14.こんな現実
ブラウン夫妻は(えっ?)と言うような顔でベイの顔を見つめた…「あの…私達8人が、何となく普通じゃないって事は、3日前から薄々気づいていると思うんですが…」と言うベイの言葉に…ブラウン夫妻が大きく頷くと、ボブとリンダは思わず噴き出してしまった…「ブラウンさん、ベイ博士は何でも…そう…何でも知っていて、何でも出来る方なんです、試しに願い事を言ってみてはいかがですか?」と言ったのはボブである…その言葉を聞いたレイチェルは、とうとう泣き出してしまった…ブラウンも涙をこぼしている。メリーがレイチェルの背中をさすりながら「大丈夫ですよ大丈夫…私の主人は魔法使いですから…どうぞ願い事を…」レイチェルは嗚咽を抑えながら「…このホテルは今日で終わりなんです…かなり前から…御客様が誰も来られないんです…銀行に支払うお金も…もうありません…」メリーはレイチェルに「大丈夫ですよ」と言いながら立ち上がり「フリー・メーお願いがあるんだけど、ブラウンさんの銀行に払う金額を画面に出して欲しいの…」「かしこまりましたメリー様」と言うとフリー・メーはパソコンに変わり、ブラウン家の負債金額を画面に表示した。メリーは画面をベイに見せた…2人の周りにはボブ夫妻もジョニー夫妻もグレイ夫妻も集まって来た…ベイはパソコンに向かって「フリー・メー、僕の銀行口座からブラウンさんの口座にお金を振り込んでもらえるかな」「かしこまりましたベイ博士…完了しました」「ありがとうフリー・メー」「お役に立てて光栄です」ベイはパソコンの画面をブラウン夫妻に見せた…目を見開く2人、銀行から借りた金額の数字がゼロになっているのだ。「あっ、あの…私達が借りたお金が…あの…返し終わっていますけど…」口ごもってしまったのはブラウンである、レイチェルはただひたすらに泣いている…ベイは微笑みながら「ブラウンさん、私達からのプレゼントです、さてと次に、とても言いにくい事ですが、奥様は乳癌に成って居られます…ですよねレイチェルさん」レイチェルは(えっ?何で私のガンの事を…?)と思いながらベイ博士の顔を見つめ…ブラウンは何も知らずにいたので「…レイチェル…」と言ったまま腰を抜かしてしまった。すると横からリンダが「ブラウンさん大丈夫ですよ、ベイ博士が治して下さいますよ、名医ですから」ブラウンは思わず・ベイ博士に手を合わせてしまった「いやいや…ブラウンさん手を合わすのは止めて下さい、奥様を治す事などたやすい事ですから。フリー・べー船からマシンを持って来てもらえるかな」フリーは3秒でベイ博士の腕にマシンを持って来た。レイチェルの乳癌は5秒で治され、ついでにと言う訳ではないが、ブラウンの腰のヘルニアも2秒で治した。ブラウン夫妻は、ベイとメリーに深々と頭を下げて…お礼を言った…そして、他の6人の人達にもお礼を言おうと顔を上げたが、6人の姿が見えない(あれ?何処に行かれたのかな…)と思いながら小さく首を動かし部屋の中を見回したが、6人の姿が見えない…するとメリーが「ブラウンさんと、レイチェルさんが1番欲しいプレゼントを今6人が迎えに行っています…」と言って微笑んだ。2人は心の中で(私達が欲しいのは、12歳の息子のトムと、10歳の娘のニーナなんですよ…でも自分達の不注意で亡くなってしまって…)と思いながらお互いの手を握りしめた。その時ベイが「あっ帰って来た…ブラウンさん、レイチェルさん、御二人の心を救ってくれる宝物が…ほら見て下さい…」2人はベイが指差す庭の方向に目を向けた。ボブとリンダ、ジョニーとアンジー、グレイとルーシーが満面の笑みで横一列に並んで立っている…2人は立ち上がり、6人に向かって頭を下げようとした時である、ボブとリンダの間から、トムが…グレイとジョニーの間から、ニーナが…顔をヒョコッと出した…ブラウン夫妻は「えっ?」と言いながら目をこすり、もう一度見直した…ボブがトムの耳元で「ほら…パパとママのところに行かないと…」と言い、アンジーはニーナの目をジッと見つめて「いっぱい甘えてね…」と言ってソッと背中を押した。…一瞬の沈黙、それかのブラウンの絶叫とレイチェルの狂喜乱舞…両親の元に駆け寄るトムとニーナ、涙の抱擁、抱擁、抱擁…ブラウン夫妻は(夢でもいい、こんな素敵な夢なら、夢の中で…死んでもいい)と思った、イヤむしろ死にたかった、何度も夫婦で話し合っていたのだ…死んで子供達の所に行くことを…でも、自殺をした者は何処に行くのか…?子供達に会えないなら、何の意味もない…そんな事をズッ〜と昨日の夜まで真剣に考えていたのだ…今のこの感覚はなんだ…子供達を抱きしめる事が出来る…暖かいのだ…もう何もいらない、4人で石になってもいい、ズッと一緒に居たい…もう離さない…。周りで見ている8人は、喜び合っている4人を微笑みながら見つめていた。が、フリー達は4人の親子の異変に気がついた、中でもフリー・べーは4人の周りを飛び回り、体温、表情、感情の起伏までを分析しだした…そしてベイの肩に戻ると「ベイ博士」「なんだいフリー・べー」「あの…ご両親も子供達も、今現在を夢だと思っているようです…」「えっ?そうなの」「はい間違いありません…」「ありがとうフリー・べー、そうか…普通は信じられないよね、ちゃんと説明してからにしないと…ダメだね…」とつぶやいている時にブラウンと目が合った、ベイは4人の前に進むと「あの…皆さん…ココは夢の世界ではありませんよ、現実の世界です。ブラウンさん、御2人の子供さんは私が作ったマシンによって生き返ったんです…えっ〜と…先ず肉体の細胞を蘇らせて、一旦肉体から離れた魂を呼び戻すんです…ん〜と分かります?分かりませんよね…」4人はキョトンとした顔で、ベイを見つめた…その時、ベイの肩をソッと両手で握るような格好でボブが顔を出し「ブラウンさん、トップシークレットに選ばれたんですよ、子供達は本当に生き返ったんです、良かったですね、もうズッと一緒に居られますよ」と言った、その言葉が4人の気持ちの中にスッと入って来たのか?…親子は見つめ合い…そして声を上げて泣き出した。ベイはその様子を見ながら「ありがとうボブ、助かったよ〜、僕の言い方では納得してもらえなかったよ」と言って微笑んだ。4人が泣いている間にベイは、7人に向かって「皆んな、ちょっと相談があるんだけど…」ベイの言いたい事は、聞かなくても、誰もが解っている、4人の親子を、放って置けないと言う事である…7人もまったく同じ意見である…。4人は泣くだけ泣いて…落ち着いたのか、8人に向かい、深々と頭を下げた…ブラウンが「どのような言葉でお礼を申し上げれば良いのか…この御恩は一生忘れません」と言えばレイチェルは「トップシークレットに選んで頂き…本当にありがとうございます…」と言った。ベイは微笑みながら「素敵な結婚式の御礼ですから…ところで、話は変わりますが…ブラウンさん、ホテルを経営して行く上で、毎日何組のお客様が入ればやっていけるんですか?」「はい…3組の御客様が来て頂けたらなんとか…」ベイは嬉しそうな顔で「おっ良かった…僕達は4組の夫婦ですから…何とか経営が成り立ちますね」ブラウン夫妻は顔を見合わせながら、小さく首を傾げている…するとメリーが「明日から私達8人が、ズッと此方のホテルにお世話になります、よろしくお願いします」と言うとレイチェルが「嬉しいです、助かります、ありがとうござい…」と言って両手で顔を隠した…するとトムが「すみません、ママは、嬉しい時も悲しい時も、直ぐに泣いちゃうんです」と言って小さな頭を下げると、隣に居るニーナも同じように頭を下げた…8人は2人の可愛さに、思わず胸がキュンとしてしまった。ベイはブラウンに「今日、私達は船に帰ります、明日の朝食からお願いします。それと料金は1日おいくらですか?」ブラウンはホテルの借金まで返して貰ったのに…料金なんてもらえないよ、と思って口ごもってしまった…其れを感じたメリーが子供の前にしゃがみ込み「ニーナちゃん、いくらだか知ってる?」と聞いた、ニーナは知っている事を聞かれたので、元気よく答えようとした…するとトムがニーナの腕をつかみ「ニーナ言っちゃダメだよ」と小さな声で言ったが…ニーナには意味が分からない「1日2食付きで80ドルだって、パパとママが言ってました」「ありがとうニーナちゃん、でわ前払いと言う事で…あなた…えへへ…慣れて無いから恥ずかしい…」と言うメリーにベイは微笑みながら「ブラウンさん、80万ドルを今振り込みました…10万ドルを切ったら直ぐ私に言って下さいね、次の振込をしますので」と言った。ブラウン夫妻は驚きで声が出ない…ただ夫婦で見つめ合い、目で語り合った(銀行の借金が無くなり、赤字のホテルが一気に黒字のホテルに変わり、亡くなった2人の子供が帰って来た…苦しい事の連続が人生だと思っていた…其れが自分達には、お似合いだと思っていた…本当は幸せに成るんだ、って思いたかったけど、ズッ〜と辛い事が多かったから…本当に、コレでいいのだろうか?後で地獄のような苦しみや、悲しみが待って居るんじゃないだろうか?………それなら其れでもいいや、8人の方達について行こう、だって…今がとっても幸せなんだから…)そう2人は視線で語り合い…答えを出した。ブラウンとレイチェルは、トムとニーナの手をしっかりと握りながら立ち上がり、そして一家の長であるブラウンが「本当にありがとうございます…明日の朝食から、皆さんを心よりお待ちしております…あの、今夜の夕食は…もし宜しければご用意出来ますが…?」と言った、するとアンジーが「今夜は親子水入らずで、ゆっくりとして下さい」と言って微笑んだ。ブラウンは嬉しくて…「ありがとうございます…皆さんのご厚意に甘えさせていただきます。明日の朝食は何時くらいが宜しいですか?」ベイは7人の顔を見回しながら「えっと〜…9時くらいでお願いします」「かしこまりました、お待ちしております」と言って頭を下げると、レイチェルと子供達も一緒に頭を下げた。8人はブラウン一家に見送られて船に戻った…。。「女将さん、匠さん、ただいま帰りました」とメリーが言うと「素敵な結婚式でしたね〜」と女将が言った。「感動して…泣きそうになってしまいました」と匠が言った。するとベイがタキシードのポケットから1つのチップを取り出し「匠さんと女将さんに私達8人からプレゼントを用意しました…御2人の部屋の前に行きますね」「はい…どうぞ…?」と言う女将の声がいかにも(…?…)と言う声のトーンになっていた。8人はエレベーターで下に降り…2人の部屋の前に立った、まだ全員ドレスとタキシードのままである。部屋の中では匠と女将が手を繋いで立っていた…ベイは微笑みながら「フリー・べー、コレを頼むよ…」と言ってチップを渡した。船内の事なら何でも知っている女将…フリー達の事だって全て知っている…現にフリー達に「フリー達、ベイ博士は私達に何の用かしら」と尋ねたが、フリー達は声を揃えて「女将様、私達にも何の事だか分かりません」と答えた。フリー達は、女将と匠にウソはつけないように作られている、女将と匠は(私達はベイ博士の意に背くような事をしたのだろうか?私達2人のプログラムを変えられるのだろうか?…)と不安な気持ちでイッパイになった…チップがフリーによって差し込まれた…女将と匠は、強く手を握り合った…次の瞬間、女将の身体にはウエディングドレスが…匠の身体にはタキシードが…そしてフリー達の身体にもウエディングドレスとタキシードが着せられていた。「えっーー」と言ったのは匠…。「素敵」と言ったのは女将…。「私達まで皆さんと一緒なんて…」と言ったのはフリー達であった。ベイが「8人でコッソリ話し合ったんですよ…皆んなで幸せを味わいたいね〜って。今から匠さんと女将さんの結婚式を挙げます。次にフリー達の結婚式を挙げます、心の準備は良いですか?」と尋ねると女将はすでに匠に抱きつきながら「準備OKです」と答え、匠はただニヤけていた。女性のフリー達はこれまた男性のフリー達を抱きしめながら「逃げらないようにしています」と答えると、男性のフリー達は「喜んで捕獲されました」と答えた。ジョニーとアンジーが誓いの言葉を言うと…匠と女将が「誓います」と答え、グレイとルーシーが誓いの言葉を言うと…8人のフリー達も「誓います」と答えた…その言葉を聞いたベイとメリーは「皆さんを夫婦と認めます」と言った。拍手と歓声、笑顔と涙、そして抱擁とキス…。ベイは女将と匠、そしてフリー達に「今から、明日の朝8時半まで、僕達の事は何もしなくていいですから、それぞれが夫婦で楽しみましょう…でわ、とりあえず解散です」と言った。その後…自分達の部屋に戻り…お酒を飲むカップル、お風呂に入るカップル、おしゃべりをするカップル、あんな事をするカップル、こんな事をするカップル…何をしてもいいのである…新婚だし、大人だし、愛し合ってるんだし。長い夜を、18人は濃厚な愛し方で過ごした…。。次の日、女将と匠に見送られ、8人は満面の笑みを持って、ホテルの朝食の席に向かった。。。。




