13.結婚式
いったんスカイシップに戻った8人は、お互いの小さな反省点を指摘しあい、そして、お互いの良かった所を褒め合った。アンジーが女将と匠に「私達8人のマジックショーはどうでしたか?」と尋ねると、匠は「とても素敵なショーでしたよ、笑顔と涙と感動の、マジックショーでした、子供さん本人も、親御さん達も…皆さん本当に喜んで居られましたね…」と言った。女将は「一言で言うと…とてもカッコ良かったですよ、ワクワクしながら見させて頂きました…」と言ってくれた。するとグレイが「匠さんが作って下さった、フリーとブレスレット達のおかげですよ、僕は本来、料理しか出来ませんから…」と言うとボブが「何を言ってるんだよグレイ、君は料理の天才で、その料理の美味しさに、世間の人達は絶賛の拍手をおくってくれたじゃないか、俺なんて人を殴り倒す事が仕事なんだぜ…」と言うとジョニーが「ボブの闘う姿を見て、よし俺も、ひたむきに努力を重ねよう、社会で実証を示そう、ってファンの人達は感動してるんだぜ。その点俺なんて…口先だけでテキトーに生きて来たから…何だか恥ずかしいよ」と言った、するとベイ博士が「ジョニーのように、沢山の言葉を使いこなせる人を、僕は尊敬するよ…僕なんて人とのコミュニケーションを取るのが苦手だから、結局どこの研究所も追い出されちゃったもんなぁ…」と言って肩をすくめた。メリーは微笑みながらベイの首に手を回し、リンダはボブの腰に手を回し、アンジーはジョニーを後ろから抱きしめ、ルーシーはグレイの右腕を自分の胸の中に包み込んだ…そして偶然にも4人の女性は同じセリフを言った…「でも貴方が大好きなの…ずっと前からよ…」4人の男達は嬉しそうに微笑んで「ありがとう…」と言った。女将さんは遠慮がちにセキ払いを一回すると「ゴメンなさいね〜、次の病院に着きましたよ〜、キスをするなら手早くお願いしま〜す」と言って小さく笑った、8人は慌ててキスをした。…その日の内に…病院訪問マジックショーは、もめ事もなく、残りの4軒も無事終了する事が出来た…とにかく皆んなが喜んでくれた…いや中には、恨みに思った人も居た…ベイはその人達に対して「いいよ嫌われたって、僕等は始めから、悪魔の使いって言ってるんだから…だいたい悪い人に好かれたり、褒められたり、そんなのは僕等にとっては、恥、以外の何物でもないからね」と言って、皆んなに親指を立てて見せると、7人も頷きながら親指を立てた。ジョニーは皆んなに向かって「今日は本当にありがとう…そして、ゴメンね…結婚式の前日なのに皆んなを走り回らせて…」何時も明るいジョニーが、しおらしい事を言い出した、すると生真面目なグレイが「僕は何だか…皆んなの喜ぶ顔を見させて貰って…嬉しかったよ、むしろジョニーの提案してくれた、今日の公演…僕個人としては感謝しているよ…」と言って微笑んだ…ベイもボブも頷いている…メリーは皆んなの労をねぎらう意味で「フリー・メー、皆んなの手元に、シャンパンをお願い…」「かしこまりましたメリー様」次の瞬間、皆んなの手にはシャンパンが…メリーはベイの顔を見つめて「ベイ、何か一言ちょうだい」と言ってウィンクをした、ベイはグラスを高く上げると「素晴らしいジョニーとアンジーの提案に、そしてマジックショーの成功に…乾杯」と言ってグラスを前に差し出すと、7人はグラスを優しく当てて微笑んだ…。。。次の日、いよいよ今日は8人が結婚式を挙げる日である、世界一愛する人と結ばれる日である…。実際には、身も心も既に結ばれている、昨夜も、その前の日も、そのまた前の日も…何年も前からズ〜っと結ばれている…と言うか、暇さえあれば引っ付き倒している。…それでも…ドレスを自分のパートナーに着せたかったのだ、子供の頃からの大事な約束に、1つのチャンとしたケジメをつけたかったのである。ホテルが建つその地方一帯は、昨夜から激しい雨が降っている、オーナー夫妻は(どうか雨が止みますように、今日は素敵な4組の方達の結婚式なんです…)と思いながら空を見上げて居た。朝の10時5分、激しい雨が急に止んだ。レイチェルは首を傾げ…「あなた、雨が止んだわね…このホテルの周りだけ…」「そうだね…?」「あなた、もしかしたら、お客様方が上空にお着きになったのかしら?」と言う妻の言葉に夫は微笑みながら「きっとそうだね、トップシークレットの方達だからね」夫は嬉しそうに妻の手を握るとホテルの外に出た…夫婦の目に入って来たのは、ホテルの上空10メートル程の高さに浮いているスカイシップである…夫は妻に「あぁ…トップシークレットとはいえ…本当に凄いなぁ〜…さあレイチェル…結婚式の始まりだよ…最後の御客様が素敵な方達で…本当に良かったね…」妻のレイチェルは黙って頷いたが…目には涙がいっぱい溜まっている、ブラウンはレイチェルをしっかりと抱きしめると「レイチェル…大丈夫だよ…今までも2人で色々な事を乗り越えて来たじゃないか、僕が何とかするからね……」レイチェルは夫に力いっぱいしがみ付き…「ゴメンなさい、もう大丈夫…」と言って涙をぬぐった。スカイシップから光りの柱が地上に向かって下りて来た…その中を、ウエディングドレスとタキシードを着た8人がゆっくりと地上に向かって降りて来た。レイチェルはとっさに「あなた、水たまりでドレスが汚れてしまうわ、何とかしなければ」と言って夫の顔を見上げた、すると夫が「大丈夫だよ…観てごらん、すごいね〜あの方達は、歩いて無いよ…浮いた状態でこっちに向かって来ているんだ…」レイチェルは思わず「トップシークレットって魔法使いって言う事かしら?」と言って首を傾げるとブラウンも「うん…きっとそうだね」と言って頷いた。8人が2人の前に到着した。ボブは、夫妻が明らかに驚いているだろうと思ったのか、満面の笑みで「ビックリしましたか?…あのザックリ言うと…こちらに居られるベイ博士が開発された、科学の最先端の…芸術品と言う風に思って頂ければ…」と言うと、レイチェルは小さく微笑みながら「はい…そのように思わせていただきました、科学ですよね…魔法じゃないですよね…」と言うセリフに、ベイは小さく頷いた、レイチェルは一礼をした後に「皆さん…準備が整っております、中にお入りください」と言いながら8人をロビーの方に案内した。ブラウンは8人の背中を見送ると…直ぐにキッチン横の小部屋に入り、CDデッキのスイッチを入れた…優しいメロディーが館内に広がった。見つめ合う花嫁と花婿、嬉しいはずなのに涙が出てくる…花で飾られた壁の前に8人が立つとブラウンとレイチェルは一礼をした後…誓いの言葉を語り出した…笑顔で頷く8人…ハンカチで目元をおさえる女性陣…唇を噛み締める男性陣…(今日まで色々な事が有ったなぁ〜…)と思いながら8人はお互いのパートナーの顔を見つめた。ブラウン夫妻が最後に声を揃えて「…未来永劫、お2人が愛し合われる事を…願います」と言って誓いの言葉を締めくくると、8人は指輪の交換をした。8人はブラウン夫妻が考えてくれた誓いの言葉の中の、未来永劫と言う言葉が特に、心に強く…突き刺さっていた、なにせ一度死んでいるので、死が2人を別れさせては困るのである…現に死んだ後の、あの世でも、例えば、ボブはリンダが大好きで、愛してると言う思いは、少しも揺らぐ事は無く…お互いに肉体が無いのに毎日セックスをしていたのだ…それが生き返った今でも、お互いを愛し合っているので、未来永劫と言う言葉が、とても的を得ていると、8人はそう思った。ベイは思わず「とても素敵な誓いの言葉を…本当にありがとうございます、メリーだけをズッ〜と愛します、未来永劫ずっと…」と言ってメリーにキスをした。それから…レイチェル婦人の手料理の美味しさに…笑顔で頷き合うグレイとルーシー。ブラウン夫妻が考えたゲームに…お腹を抱えて大笑いする…ジョニーとアンジー。ビデオカメラを向けると緊張してしまう…ボブとリンダ。ひたすらベイ膝の上に抱っこしている…メリー。ベイはメリーの耳元で「…世界中の女性には申し訳ないけど…君が世界で一番…綺麗だよ」「ありがとう、ベイ。世界中の男性には申し訳ないけど、貴方が一番…素敵よ」と言ってキスをした。隣ではボブとリンダが、ジョニーとアンジーが、グレイとルーシーが…ベイと同じ様なセリフを言いなが…濃厚なキスを繰り返していた。…ブラウン夫妻が考えてくれた楽しい企画満載のパーティーは、アッと言う間に5時間が過ぎた、ベイは腕時計をチラッと見ると「えっ〜?もうこんな時間…楽しい時って、時間のスピードが早くない?」と言う独り言を言った…その言葉はブラウン夫妻の耳に入った。ブラウンはレイチェルの耳元で「嬉しいね、喜んで頂けて…」レイチェルは微笑みながら頷き…そして心の中で…(本当に良かった〜、素敵な皆さん…どうかズッと幸せでありますように…。私達のホテルは今日が最後なんです…銀行から差し押さえの通知が届いてるんです…ゴメンなさい、幸せな皆さんの前で…でも私の心の中の声は、誰にも聞こえませんもんね…愚痴を言ってゴメンなさい、許して下さいね…)と思いながら8人に向かって頭を下げた。ベイはレイチェルのそんな姿を見ると…ゆっくりと席を立ち「今日、私達は、ブラウンさんとレイチェルさんの、優しさに溢れた結婚式を受けさせて頂きました、もう本当に嬉しくて…そこで何か御二人にプレゼントを差し上げたいんですけど…何か欲しい物が有れば、どうぞ遠慮なくおっしゃって下さい」と言って2人の顔を見た。ブラウンは首を横に振りながら「ありがとうございます、何も欲しい物はありません、今、ベイ博士から頂きました言葉が…私達にとっての最高のプレゼントです…本当にありがとうございます」と言ってブラウンが頭を下げるとレイチェルも一緒に頭を下げた。ベイは女将から、ホテルの状況も2人の子供を亡くしている事も全部聞いているので「あの〜、遠慮なさらずに…」と言った。…昨夜ブラウン夫妻は一枚の手紙を書いた…相手は銀行である。[返済が出来なくなり申し訳ありません、差し押さえの件つつしんで受けさせて頂きます。ホテルの建物と土地の権利書を銀行におさめさせて頂きます、よろしくお願いします]そう書いた後に「レイチェル、ゴメンね…」と言う夫の言葉に、妻は小さく微笑みながら「大丈夫よ…また2人で頑張りましょう」と言った。しかし心の中では(現実って嫌ね…夢とか、希望とかの入る隙間が、ぜんぜん無いんだもの…せめてトムとニーナが居てくれたらなぁ…)と思っていた。それが今から18時間前の事である。ベイは下を向いたままの2人に「あの…立ち入った事を聞いて申し訳ないのですが…ホテルの経営状態は順調ですか?」と尋ねた。。。




