよね…軍の上官に会うのはいいけど、大統領は駄目でしょ…うん、無理、無理、この前お会いしたのは例外だから、特別だから…)と思っていたが…ベイの笑顔を見ていたら…何も…言えなかった。ベイは次にグロリアに目を向けた(かなり落ち着いた感じになったな…)と思ったのか「皆さん少し注目して頂けますか。出来ればお互いの顔が見えるように、輪になって頂けますか?」と言った。ベイの右側にはメリー、左側にはリチャードスミス…グロリアはアンジーの右側に立った。ベイ博士は皆んなの顔を見回した後「リチャードさん、グロリアさん…私達8人の事を話しますね…大して面白い話しでは有りませんが、聞いていただけますか?」2人は好奇心全開で(是非とも聞きたい)と思ったのか、元気な声で「はい‼︎」と答えた。ベイは少しハニカミながら、今日までどのように生きて来たのか、と言う話しを約15分ほどにまとめて2人に聞いてもらった…いきなり殺された事…復讐の事…死んだ人を生き返らせれる事…水の壁を立ち上げ、津波から町を守る術を知っている事…全部である。ただ最後に「…悪い事をされた方は生き返らせる事が出来ないんです…地の底から得体の知れないモノが…亡くなられた方の魂を連れて行ってしまうんです…私もその部分はどうする事も出来ません…どうか、生きて行く過程の中で、悪い事をされませんように、と祈るばかりです…あと御本人が「このまま死にたいんです」と希望された時は御本人の意思を尊重します。私達8人の話は以上です。リチャードさん、グロリアさん…いま私が話した事を、秘密にして下さい、とか…周りの人に伝えて下さい、とか…そう言った意味で話したんじゃないんですよ…ただ、お二人に…知っていて貰いたかったんです…私達8人が何者なのか、どんな生き方をして来たのか…。話しが長くなってしまいました、すみません。私達はこれで帰りますが最後に」と言ってベイはメリーに「グロリアさんの身体を治してあげて」と言った、メリーは微笑みながら「グロリアさん、ちょっと下腹部を…ごめんなさいね…」と言って光を当てた…わずか4秒…「子宮筋腫を治しました、次にヒールを脱いでもらえますか…」「えっ?あっ、はい」グロリアはヒールを脱いだ、メリーまたブレスレットから光を浴びせた、わずか3秒…「グロリアさん、外反母趾と足の裏のタコとマメ…治しておきましたよ。痛いのは辛いですもんね」と言ってウィンクをおくると…グロリアは「えっ〜」と言いながらしゃがみ込んで自分の足の裏を触った…今まで痛かったのが嘘のように、手で触るとツルツルである「嬉しい…綺麗に成っている…」グロリアは御礼を言おうと顔を上げた…しかし8人の姿は既に無かった「…えっ〜?あのリチャードさん皆さんは…」「皆さんお忙しい方達ですから、帰られましたよ。グロリアさん、皆さんに会う事が出来て良かったですね」と言うと「はい…とっても嬉しかったです」と言って涙をこぼした。リチャードは「でわ…私も帰りますね、愛する妻子が待っていますので」「お忙しいところ…本当にありがとうございました」「大丈夫、忙しく無いんですよ、実は2週間の特別休暇をもらえたんです、今から妻とゆっくりと過ごします」そう言ってリチャードはドアを開けた、グロリアはリチャードの背中に「すみませんリチャードさん、もし私が…神様達にお会いしたいとお願いしたら…あの…」するとリチャードは振り返り「…いいですよ…内緒の話しなんですけど…電話番号を知っていますので」と言ってドアをソッと閉めた……ドアの向こう側から、グロリアの喜びに満ちた奇声が聞こえた、リチャードは微笑みながら車に向かった。。スカイシップに戻るとベイは「ただいま帰りました」と言う前に…いきなり大声で「皆んなの言う通りだったー!!グロリアさんスっごく喜んでたし、リチャードさんも笑顔満開だったし…もうこれからは絶対に皆んなの意見を100%聞いてから作戦を立てるし…」と叫んだ。日頃は冷静なベイの取り乱した表情に、女将と匠は大笑いである…連鎖反応とは怖いもので、2人の笑いが皆んなにうつり、デッキの中はあっと言う間に大爆笑と成った。笑い声がおさまった時…女将はソッとテーブルとイスを出した。8人は微笑みながら自分の席に腰を下ろした。ベイ博士は静かな口調で「女将さんと匠さんも席に着いて貰えますか?」と言った…女将と匠は小さく会釈をしながら「はい」と答え…そして席に着いた。横2メートル、縦4メートルのテーブルの右側に、ボブとリンダ、ルーシーとグレイが座り。左側にジョニーとアンジー、女将と匠が座り…そしてデッキの窓から見て、奥の席に…ベイとメリーが並んで座った。ベイは微笑みながら「これから先、皆んなで話し合いをする時には、このような形で座りましょう…」と提案をすると、皆んなは心良く手を上げてくれた。高度5000メートルの窓の外には、雲ひとつない青空が広がっている…10名はふと(昨日の今頃は、闘いの真っ最中だったなぁ…全てが上手く終わって良かった…)と思うと何となく視線が窓の外に向いてしまった。メリーがしみじみとした口調で「…本当に良かった…地球が守られて…」と言うと9名は黙って頷いた…しばらくの間…沈黙が続いた…そしてベイから「今後の作戦…と言うか、私達のこれからの行動について、皆んなで話し合わないとね…」と優しく声をかけた。すると(皆んなの視線がまだ何となく青空に向いているな)と思った匠が「ベイ博士、もう少し上に上がりましょうか?」と提案した、ベイが小さく頷くと…スカイシップは少しずつ高度を上げた。女将も匠と同じように皆んなの表情を読み取りながら(少し感傷的になっておられるのかしら…それなら…)と思い、デッキの中にこんな曲を流した。まず雷の音…雨の音…そして軽快なリズム…その割には少し寂しげな歌声…「えっ〜と…誰の曲だったかなぁ〜、かなり昔の曲だったよなぁ…」と言ったのはジョニーである、すると、雨の音で昔の事を思い出したのか、アンジーがポツリと呟いた「…ねぇ…あの日の雨は…本当に冷たかった…わよね…)と言った。ジョニーはアンジーの手を握り「あの時…皆んなの靴の底に穴が開いててさ…」と言うと、今度はグレイが「…その靴しか持ってなかったもんね…あれって三月くらいだったかなぁ〜」と言った「うん、そのくらい…あの時…お腹もペコペコに空いてて…せつなかったぁ〜」と言うルーシーに対して…リンダが「…雨漏りだらけの空き家だったわよね。夕方にボブとベイ博士とメリーが袋いっぱいの食べ物と、色々な物を持って帰って来てくれて…」するとボブが「あの日…雨だったからレストランのゴミ箱がベチャベチャに濡れててさ…3人で町中走り回っても何も無くて…確かメリーが道端で一枚のコインを拾って…そしたらベイ博士がスロットマシンのある店に入って…20分くらい大人がしているところをジッと見てて…メリーからコインを受け取ると、ベイ博士は、たった一回で数字を揃えてさ…それから見た目の大きな俺が換金に行って…メリーが食べ物、薬、下着、洋服、靴って…あの時は…嬉しかった…助かった〜って思ったよ…」ボブは涙もろい、話し終えた顔が涙でグチャグチャである、リンダはサッと立ち上がるとボブの顔を自分のお腹に包み込み「泣かないの…」と言って…優しくボブの背中を撫ぜた。スカイシップはいつの間にか地球を見下ろす所まで上がっていた、メリーはベイの顔を見つめ「…ベイ…色々な事があったわよね…」と言うと、ベイは、皆んなが言う「あの日は寒かった」と言う言葉から連想したのか、自分の両手を口元に当て、左右の手の平を「ハァーッハァーッ」と暖めるような格好をした。匠はソッとスカイシップの進行を止めた。窓の外に見える地球が10センチほどのボールに見える…ベイ博士は温めた両手を前に出すと、窓の外の地球を、包み込むような格好をした…メリーが「どうしたの…」と尋ねると「僕達は…とんでもないパワーを手に入れたんだよ…ほら地球を包めるくらい。…ならば、出来る限りの事をしたい…偉そうな言い方に聞こえるかもしれないけれど…あの日の僕達のような人を、少しでも…たとえ少しでも減らせるような事をしたい…」と言った…その顔は真剣である。メリーはしばらくベイの顔を横から眺めた後「…ちょとゴメンなさいね、ヨイショ…」と言いながらベイの膝の上にまたがり、ベイの両手の真ん中から、自分の顔をヒョコッと出した、そして「よ〜し、ベイがそこまで言うのなら…私も応援しないとね…ところで今……私の事は何パーセントくらいベイの心の中にあるのかしら?」「90%がメリーの事だよ」と言うと、メリーは「ありがとう…じゃあ私も90%の思いを込めて…」と言ってキスをした。ベイは微笑みながら「メリー、マイナス10%分はなんなの?」と尋ねると「貴方と一緒に…誰かの手助けをする為よ…同じ思いに立った方がいいかなぁ〜って思って」ベイはメリーの頭を両手で包むように…「ありがとう。」と言ってキスのお返しをした。女将はその様子を10秒間見つめた後「パンッ」と手を鳴らし、凛とした声で「はい、おしまい。いつまでもベタベタ引っ付かないで下さい。でわ皆さん、困っている人達を…お助けする、と言う答えで良いですね、私と匠もその方向で進みますよ、宜しいですか?」と言って皆んなの顔を見回した…全員が満面の笑みで…親指を。立ててくれた。。。。。




