15.シャボン玉
朝9時、8人はホテルのロビーに入った…焼きたてのパンの匂いと、コーヒーの香り…ダイニングに入ると、美味しそうな焼きたてベーコンと卵焼き、そして新鮮な野菜サラダが並んでいた…キッチンからトムとニーナが、ワゴンにスープを乗せて運んで来てくれた…8人に気がつくとソッとワゴンを止めて「皆さん、おはようございます」と言って2人はペコリと頭を下げた…8人は(かわいい〜)と思いながら「おはよう、トム、ニーナ」と順番に声をかけていった…その事に気付いたブラウンとレイチェルはキッチンから慌てて出て来ると「皆さん、おはようございます。すみません、直ぐに全て揃えますので、もうしばらくお待ち下さい」と言って2人はキッチンに駆け込んで行った。するとボブが「皆んなで運ぶのを手伝いますよ」と言ってキッチンに入ろうとした時である…トムがボブの前に来て「お客様に手伝って頂くなんて…とんでもありません、私どもで直ぐに用意しますので、椅子に座ってお待ち下さい」と言ってボブの手を握り席まで連れて行ってくれた…、8人はまた(かわいい〜、子供なのにプロの意識をちゃんと持っているんだなぁ)と思った。テーブルの上に全てが揃うと、ベイはニッコリと微笑み、両手を顔の前で合わせ「いただきます」と言った、その言葉で朝食が始まった…8人の周りで…必要な物があれば直ぐに対応できるように、ブラウンとレイチェルが微笑みながら立っている…食事が始まって五分、2人は少し驚いた…8人とも食べることが早いのだ…(大丈夫かなぁ、ノドに詰まるんじゃないかしら…)とレイチェルが思っていると、リンダが胸を叩きながらオレンジジュースを飲んだ、レイチェルは直ぐにコップにジュースを注ぎ足した。すると今度はルーシーが胸を叩きながら水を飲んでいる、ブラウンも直ぐさまコップに水を注ぎ入れた。トムとニーナはボー然とその様子を見ていた。ニーナがトムの耳元で「お兄ちゃん…なんで皆さん…食べるのが早いの?」「パパとママが言ってたじゃないか、皆さんは大事なトップシークレットの仕事をしておられる方達だって、きっと直ぐに仕事に行けるようにじゃないかな…」「大変なのね〜」「そうさ、トップシークレットだからね」と2人が言っている内に…8人はサラダまで食べ終わり…デザートに入っていた…フルーツ、アイスクリーム、ケーキ、そしてコーヒーあるいは紅茶を飲み干し…朝食が終了した。ブラウン一家の4人は(マジで食べる速度が早い〜)と思った。8人は(ヤベー、お腹が空いていたからガッついて食べちゃったよ、品がないよね〜カッコ悪い所を見せちゃった〜)と思った。その時であるフリー・べーが「ベイ博士、朝食後申し訳ありません、女将様から地震の報告が入っております、どういたしましょうか?」「ありがとうフリー、直ぐに船に戻るよ。皆んな船に戻るよ」7人は「はい、了解しました」と言いながら席を立った。ベイはブラウンとレイチェルに「ごちそうさまでした、慌ただしくてスミマセン、ちょっと出かけて来ます。トム、ニーナ、ゴメンね、ガサツな食べ方をして…」「いえ…お仕事頑張って下さい」と言ったのはトムである「ありがとうねトム」と言った後に「フリー、黒衣モード」…8人を包むように、黒い煙が渦巻いた、わずか2秒ほどで8人は黒い衣装に変身した…(ワォ〜)と思ったのはブラウン一家である。…空を飛び船に戻る8人…船はアッと言う間に空のかなたに…ブラウン夫妻と子供達は…心の底から「カッコイイ〜」と叫んだ。船に戻った8人を、スカイシップは直ぐに現地上空まで連れて行ってくれた、しかし、その国の時間は午後4時21分、8人が行動するには、まだ少し明るくて、目立ちすぎる…ベイは日没まで船内で作戦会議をする事を提案した、7人もその通りだと思ったのか、笑顔で親指を立ててくれた。女将は現地のテレビニュースをスクリーンに映しながら解説をしてくれている「…死者は少なくとも100名以上、行方不明者は500名以上になると現地の警察と消防が…」と言うニュースキャスターの報道に対して、女将は「ベイ博士、死者の数は2112名、重体者の数は15993名です…」と明快な答えを出した。女将の目と耳に掛かれば、地下10000メートルほどの状況をも確認する事が出来るので、行方不明、と言う言葉は、女将の辞書の中には存在しないのである。ニュースを見ていると、周りの国から沢山の救助隊と、医療機関の人達、そして沢山の支援物資が届けられる事になっている、少しでも早く被災されている方達を助ける為に、どの分野の人達も1分1秒を惜しみながら動いているが、まだ海外からの救助活動は一切行われていない。なにせ地震が起きてからまだ1時間もたっていないからである。自国、地元のマスコミがヘリコプターやドローンを飛ばして、上空からの映像を流すのが精一杯である。被災者の「早く助けて」と言う言葉を…あざ笑うかのように余震が続いた。やがて太陽が沈んだ…救助活動は二次災害を防ぐ為に更に慎重に行われ…21時、救助活動はいったん終了した。ベイは立ち上がると「さあ皆んな…神が与えた試練の、邪魔をしに行こうじゃないか」と言う言葉をきっかけに、8人はスカイシップを飛び出した。先ず作戦通りに女将と匠が建物の瓦礫を浮き上がらせる、次にボブと、グレイと、ベイが、遺体を道路に運び出す、そしてルーシーとメリーがマシンを使って、亡くなった人達を生き返らせる、その人達が30人前後集まった段階で、ジョニーとアンジーが説明をしながら、その人達を避難場所まで送って行く…と言う流れになっていた。この作戦はとてもスムーズに進み、わずか3時間で死者2107人と、重体者15993人を助け出す事が出来た。残念な事に死者の中で、魂そのものが…地の底に引きずり込まれたのか?…12名の人が…生き返る事が出来なかった…それでも避難場所に待機していた医療関係者、レスキュー隊、警察官、消防隊の人達が、驚き、叫び、狂喜乱舞した事は言うまでも無い。ただ今回の地震の事で8人はこの町に来たのだが、2年間の間に殺害されて埋めらていた人達が37名もいた…その人達が生き返りたいと言う意思表示をしたので、博士達はマシンで生き返らせ、家族の元に送って行った。ベイはフリー・べーを通じて女将にこんな事を尋ねた「女将さん、12名と、37名の人達との…因果関係は何かあるんですか?」女将は一呼吸置いてから「はい…12名は間違いなく、37名を殺した犯人です…以前、山火事の時の若いお母さんのように、ベイ博士が生き返らせてあげたくても、人を殺した犯人の魂は…どうやら地の底に引きずり込まれるみたいですね」と言った。ベイは厳しい表情で「しょうがないですよね…殺された人達の、悲しみや、悔しさ、無念さ、を考えるると…。さて女将さん、救出作業は無事終了しました、今から船に帰ります」と言ってスカイシップを見上げた。スカイシップに戻った8人は、お互いの顔を見回しながら頷き合い、笑顔で親指を立てた。女将は静かな口調で「皆さん、お疲れ様でした…亡くなった、と思った家族の方達が生きていた…いま下では、多くの人達が手を取り合って喜んで居られますよ」と言って8人をたたえた。するとベイは、悪役の役者さんのような口調で「へっ、へっ、へっ、また神様が民衆に与えた、試練の邪魔をしてやりましたよ、今回も俺の勝ちだな、世の中を滅茶苦茶にしてやるぜ…」と言って悪役の顔で凄んで見せた…7人は(もう〜、ウチの博士は何を言ってんだか…しょうがねえなぁ…)と思いながら「ベイ博士ったら面白い〜」と口々に言ってみた…ベイはメリーの顔を見つめ「…この調子で、俺達を殺すように命令した科学者の奴等に…思い切り復讐してやるぜ、そして世界中を不幸のドン底に、叩き落としてやるんだ」と言って拳を握り締めながら皆んなの顔を見回した、7人は(あっ、やっぱり復讐はするんだ…でも今のところ誰も不幸に成っていませんから…)と思いながら「オォッ〜絶対に復讐してやるぞ〜」片手をかざしながら、口々に吼えてみた、ベイは満面の笑みで何回も頷いた、その時、女将から「ベイ博士…パイロット、乗務員、お客様あわせて476人が乗った飛行機がたった今、SOSを出しました」冗談半分のベイの表情は、いっぺんに真顔になり「女将さん、飛行機まで何秒で行けますから「3秒で飛行機の真上に着きます」と言い終わった時には、既にスカイシップは飛行機の真上にいた…匠が「ベイ博士、私がアームでつかみましょうか?」「う〜ん…ココはシャボン玉で行きましょう」「了解しました博士」7人は(シャボン玉?なんか新しいモノが出てくるぞ〜)と思った。パイロットである機長は、必死で航空管制塔に、飛行機のエンジンが止まってしまった事を伝えている、管制官は「なんとか空港まで戻れますか?」「…無理だと思います…他に着陸出来る場所は有りませんか?」「…今、機長が居られる場所は山岳地帯で…」乗客も飛行機の異変に気付き出したのか、窓際に座って居る1人の婦人が「ねぇ、この飛行機…段々と下がっているんじゃない…」一瞬の沈黙、そして絶叫と絶望…。その時、スカイシップが飛行機の、真ん前に姿を現した…絶句する機長と副機長、降下しながら飛んでいる…自分達の飛行機の前を…ぴったりと…くっついたようなかたちで…後ろ向きに飛んでいる、得体の知れない飛行物体…。副機長は震える唇に力を込めて「機長…う、宇宙人が、の、乗っているんですかね?」「分からない…」「わ、私達は…死ぬんですかね…?」一瞬の沈黙、その時ベイがさわやかな声で「大丈夫ですよ、死にませんよ、今から飛行機全体を、大きなシャボン玉で包みます、其れは皆さんが行きたい飛行場までちゃんと送ってくれますから…、飛行機が地上に着くと、シャボン玉は溶けて無くなります…それと、私達は宇宙人じゃないですよ…」と言う言葉を残してスカイシップは、アッと言う間に飛行機の前から姿を消した、と、次の瞬間、機体の落下速度が下がり飛行機は正常な飛行状態に…窓の外を見ると、機体をシャボン玉が包み込んでいる…光りの加減で、7色の虹色に輝いて見える「機長…私達は助かったんですか?」「あぁ…そのようだ…しかし…」「どうしたんですか?」「あの人は誰…?」「…さぁ〜、どこかの国の秘密機関ですかね?」「…そうなのか?…あんなに凄い科学力を持った国があるのか?…」と言いながら首を傾げていると管制官から「機長、今の状況は…」と言う緊迫した声が流れて来た、機長は静かな口調で「助けてもらいました」「えっ?…」「私達は助かりました…私が今、助かった理由を説明しても多分信じて貰えないと思います、本機は予定通りの時刻に其方に着きます、本機の状態を見てもらってから説明します…何故助かったのか…」管制官は首を傾げながら「わかりました…」と言う事しか出来なかった。機長は航空管制官との送信を切ると機内放送のスイッチを入れた「皆さん、本機はエンジントラブルで…かなり危険な状況になりました…しかし今、本機は巨大なシャボン玉に包まれていまして…エンジンは止まったままですが、予定通り空港に到着します、大丈夫です…ご安心ください…」と言った…乗客の歓声と拍手…そして窓の外のシャボン玉の確認…乗客は「おっ〜〜」と言う声を出しながら…首を傾げた。。。




