44.いよいよ復讐
するとジョニーが「ちょっと説明をして来るね」と言って大統領の前に進んだ「大統領、時間が有りません、宇宙からの侵略者達は、計画通りに動いています、ベイ博士の事、ユーリ議員と13人の科学者の事は後で詳しく説明します、今は侵略者達の事を…」と言ってジョニーはまず侵略者の科学力の高さを説明し…次に目的を達成した後に、国交などと言う事は、一切ありないと言う事を説明した。しかし明るいニュースとして、奴等の航空母艦と戦闘機のシールドを解除してあるので、地球の、軍の戦力でも対等に戦える、と言う事を力説した。それら全てを説明する為に使った時間は…6分と23秒。ベイは思わず小さな声で「お見事!」と言ってジョニーに向かって頭を下げた。世界中の代表者達の視線がアメリカ大統領に向けられた…決断を迫られて居るのだ…しかし大統領は目をつむったまま動かない…頭の中では既に理解している…どのような結果になっても責任は全て自分が背負う覚悟もしている…ただ戦闘機に乗るパイロットは…死ぬ確率が高いのだ「頼みます」の一言は「死んで下さい」の裏返しでもある…皆んな家族が居るのだ。その事を察したのか、リチャードスミスが「…大統領、同じ事を言いますが、ベイ博士は絶対に地球を守って下さいます…ならば私達も全力を尽くして、奴等の戦闘機と闘います。命令を出して下さい」と言った…大統領はリチャードスミスの顔をジッと見つめ「いいのか…」「はい…」大統領は意を決したのか…小さく頷きながら「リチャードスミス隊長、アメリカ空軍の全指揮権を君に託す…」と言って手を差し出すとリチャードは「光栄です」と言ってその手を両手で握りしめた。リチャードはその後…部下全員を連れてベイの前に来ると「せっかく助けて頂いた命ですが…この先の事は分かりません、地球を守る為にと言えば格好良く聞こえるでしょうが、本音を言えば、愛する妻と娘の為に戦って来ます。ベイ博士、皆さん、本当にありがとうございました」と言って頭を下げ…10名は会議室を後にした。ジョニーは再び大統領に向かい「…既に月の後方に1機の球体が待機して居ます、あと2機も地球に接近しています、3機の球体が地球上で、狩と言う名のゲームを始めるまで…あと6時間ほどです。スカイシップが奴等の航空母艦と、戦闘機を太平洋上空におびき出します…そこで皆さんに奴等を叩き落して頂き…その間に、ベイ博士が率いるスカイシップは、宇宙空間に居る三機の球体を破壊して来ます…どうでしょうか?」と言うと、大統領は「…よろしく頼みます」と言って快諾してくれた。ベイはメリーの耳元で「良かった〜、アメリカ空軍が動いてくれたら、きっと世界各国が動いてくれると思うよ」と言うと、メリーも嬉しそうな顔で「私もそう思うわ、だってアメリカ大統領はずっと平和の為に対話を重ねて来られた方でしょ…どの国も前向きに検討して下さると思うわ」と2人が話して居る時に…大統領がマイクを持ち、カメラの前に立った「私は…いや、アメリカ合衆国は…ベイ博士と言う1人の科学者を信じて空軍を出動させます…命がけの大変な任務です…しかし、やらねばなりません…地球を護るために…どうか皆さん…御理解を頂きたいと思います」諸外国に対して共戦を呼びかけたが、具体的にこうして欲しいと言う事は一切言わなかった…どの国にも…それぞれの事情がある事を知っているからである。ベイも当然そんな事は分かっている、だが…戦わなければならない時もあるのだ…それは自分自身で判断し…行動に移すしかない。ユーリ議員と13人の科学者達も、初めはそんな思いで動き出したのだとは思うが…違う意見の人を排除したり、殺したり、監禁したり…残念ながらどんな理由をつけても…他人の不幸の上に築いた幸せは、長続きはしないのである。94人は依然動けないままである、ユーリは悔しくて仕方がないが、とにかくベイから動かせて貰えなかった。大統領はジョニーに「今さっき、あなた達の資料が私の手元に届きました…あの…家事で亡くなったと記載されているんだが?記載ミスかな…?」ジョニーはあえて質問には応えず「大統領、私達は復讐に来ました。ベイ博士から「やられたまんまで終わってられるかい」と言う意見が有りまして」大統領は頷きながら「なるほど、では彼等をどのように…」(さぞかし凄い事を言って来るんだろうな…)と思いながら…ベイに視線を向けた、するとベイは満面の笑みで「もう復讐は終わりましたよ。彼等は大統領に対しても、世界の代表に対しても、世界中の人達に対しても…自らの罪を、自らが告白したわけですから、あとは法律によって裁かれればいいと思います。大統領から「ユーリ議員、君が黙ってくれないか」と言う言葉を聞いて、私は胸がスッとしました…此処に居る94人プラス、此処には居ない427人の仲間達の資料を…後で大統領の机の上に置いときますので…全て大統領にお任せします。私達は今から自分達の出来る事をして来ます」と言って頭を下げた。そして「さぁ皆んな行こうか」と言って大統領に背を向けた。メリーはベイの腕に抱きつき、ボブとリンダ、ジョニーとアンジー、グレイとルーシーが揃って博士の周りに立つと、ベイは微笑みながら「フリー・ベー、船に帰るよ」と言った、「かしこまりましたベイ博士。匠様、瞬間移動をお願いします」と言い終わると…ほぼ同時に、8人の身体は会議室の中からフッと消えた。大統領を筆頭に誰もが「おぉ〜……」と言う声を漏らした事は言うまでもない。。スカイシップのデッキに戻って来た8人は口々に「女将さん、ただいま帰りました」「匠さん、上手く話しがまとまりましたよ」と言うような報告した…するとメリーが小さく笑いながら「ねぇ皆んな…女将さんと匠さんは、デッキの中から全てを観ておられたと思うわよ…」と言うと、ベイを除いた6人が「あっ〜そうだね、840体ものホタル君達が居たんだよね〜」と言って笑い出した。笑いが収まりかけた時、グレイがポツリと「ベイ博士…復讐は終わったんですよね…」と言ってベイ博士の顔をジッと見つめた、ベイは目をそらす事なく「あぁ…終わったよ」と言うと、グレイはホッとしたような顔で「やっぱりベイ博士は昔のままだったんですね…良かった〜」と言って皆んなの顔を見回した、するとベイは首を傾げながら「どうしたんだいグレイ、僕は昔からこんな感じの人間だけど…」「そうです、ベイ博士は昔からズッと優しくて…正しくて…強くて…冷静で…でも復讐と言う言葉が出ると…顔が急に怖くなって…だけど復讐と呼ばれる今までの作戦は…何時も人助けで…でも今回は、本当の犯人に対しての復讐で…僕はてっきり犯人を八つ裂きにするんだろうなぁって思っていたんです、マシンガンかな?刀かな?ハンマーかな?…僕はどんな武器にでも対応できるようにイメージトレーニングだけはしておこうって、色々な映画を観たりして…よく考えれば・ベイ博士がそんな事をするはずが無いのに、すみません…バカな事を言って」と言ってグレイが頭をさすると、ルーシーも同じように隣で頭をさすって居る…そんな2人を見てデッキの中は大笑いと成ったが…ベイだけは笑っていない、メリーは小首を傾げながら「どうしたのベイ?…」と言って、ベイの顔をワザと大げさに覗き込んだ…するとベイは急にメリーをギュッと抱きしめた、かなり強めである…その強さはメリーを愛する時の強さである、その事に気づいたメリーはベイの耳元で「ベイ待って、ここじゃダメよ、後で…お部屋で、ねっ…ねっ…」と呟くと、ベイはメリーの耳元で「大丈夫だよ、節度は…常に必要だと…自分に言い聞かせているからね」と言って、メリーの背中をさすりながら5秒ほど沈黙した…そして「今、皆んなの前でメリーを抱きしめたのわね…もう二度と離すもんか、って言う僕の本気の意思表示だよ…グレイ、ルーシー、僕の本音を言うね…ガッカリしたら許してね。もしもあの時…皆んなを生き返らせる事が出来なかったら…僕は地球を破壊するつもりだったんだ…」7人の顔から血の気が引いた。そして更に「愛する女性を…愛する家族を殺された僕の心は…崩壊寸前でね…映画の中で、一人の犠牲、あるいは少数の犠牲で、国を守りましたとか、地球を救いましたって言うシーンがあるでしょ…僕には無理だ…出来ない…そう言った意味で言うと、僕は冷静でも無ければ、優しくもない、ましてや正しさなんて微塵もない。13人の科学者達とユーリ議員、そして実行犯である情報機関や殺し屋達を…テレビやネットを使って公開処刑にして…その後に地球を破壊するように、女将さんと匠さんに、お願いしたんだ…。僕は…とっても怖い心の持ち主だよ。さっきの会議場で「大統領にお任せします」って言えたのは、皆んなが生き返ってくれたから…メリーが帰って来てくれたからだよ。…僕から優しさと、冷静さを引き出せるのは、メリーだけで。僕から正しさと強さを引き出せるのは、ボブとリンダとジョニーとアンジーとグレイとルーシーなんだよ。つまり僕は…1人では何も出来ない…弱い男なんだよ…ガッカリしただろう…」と言って皆んなの顔を見回すと…ボブが、目に涙をいっぱい溜めて「ベイ博士、俺もまったく同じ思いですよ…リンダが俺に、優しさを教えてくれたんです」と言うと、ジョニーも「僕も同じですよ、アンジーが居なければ、他人の為に、何かをしてあげよう何て…少しも思わない…」と言い、グレイも「僕はルーシーが居ないと生きて行けません」と言い切った…。するとリンダが「私はボブに、ズッと抱き着いて生きて行くの」と言い、アンジーは「ジョニーが居なければ、生きている意味がない」と言い、ルーシーは「グレイに甘えてイイのは、私だけなの」と言った。8人の顔は、瞬く間に赤く成った…。その時、少し遠慮がちな女将さんの声がデッキの中に響いた「皆さ〜ん、お取り込みのところ誠にスミマセ〜ン、地球にとっての一大事が直ぐそこに来ました〜、私の話しを聞いて頂けますか〜」8人は、女将さんのユーモラスな問いかけに、笑いながら我に戻った。女将は、世界各国の民衆の悲壮な声をデッキの中に流した…「…女将さん、まだ誰も奴等に連れて行かれていませんか」と言うベイの質問に「大丈夫ですよ、偵察はしていますが、まだゲーム開始の合図が出ていませんので、ただ、空を見上げると、得体の知れない飛行物体が居ますので、誰でも悲鳴を上げたくなりますよね」と言った。ベイは「そうですね…」と言った後に「匠さん、女将さん、もう一度だけ聞いてもいいですか…」「ベイ博士、なんでも聞いて下さい」と言ったのは匠である、ベイはメリーの顔を見て…小さく微笑んだ後に。……




